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後輩のマッサージ係になりました
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本当に偶然の出会いだったのだ。
そうでなければマンモス高である俺の高校でわざわざ一人の後輩と話す機会なんてなかったであろう。
一人暮らしをしている俺は、その日はなんとなく自炊することが面倒くさくて購買に出かけに行っていた。また友人は体調が悪く休んでいて一人だったのだ。そして後々聞くと友人が多い彼女もじゃんけんで負けてしまったことで一人で来ていたらしい。
焼きそばパンを買うために列に並んでいた。
「先輩」
声をかけられて振り返った。
とんでもない美少女がいた・・・というのがセオリーだと思われるがそういうわけではない。この「白国」の特徴である白髪に少しグレーが入っている瞳であり、真っ白な制服を着ている生徒。より白に近いほうが美しいとされている世界であるため容姿の差別が少なくなるように許可されている帽子をかぶっていること以外は特徴がない少女。
容姿で優れているとは言えないが朗らかな笑顔を浮かべている彼女は、とても可愛らしい雰囲気で男女ともに人気があるという噂は彼女の一つ上の学年である俺ですら聞こえてくる。
「落としましたよ」
そんな後輩が俺に話しかけてくるなんてこの機会がなければなかったであろう。
彼女は俺の財布を差し出して近づいた。
俺は、思わず一歩後ずさった。
「?」
少女は小首を傾げた。
しかし、俺にはどうしても近づくことができない理由があった。財布を受け取る距離すら近づくことが出来ない。
この体質が何なのかわからないためにどういえばいいのかわからない。
「その、君が臭くて・・・」
「えっ私香水とかつけていないしお風呂も入っているのに臭いですか」
臭いといわれたことから心配そうに腕のほうの匂いを嗅いで確認している。失礼なことを言っているのにいやそうな顔をすることなくただ焦っているようだ。
その様子をみて失礼なことをしてしまったと反省する。
「違う、君というよりは君の魔力だ」
更に少女は不思議そうな顔をする。
それもそうだろう、魔力には本来においなど存在しにないし魔法は可視であっても魔力が可視化することはなかなかない。
先ほどの反省を生かして言葉選びを考える。
「君はどうしてそんなとんでもない魔力を持っているのに普通を装っているんだ?」
少女に対して入学当初から抱いていた違和感を率直にぶつけることにした。
すると、俺の失礼な言葉にも崩さなかった笑顔が一瞬消え去った。
「少しだけお話しませんか、先輩」
すぐに笑顔になって近くの空き教室を指さされたが、提案というよりはほぼ強制のような雰囲気を出しており頷く事しかできなかった。
昼休みに空き教室で異性といる姿なんて見られてしまったらどう考えても勘違いされるであろうしそれも人気が高い女子とあれば友人に怒られてしまいそうなくらいだ。
しかし俺は全く浮かれた気持ちはなかった。
先ほどはとんでもない魔力だと表したが、それですら過小評価と言えてしまうくらいの圧倒的な力を持っているとにおいの強さから考えられる。出会ったこともないというよりも、この学校の人たちの力を全て集めたとしても足りないくらいであり、言い方は悪くなってしまうが化け物という呼び方がちょうどいいのではないかと思える。
俺には人気のあるかわいい少女というよりも恐ろしい化け物に見えてしまう。
「魔力の匂いを嗅ぐことが出来る魔法というのは初めて聞きました」
「魔法というよりも体質なんだよな。一応回復魔法はある」
普通は体質なんてものは存在しないが、生まれたときから人の魔力が嗅ぐことが出来たためそればかりは俺にもわからない。
少女は目を閉じて考えている。
「先輩の名前を聞いてもいいですか」
さすがに学校の人気者には俺みたいな目立たない先輩の名前なんてわかるわけがないよな。
「佐倉奏多だ」
「佐倉先輩ですね。私は山田理沙です」
山田理沙、山田理沙。何度も聞いてきた名前であるがあまりピンとこない。何度も聞いているはずなのに忘れてしまう。
山田とは少し距離を開けて話している。
こうして向き合って話していても笑顔の向こう側からは何も感じさせない。
「私としては目立ちたくないので魔力の件は口外しないでほしいです」
まあそうだろうな。
目立たければ魔力テストで問題なく学校で一番になっているだろう。
「大丈夫だ。今までもこれからもしゃべらないことを約束する」
「ありがとうございます」
ほっと安心した表情をしている山田。この実力差ならば実力行使される可能性もあったためその心配はなさそうなことに胸をなでおろす。
俺の力は全く戦闘向きではない。
「ちょっといいか」
「なんでしょうか」
警戒も解けたところで一つ聞きたいことがあったためついでに聞いておこう。
「右腕痛くないのか」
山田の目が大きく開いた。
魔力の匂いが分からないのだからもちろん理解することが出来ないだろう。普通はかなり近づかないと魔力の匂いなんて分からないがこの子の場合ではあまりにも強いにおいから魔力の嗅ぎ分けがすることが出来るのだが、明らかに右腕に魔力がたまっている。
以前すれ違ったときからもしかしたらと思っていたが。
「山田って魔力栓症にかかっているだろう」
「直球ですね。ですけど、確かにそうです」
「強すぎる魔力を持つと大変だな」
彼女のように強い魔力を持っていると身体の中で塊を作ってしまい、詰まる。それによって十分に魔法を出すことが困難になってしまうためこの疾患を持っているとかなり戦闘に不利になる。魔力を持つと比例してこの疾患リスクが高まるがあまり罹患リスクは高くないものである。
今は右腕であるが、前は左ひじだった気がする。そんなに何度もかかるようなものでもないがかなりかかり癖がついてしまっているのだろう。
「思っているよりも知られているみたいですね」
朗らかな笑顔を見た瞬間、血の気が引くような気がした。
なにこのこ、超怖いんですけど。
ガツン、と強いにおいが鼻をつんざく。
足元が氷で覆われていていき、冷たい感覚が足の感覚を奪っていくような気がしていく。こんな一瞬で足元まで凍らされるなんて恐ろしすぎる。とてもかなうような相手ではないということはわかりきっていたことだがここまでとは。そもそもにおいからして彼女の本気にはまだほど遠いだろう。
消される。
俺は足がとられていることによってしりもちをついてしまった。
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
「なんでしょうか」
「何もお前を脅したり危害を加えるために話したわけじゃない」
俺を探るように目をすぅっと細めた。
ただの魔力が強い少女だと思っていたがどうもそういうわけではないらしい。魔力を持て余している人を見てきたことがあるがこの子は存分に生かしつつ持ち前の何かがあるみたいだ。思っていたよりもかなり実力者なのだろう。
とにかく聞いてくれるらしい。
「少し触ってもいいか」
足の氷が膝まで上がってきた。
「待て待て待て待て!その右腕の部分だけ触りたいだけだ」
「何を企んでいるんですか」
「もしも不利益なことをしたら凍らせてくれていい」
そういうと、おずおずと白い右腕を差し出してくれる。
相変わらず魔力のすごいにおいだからその腕に触るため近づく前に鼻をつまむ。
「なんだか複雑です」
それは申し訳ないが女の子に対してこんなことはいけないと分かっているうえでどうしても近づくことが出来ないくらい強いにおいがあるせいである。
おずおずと右腕を触る。
それにしてもよく見ないと分からなかったが、腕にはかなりの量の傷跡が残されていて痛々しい感じになっている。どうしたらこの年齢でここまでの傷ができるのだろう。とんでもないドジっ子だといえば聞こえはいいが、そういう傷ではないと素人目でもわかる。
「あの」
上目遣いで見てくるため非常にかわいい。
だが容赦なく腰くらいまで氷がどんどん上がってきているんですけどこの子なんなの顔と魔法が分離しているの。
きちんと目標を達成するから待っていてほしい。
「ここだな」
するりと塊が出来ている部分に指を這わせる。
別に特別なことをするわけでもない。
魔力栓が出来ている部分の近くを、そっと指で押す。
「んっ」
少しだけ色気の混じった鼻にかかった声が、山田から漏れる。
魔力の流れが、流れる上流の部分を押すことによって魔力圧が強くなり流れが増していく。そして通常通りの流れへと変わっていく。
魔力栓というのは、魔力がたまっていくことで痛みが増していく。そして魔力が多い人ほどその痛みは大きいものになる。
「え、うそ」
驚いた声。
きっと感じていた痛みがなくなったことによる驚きなのだろう。
「何をしたの」
「俺は回復魔法だから魔力の流れに干渉することが出来るんだ。その代わりに回復機能はかなり低いんだけどな」
回復魔法は別に珍しい魔法ではないが、俺よりも回復に特化した人はかなりいるが俺の魔力を嗅げる体質と同様に他に聞いたことがないものである。
それは彼女にとってもそうだったらしい。
目を瞬かせる。
驚かれることは想定していたが、反対に俺のほうが驚くことになった。
彼女の瞳から、溢れんばかりの大きな粒が流れ落ちてきたからだ。本人ですら予測していなかったように隠すこともなく2.3滴は流れていく。それが頬から顎にいき、零れ落ちていく姿を見届けると気づいたようで目を勢いよくこすった。
「どうしてお前・・・」
「あなたにはわかりませんよ」
一見すると冷たい言葉。
しかし、彼女は微笑んでいた。
「この病気のせいで、一日中痛みに苦しんできました」
顔をぐちゃぐちゃにして、彼女は言う。
「この病気のせいで、たくさんの戦いで使い物にならなくなりました」
女の子を泣かせてしまった罪悪感に、胸が痛む。
「あなたにはわかりませんよ」
もう一度彼女は口にした。
「わからないと思いますけど、本当にありがとうございます。ここで出会えて私はこれから治療を簡単にすることが出来ます」
「え、これから?」
山田は帽子を外した。
「私は白国戦闘幹部の猫かんです。私のマッサージ係に任命します」
帽子の下に隠されていた、真っ白な長い髪と、
猫耳が出てきた。
「拒否権はないのか」
「はい!」
道理で魔力が高いはずだ。
白国戦闘幹部猫かん。
国中ということも過小評価であるといわれるほどの圧倒的強さを誇り数々の伝説を残した世界最強と呼ばれている、世界中から恐れられる人物。
猫耳をつけている屈強な男をイメージしていたが・・・まさか高校生で、こんなに屈託のない可愛らしい笑顔を浮かべる華奢な女の子だとは。
これが、世界最強の少女との出会いだった。
そうでなければマンモス高である俺の高校でわざわざ一人の後輩と話す機会なんてなかったであろう。
一人暮らしをしている俺は、その日はなんとなく自炊することが面倒くさくて購買に出かけに行っていた。また友人は体調が悪く休んでいて一人だったのだ。そして後々聞くと友人が多い彼女もじゃんけんで負けてしまったことで一人で来ていたらしい。
焼きそばパンを買うために列に並んでいた。
「先輩」
声をかけられて振り返った。
とんでもない美少女がいた・・・というのがセオリーだと思われるがそういうわけではない。この「白国」の特徴である白髪に少しグレーが入っている瞳であり、真っ白な制服を着ている生徒。より白に近いほうが美しいとされている世界であるため容姿の差別が少なくなるように許可されている帽子をかぶっていること以外は特徴がない少女。
容姿で優れているとは言えないが朗らかな笑顔を浮かべている彼女は、とても可愛らしい雰囲気で男女ともに人気があるという噂は彼女の一つ上の学年である俺ですら聞こえてくる。
「落としましたよ」
そんな後輩が俺に話しかけてくるなんてこの機会がなければなかったであろう。
彼女は俺の財布を差し出して近づいた。
俺は、思わず一歩後ずさった。
「?」
少女は小首を傾げた。
しかし、俺にはどうしても近づくことができない理由があった。財布を受け取る距離すら近づくことが出来ない。
この体質が何なのかわからないためにどういえばいいのかわからない。
「その、君が臭くて・・・」
「えっ私香水とかつけていないしお風呂も入っているのに臭いですか」
臭いといわれたことから心配そうに腕のほうの匂いを嗅いで確認している。失礼なことを言っているのにいやそうな顔をすることなくただ焦っているようだ。
その様子をみて失礼なことをしてしまったと反省する。
「違う、君というよりは君の魔力だ」
更に少女は不思議そうな顔をする。
それもそうだろう、魔力には本来においなど存在しにないし魔法は可視であっても魔力が可視化することはなかなかない。
先ほどの反省を生かして言葉選びを考える。
「君はどうしてそんなとんでもない魔力を持っているのに普通を装っているんだ?」
少女に対して入学当初から抱いていた違和感を率直にぶつけることにした。
すると、俺の失礼な言葉にも崩さなかった笑顔が一瞬消え去った。
「少しだけお話しませんか、先輩」
すぐに笑顔になって近くの空き教室を指さされたが、提案というよりはほぼ強制のような雰囲気を出しており頷く事しかできなかった。
昼休みに空き教室で異性といる姿なんて見られてしまったらどう考えても勘違いされるであろうしそれも人気が高い女子とあれば友人に怒られてしまいそうなくらいだ。
しかし俺は全く浮かれた気持ちはなかった。
先ほどはとんでもない魔力だと表したが、それですら過小評価と言えてしまうくらいの圧倒的な力を持っているとにおいの強さから考えられる。出会ったこともないというよりも、この学校の人たちの力を全て集めたとしても足りないくらいであり、言い方は悪くなってしまうが化け物という呼び方がちょうどいいのではないかと思える。
俺には人気のあるかわいい少女というよりも恐ろしい化け物に見えてしまう。
「魔力の匂いを嗅ぐことが出来る魔法というのは初めて聞きました」
「魔法というよりも体質なんだよな。一応回復魔法はある」
普通は体質なんてものは存在しないが、生まれたときから人の魔力が嗅ぐことが出来たためそればかりは俺にもわからない。
少女は目を閉じて考えている。
「先輩の名前を聞いてもいいですか」
さすがに学校の人気者には俺みたいな目立たない先輩の名前なんてわかるわけがないよな。
「佐倉奏多だ」
「佐倉先輩ですね。私は山田理沙です」
山田理沙、山田理沙。何度も聞いてきた名前であるがあまりピンとこない。何度も聞いているはずなのに忘れてしまう。
山田とは少し距離を開けて話している。
こうして向き合って話していても笑顔の向こう側からは何も感じさせない。
「私としては目立ちたくないので魔力の件は口外しないでほしいです」
まあそうだろうな。
目立たければ魔力テストで問題なく学校で一番になっているだろう。
「大丈夫だ。今までもこれからもしゃべらないことを約束する」
「ありがとうございます」
ほっと安心した表情をしている山田。この実力差ならば実力行使される可能性もあったためその心配はなさそうなことに胸をなでおろす。
俺の力は全く戦闘向きではない。
「ちょっといいか」
「なんでしょうか」
警戒も解けたところで一つ聞きたいことがあったためついでに聞いておこう。
「右腕痛くないのか」
山田の目が大きく開いた。
魔力の匂いが分からないのだからもちろん理解することが出来ないだろう。普通はかなり近づかないと魔力の匂いなんて分からないがこの子の場合ではあまりにも強いにおいから魔力の嗅ぎ分けがすることが出来るのだが、明らかに右腕に魔力がたまっている。
以前すれ違ったときからもしかしたらと思っていたが。
「山田って魔力栓症にかかっているだろう」
「直球ですね。ですけど、確かにそうです」
「強すぎる魔力を持つと大変だな」
彼女のように強い魔力を持っていると身体の中で塊を作ってしまい、詰まる。それによって十分に魔法を出すことが困難になってしまうためこの疾患を持っているとかなり戦闘に不利になる。魔力を持つと比例してこの疾患リスクが高まるがあまり罹患リスクは高くないものである。
今は右腕であるが、前は左ひじだった気がする。そんなに何度もかかるようなものでもないがかなりかかり癖がついてしまっているのだろう。
「思っているよりも知られているみたいですね」
朗らかな笑顔を見た瞬間、血の気が引くような気がした。
なにこのこ、超怖いんですけど。
ガツン、と強いにおいが鼻をつんざく。
足元が氷で覆われていていき、冷たい感覚が足の感覚を奪っていくような気がしていく。こんな一瞬で足元まで凍らされるなんて恐ろしすぎる。とてもかなうような相手ではないということはわかりきっていたことだがここまでとは。そもそもにおいからして彼女の本気にはまだほど遠いだろう。
消される。
俺は足がとられていることによってしりもちをついてしまった。
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
「なんでしょうか」
「何もお前を脅したり危害を加えるために話したわけじゃない」
俺を探るように目をすぅっと細めた。
ただの魔力が強い少女だと思っていたがどうもそういうわけではないらしい。魔力を持て余している人を見てきたことがあるがこの子は存分に生かしつつ持ち前の何かがあるみたいだ。思っていたよりもかなり実力者なのだろう。
とにかく聞いてくれるらしい。
「少し触ってもいいか」
足の氷が膝まで上がってきた。
「待て待て待て待て!その右腕の部分だけ触りたいだけだ」
「何を企んでいるんですか」
「もしも不利益なことをしたら凍らせてくれていい」
そういうと、おずおずと白い右腕を差し出してくれる。
相変わらず魔力のすごいにおいだからその腕に触るため近づく前に鼻をつまむ。
「なんだか複雑です」
それは申し訳ないが女の子に対してこんなことはいけないと分かっているうえでどうしても近づくことが出来ないくらい強いにおいがあるせいである。
おずおずと右腕を触る。
それにしてもよく見ないと分からなかったが、腕にはかなりの量の傷跡が残されていて痛々しい感じになっている。どうしたらこの年齢でここまでの傷ができるのだろう。とんでもないドジっ子だといえば聞こえはいいが、そういう傷ではないと素人目でもわかる。
「あの」
上目遣いで見てくるため非常にかわいい。
だが容赦なく腰くらいまで氷がどんどん上がってきているんですけどこの子なんなの顔と魔法が分離しているの。
きちんと目標を達成するから待っていてほしい。
「ここだな」
するりと塊が出来ている部分に指を這わせる。
別に特別なことをするわけでもない。
魔力栓が出来ている部分の近くを、そっと指で押す。
「んっ」
少しだけ色気の混じった鼻にかかった声が、山田から漏れる。
魔力の流れが、流れる上流の部分を押すことによって魔力圧が強くなり流れが増していく。そして通常通りの流れへと変わっていく。
魔力栓というのは、魔力がたまっていくことで痛みが増していく。そして魔力が多い人ほどその痛みは大きいものになる。
「え、うそ」
驚いた声。
きっと感じていた痛みがなくなったことによる驚きなのだろう。
「何をしたの」
「俺は回復魔法だから魔力の流れに干渉することが出来るんだ。その代わりに回復機能はかなり低いんだけどな」
回復魔法は別に珍しい魔法ではないが、俺よりも回復に特化した人はかなりいるが俺の魔力を嗅げる体質と同様に他に聞いたことがないものである。
それは彼女にとってもそうだったらしい。
目を瞬かせる。
驚かれることは想定していたが、反対に俺のほうが驚くことになった。
彼女の瞳から、溢れんばかりの大きな粒が流れ落ちてきたからだ。本人ですら予測していなかったように隠すこともなく2.3滴は流れていく。それが頬から顎にいき、零れ落ちていく姿を見届けると気づいたようで目を勢いよくこすった。
「どうしてお前・・・」
「あなたにはわかりませんよ」
一見すると冷たい言葉。
しかし、彼女は微笑んでいた。
「この病気のせいで、一日中痛みに苦しんできました」
顔をぐちゃぐちゃにして、彼女は言う。
「この病気のせいで、たくさんの戦いで使い物にならなくなりました」
女の子を泣かせてしまった罪悪感に、胸が痛む。
「あなたにはわかりませんよ」
もう一度彼女は口にした。
「わからないと思いますけど、本当にありがとうございます。ここで出会えて私はこれから治療を簡単にすることが出来ます」
「え、これから?」
山田は帽子を外した。
「私は白国戦闘幹部の猫かんです。私のマッサージ係に任命します」
帽子の下に隠されていた、真っ白な長い髪と、
猫耳が出てきた。
「拒否権はないのか」
「はい!」
道理で魔力が高いはずだ。
白国戦闘幹部猫かん。
国中ということも過小評価であるといわれるほどの圧倒的強さを誇り数々の伝説を残した世界最強と呼ばれている、世界中から恐れられる人物。
猫耳をつけている屈強な男をイメージしていたが・・・まさか高校生で、こんなに屈託のない可愛らしい笑顔を浮かべる華奢な女の子だとは。
これが、世界最強の少女との出会いだった。
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