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16歳が背負うもの
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「佐倉先輩はいますか?」
物おじしない可愛らしい笑顔で、上級生の教室に顔を出す少女に当初は動揺していたクラスメイトが慣れてきていた。学校指定であるがボタンなどを付けて可愛らしくしているベレー帽をかぶっている少女の目的は俺だ。
目立ちたくないといっているものの、彼女は非常に目立つ。
目鼻立ちは平均的であり、目立つような行動をしているつもりはないとのことだが彼女が持っているオーラのせいなのか惹きつける何かがある。ただ後輩が先輩の一人を呼び出しに来ているだけのことなのに、騒がしかった教室が一気に静かになった。しかし彼女は目立つことが好きではないようで少し困っているような眉を下げる表情を浮かべていた。
あれからというもの、俺は山田に昼休みに週に一度呼び出されるようになった。
「佐倉お前あの子とどういう関係なんだよ。空き教室に入っていくの見たって聞いたぞ」
「ただの知り合いだって」
こうして言い訳することも苦しくなってきた。
誤解されていることはわかっているが女子からのお願いを無碍にするような真似ができるほど俺は精神的に強くなくて従う事しかできなかった。しかも相手は国の幹部だから逆らうことはなんとなくしにくい。
「こうして教室でマッサージしてもらうことも難しくなってきましたね」
そういいながら山田が帽子を外す。光に照らされて透けてしまいそうなほど長く真っ白な髪が飛び出るように出てくる。その間から覗いている、愛らしい猫耳も同様に毛をなびかせながらそこにあった。
猫族であることを隠していたのは、おそらく猫族は愛らしい風貌をしていることから人々に狙われかなりの希少種族であり猫かん以外にみたことがないくらいだ。また、猫族はとても強い魔力を持っている種族である。もちろん猫族だからといって猫かんほどの実力者はいるはずがないが。
「そうだな、山田も誤解されるのは嫌だろ。付き合っているやつとかいたとしたら怒られるんじゃないのか」
「ふふ、探っているんですか?お付き合いをしている人なんていませんよ」
「違う」
確かにそういわれてみれば口説いているような口調になってしまった。いや実際に気になってしまっていることは否定できないが。その後ろめたさから前のめりになって否定の言葉を出してしまったことでリアル感が出てしまった。
案の定山田はこらえるように笑っている。
「私のことは山田ではなく猫かんと呼んでください」
「でも猫かんってあだ名みたいなものなんじゃないのか。猫族の幹部だからっていう割と適当なネーミングって聞いたけどな」
「そんな話どこかでしたことありましたかね?」
小首をかしげる。
そういえば俺もどこで仕入れた情報なのかわからない。だって猫かんは性別さえ知らなかったぐらいだからすごく強くて氷魔法を使う猫族であること以外情報なんてなかったはずだ。
まあ何はともあれどこかで耳にする機会があったのだろうとお互い結論を立てた。
「おそらく知っての通り猫族はかなり希少種族です。それに個人主義なので親とも早く離れるので名前がないんですよ」
「山田理沙という名前は偽名なのか」
「偽名というよりは一応本名みたいなものなんです。でも、適当につけられた名前って感じですけど猫かんという名前を結構気に入っているんです」
そういうと、ゆっくりと椅子に腰かけた。
今回は太ももに魔力栓が出来ているようだ。
なんとも触りにくいところにできているのだろうかと躊躇してしまう。
「大事な人がつけてくれた名前なので」
彼女はそう優しく微笑んだ。
それはどんな人なのか聞きたいところではあるが詳しく入り込むくらい近しい間柄でもないため、猫かんは特に続きを話すわけでもなく俺も聞き出すことが出来ないまま聞き流すことになった。
とりあえず、治療に取り掛かろう。
真っ白な肌に触れると、俺の足と違って肌がきめ細かくて柔らかく少しドギマギしてしまう。こんな風に女の子の足なんて触ったことがないため緊張する。
足の間から覗いているしっぽはゆらゆらと揺れているがどこから生えているのだろうか。
毎度のごとく鼻に指をあてて空気が入らないようにしながら触る。それでもかすかに匂う魔力からこの辺だと目安を付けて周辺を押さえつける。あまり専門的な知識があるわけでもないためなんとなく抑えてしまっているがこんなに定期的に治療をするのであれば一応勉強したほうがいいかもしれないな。
それにしても猫かんと呼ぶのはもしかすると他の場所で口で滑らしてしまう可能性がある。だからと言ってあまり気に行っていない様子の山田で呼ぶことはうれしくなさそうだ。
「えっと、ネコ」
「ネコ・・・」
目をぱちぱちして見られる。
こんなのじゃ猫の幹部で猫かんというネーミングセンスに文句を言うことが出来ないな。ネコであればなんとなく猫みたいな顔だから猫と呼んでいるとでもいいわけくらいはつくことが出来るだろう。もちろん人前では山田と呼ぶように気を付けるが。
「種族名で呼ばれるとは思っていませんでした。あなたたちからするとヒトと呼ばれるのと同じですよ、でも面白いのでネコと呼んでください」
完全論破だ。
申し訳ないが、いいといってくれるなら好意に甘えることにしよう。
「んん」
太ももに指を埋めると細いながらも沈み込むような柔らかさがある。押し出していくとだんだん魔力の流れが正常になっていくことが伝わってくる。
「猫かんってバレないのか?」
するりと、指で魔力の流れにそって肌をなぞるとピクリと太ももが揺れる。
「っ、私たちの国は長い間他国と戦っていません」
「猫かんと、総長の強さがあったからだろ」
あまり国の状態について知らないがそれくらいなら知っている。あった、という過去形であるのは原因は明かされていないが、ある時に総長の魔力が一気に減少したためだ。
「はい、原因は私でもわからないんです。昔の総長は私と同じかそれ以上くらいに強い存在でした」
「猫かん以上・・・?」
「純粋な魔力で言えば僕のほうが確実に上でした。でも総長の魔法はオールラウンダーで魔力の全般が使えます」
「それだったら炎とか使われたらきついよな」
氷を使う猫かんは炎系の魔法を使われると勝つことは難しくなってくるだろう。さすがに格下の相手であれば炎系の魔法を使われても簡単にいなすことが出来るだろうが同等くらいの相手であれば相性はかなり大事になってくるだろう。
それにしてもオールラウンダーって本当に強い魔法だな。相性なんて気にすることなく魔法を選択すればよいのだから。
「他の国は恐れて攻めてきませんでした。戦うのも他の国でばかりだったのでバレることがなかったんです」
可愛らしい笑みが消える。
ただただ、冷たい感情を落とした顔。
彼女の周りが氷に包まれているような、冷たさがあった。
「これからは違います。他の国が攻めてきます」
「そうなるな」
世界最強クラスの人物が二人もいる国に攻めるメリットはほとんどない。しかし一人となってはそうもいかなくなってくる。
「こんな魔力栓に負けている場合じゃないんです。私は、世界最強でなければならないんです」
「勝つために?」
魔力栓がなくなり魔力の流れがよくなったため治療が終了した。立ち上がり、足を何度か屈曲させてから確認する。
問題ないようで満足そうにステップする。
「いいえ、戦わないためです」
「戦わないためってどういうことだ」
「総長が弱体化して私だけなら倒せると思われているから、攻められそうになっているんです」
俺よりも小さくて、若い少女が国を背負っている。
それはただ戦わなければならないということのリスクやプレッシャーが大変だろうと考えていたがそれだけではないのだ。
目の前にいる少女は俺が想像しているよりも背負っているものが桁違いなのだ。
いつから、この子は戦い続けているのだろうか。
「この病気で戦いの最中に倒れてしまったことが何度もあります。だからもうごく一部の他国にはバレてしまっているんです」
「結構苦労しているんだな」
「私が強くなって・・・この白の国が攻められないように戦いが起きないようにしたいんです」
戦闘経験のない俺からすれば想像もできない。
だが、少女は平和のためにどれほど戦ってきたのだろうと思わせられるほど古傷が残っていた。その戦いの勲章は何よりも美しく感じた。
物おじしない可愛らしい笑顔で、上級生の教室に顔を出す少女に当初は動揺していたクラスメイトが慣れてきていた。学校指定であるがボタンなどを付けて可愛らしくしているベレー帽をかぶっている少女の目的は俺だ。
目立ちたくないといっているものの、彼女は非常に目立つ。
目鼻立ちは平均的であり、目立つような行動をしているつもりはないとのことだが彼女が持っているオーラのせいなのか惹きつける何かがある。ただ後輩が先輩の一人を呼び出しに来ているだけのことなのに、騒がしかった教室が一気に静かになった。しかし彼女は目立つことが好きではないようで少し困っているような眉を下げる表情を浮かべていた。
あれからというもの、俺は山田に昼休みに週に一度呼び出されるようになった。
「佐倉お前あの子とどういう関係なんだよ。空き教室に入っていくの見たって聞いたぞ」
「ただの知り合いだって」
こうして言い訳することも苦しくなってきた。
誤解されていることはわかっているが女子からのお願いを無碍にするような真似ができるほど俺は精神的に強くなくて従う事しかできなかった。しかも相手は国の幹部だから逆らうことはなんとなくしにくい。
「こうして教室でマッサージしてもらうことも難しくなってきましたね」
そういいながら山田が帽子を外す。光に照らされて透けてしまいそうなほど長く真っ白な髪が飛び出るように出てくる。その間から覗いている、愛らしい猫耳も同様に毛をなびかせながらそこにあった。
猫族であることを隠していたのは、おそらく猫族は愛らしい風貌をしていることから人々に狙われかなりの希少種族であり猫かん以外にみたことがないくらいだ。また、猫族はとても強い魔力を持っている種族である。もちろん猫族だからといって猫かんほどの実力者はいるはずがないが。
「そうだな、山田も誤解されるのは嫌だろ。付き合っているやつとかいたとしたら怒られるんじゃないのか」
「ふふ、探っているんですか?お付き合いをしている人なんていませんよ」
「違う」
確かにそういわれてみれば口説いているような口調になってしまった。いや実際に気になってしまっていることは否定できないが。その後ろめたさから前のめりになって否定の言葉を出してしまったことでリアル感が出てしまった。
案の定山田はこらえるように笑っている。
「私のことは山田ではなく猫かんと呼んでください」
「でも猫かんってあだ名みたいなものなんじゃないのか。猫族の幹部だからっていう割と適当なネーミングって聞いたけどな」
「そんな話どこかでしたことありましたかね?」
小首をかしげる。
そういえば俺もどこで仕入れた情報なのかわからない。だって猫かんは性別さえ知らなかったぐらいだからすごく強くて氷魔法を使う猫族であること以外情報なんてなかったはずだ。
まあ何はともあれどこかで耳にする機会があったのだろうとお互い結論を立てた。
「おそらく知っての通り猫族はかなり希少種族です。それに個人主義なので親とも早く離れるので名前がないんですよ」
「山田理沙という名前は偽名なのか」
「偽名というよりは一応本名みたいなものなんです。でも、適当につけられた名前って感じですけど猫かんという名前を結構気に入っているんです」
そういうと、ゆっくりと椅子に腰かけた。
今回は太ももに魔力栓が出来ているようだ。
なんとも触りにくいところにできているのだろうかと躊躇してしまう。
「大事な人がつけてくれた名前なので」
彼女はそう優しく微笑んだ。
それはどんな人なのか聞きたいところではあるが詳しく入り込むくらい近しい間柄でもないため、猫かんは特に続きを話すわけでもなく俺も聞き出すことが出来ないまま聞き流すことになった。
とりあえず、治療に取り掛かろう。
真っ白な肌に触れると、俺の足と違って肌がきめ細かくて柔らかく少しドギマギしてしまう。こんな風に女の子の足なんて触ったことがないため緊張する。
足の間から覗いているしっぽはゆらゆらと揺れているがどこから生えているのだろうか。
毎度のごとく鼻に指をあてて空気が入らないようにしながら触る。それでもかすかに匂う魔力からこの辺だと目安を付けて周辺を押さえつける。あまり専門的な知識があるわけでもないためなんとなく抑えてしまっているがこんなに定期的に治療をするのであれば一応勉強したほうがいいかもしれないな。
それにしても猫かんと呼ぶのはもしかすると他の場所で口で滑らしてしまう可能性がある。だからと言ってあまり気に行っていない様子の山田で呼ぶことはうれしくなさそうだ。
「えっと、ネコ」
「ネコ・・・」
目をぱちぱちして見られる。
こんなのじゃ猫の幹部で猫かんというネーミングセンスに文句を言うことが出来ないな。ネコであればなんとなく猫みたいな顔だから猫と呼んでいるとでもいいわけくらいはつくことが出来るだろう。もちろん人前では山田と呼ぶように気を付けるが。
「種族名で呼ばれるとは思っていませんでした。あなたたちからするとヒトと呼ばれるのと同じですよ、でも面白いのでネコと呼んでください」
完全論破だ。
申し訳ないが、いいといってくれるなら好意に甘えることにしよう。
「んん」
太ももに指を埋めると細いながらも沈み込むような柔らかさがある。押し出していくとだんだん魔力の流れが正常になっていくことが伝わってくる。
「猫かんってバレないのか?」
するりと、指で魔力の流れにそって肌をなぞるとピクリと太ももが揺れる。
「っ、私たちの国は長い間他国と戦っていません」
「猫かんと、総長の強さがあったからだろ」
あまり国の状態について知らないがそれくらいなら知っている。あった、という過去形であるのは原因は明かされていないが、ある時に総長の魔力が一気に減少したためだ。
「はい、原因は私でもわからないんです。昔の総長は私と同じかそれ以上くらいに強い存在でした」
「猫かん以上・・・?」
「純粋な魔力で言えば僕のほうが確実に上でした。でも総長の魔法はオールラウンダーで魔力の全般が使えます」
「それだったら炎とか使われたらきついよな」
氷を使う猫かんは炎系の魔法を使われると勝つことは難しくなってくるだろう。さすがに格下の相手であれば炎系の魔法を使われても簡単にいなすことが出来るだろうが同等くらいの相手であれば相性はかなり大事になってくるだろう。
それにしてもオールラウンダーって本当に強い魔法だな。相性なんて気にすることなく魔法を選択すればよいのだから。
「他の国は恐れて攻めてきませんでした。戦うのも他の国でばかりだったのでバレることがなかったんです」
可愛らしい笑みが消える。
ただただ、冷たい感情を落とした顔。
彼女の周りが氷に包まれているような、冷たさがあった。
「これからは違います。他の国が攻めてきます」
「そうなるな」
世界最強クラスの人物が二人もいる国に攻めるメリットはほとんどない。しかし一人となってはそうもいかなくなってくる。
「こんな魔力栓に負けている場合じゃないんです。私は、世界最強でなければならないんです」
「勝つために?」
魔力栓がなくなり魔力の流れがよくなったため治療が終了した。立ち上がり、足を何度か屈曲させてから確認する。
問題ないようで満足そうにステップする。
「いいえ、戦わないためです」
「戦わないためってどういうことだ」
「総長が弱体化して私だけなら倒せると思われているから、攻められそうになっているんです」
俺よりも小さくて、若い少女が国を背負っている。
それはただ戦わなければならないということのリスクやプレッシャーが大変だろうと考えていたがそれだけではないのだ。
目の前にいる少女は俺が想像しているよりも背負っているものが桁違いなのだ。
いつから、この子は戦い続けているのだろうか。
「この病気で戦いの最中に倒れてしまったことが何度もあります。だからもうごく一部の他国にはバレてしまっているんです」
「結構苦労しているんだな」
「私が強くなって・・・この白の国が攻められないように戦いが起きないようにしたいんです」
戦闘経験のない俺からすれば想像もできない。
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