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最終話
しおりを挟むわたしは先に自分の部屋に戻り、メイドたちに「今日はもう良いわ」と帰って貰った。
「宝石を隠すとしたら、何処かしら?」
わたしは広い部屋の中を見回した。
「わたしだったら…引き出しの中?」
取り敢えず、ここにある全ての引き出しを開けてみる事にした。
客間で、わたしの私物しか入っていない為、空の引き出しがほとんどだ。
そうこうしている内に、扉が叩かれた。
「フェリクスだよ、入っても良いかい?」
わたしは直ぐに扉に駆けつけ、それを開いた。
入って来たのは、フェリクス、そして、ダイアンだった。
「ダイアン!?」
ダイアンまで連れて来るとは思わず、わたしは驚いた。
フェリクスは「ふふ」と笑うと、ダイアンの傍に片膝を着き、
手に持っていたハンカチをダイアンの鼻先に近付けた。
「それって、ベアトリス夫人の?」
「うん、臭いが残っていないかと思ってね、母が隠したのでなければ、難しいかな…」
「ダイアン!頑張って!」
わたしは側でダイアンを応援した。
ダイアンはゆっくりと歩き出した。
よたよたと、歩みは頼りないが、三月近く一緒に居たので、
ダイアンが聡明な事は、わたしも良く知っている。
鼻をひくひくとさせ、よたよたと歩いて行った先は、長ソファだった。
クッションを退けると、赤い宝石があった。
「あったわ!」
「あったね…」
隠しているのでは?と思いながらも、実際に出て来ると、変な気持ちだった。
フェリクスは「失礼」と断り、宝石を手にすると、それをまじまじと見て…「本物だ」と呟いた。
「ありがとう、ダイアン!あなたのお陰よ!!」
座る時に気付いたかもしれないが、気付かなかった可能性の方が高い。
それに、部屋中を探す手間が省けた。
わたしはダイアンに抱き着き、その頭を撫でてやった。
ダイアンはうれしいそうに、尻尾を上げた。
「その宝石だけど、どうするの?」
「僕が返しておくよ、尤も、母には直ぐに療養施設に入って貰うけどね」
「その話、本気だったの!?」
そんな話もしていたが、ただの脅しだと思っていた。
わたしにとっては、厄介な夫人だが、フェリクスにとっては実の母親なのだから…
「このままにしておけば、増長していくだけだからね。
君の事もあるけど、ここ数年の母の使用人たちへの態度は、目に余るものがあった。
それに、知っての通り、散財が酷くてね…
伯爵も怒り心頭だったよ、遅かれ早かれ、何か手を打つつもりだったんだ」
「でも、ドミニク様は?」
夫のドミニクは、優しい人だ。
妻が療養施設に入るのに反対するのではないか?
「君の目には、父は母を好いている様に見えたよね?
二人は人前ではそれなりに仲良くしているけど、その実、仮面夫婦なんだ」
ベアトリスは遺産目当てでドミニクに迫り、伯爵夫人になれないと知った時から、
ドミニクに酷く当たる様になり、ドミニクはそんなベアトリスに失望した___
意外だった。
だが、ベアトリスはドミニクを軽く見ていたし、平気で嫌味を言ったりもする。
愛想を尽かされても仕方ないだろう。
「だけど、離縁は出来ない、それが結婚の条件だからね。
離縁したら、伯爵からの援助は無くなり、二人共に館を出て行かなくてはいけないんだ。
残念だけど、母が館を出ると知れば、父は喜ぶよ…」
フェリクスは小さく息を吐く。
両親の不仲を見て来たなんて…
フェリクスもエリザベスも、さぞ、心を痛めてきたに違いない。
「母には療養施設でゆっくり休んで、考えを改めて貰うよ」
「改めるかしら?」
「改めない限り、ここには戻れない様にするよ」
フェリクスはもう決めている様だった。
彼は賢い人だ、それに、信頼出来る。
わたしは頷いた。
「今日は、ありがとう、フェリクス。
あなたがいてくれて助かったわ…」
自分だけでは、どうにも出来なかっただろう。
きっと、状況を悪くしただけだ。
「今夜の事も含めて、返事を検討してくれるかな?」
フェリクスが冗談の様に言い、わたしは笑った。
「ええ、勿論!加点しておくわ!」
フェリクスが優しい笑みを見せる。
そっと、わたしの頬にキスを落とす。
それは、甘美で、小さく震えてしまったが、フェリクスはわたしから離れ、
ダイアンを連れて部屋を出て行った。
明日、わたしが気持ちを打ち明けたら、フェリクスは喜んでくれるかしら?
期待に胸が膨らむ。
それでも、僅かに、不安はあって…
そんな時、彼の言葉が蘇った。
『彼女は僕のものだから、諦めてくれ』
その言葉が、何より強い《御守り》になり、わたしは眠りに落ちた。
◇◇
今日は、フェリクスに返事をする日___!
わたしは気持ちが高ぶり、いつも以上に早く目が覚めた。
朝、フェリクスと乗馬をする時に、返事をしよう!
二人きりになれるし、綺麗な景色は、告白をするに相応しいだろう。
わたしは急いで着替えをし、部屋を出た。
わたしたちは直接厩舎で待ち合わせをしている。
どちらかが少し遅くなっても、馬の世話をして待っていられるので、その方が都合も良いのだ。
だが、この日、わたしが階段を下りていくと、既に着替えを済ませたフェリクスが立っていた。
「フェリクス!」
その姿を見ただけで、胸が騒ぎ始め、体温が二、三度上がった気がした。
「お早う、オリーヴ」
フェリクスはいつも通りの微笑で迎えてくれた。
ドキドキしているのは、わたしだけかしら?
「お早う、フェリクス、早いのね!」
「実は、あまり眠れなくて、早く起きてしまったんだ」
フェリクスが照れた様に言うので、わたしは今直ぐにでも返事をしてしまいそうになった。
ああ!駄目よ!薄暗い、館の玄関ホールでなんて!
「わ、わたしもよ、それじゃ、厩舎に行きましょうか」
だが、わたしの我慢も厩舎までが、精一杯だった。
厩舎の入り口が近くなり、わたしは駆け出した。
そして、入り口を塞ぐ様に、両手を広げて立った。
「フェリクス=フォーレ伯爵子息!
あなたが好きよ!
最初はそうでも無かった、あなたはわたしの理想とは違い過ぎていたから…
でも、一緒にいる間に、自分でも信じられない位、あなたの事を、凄く凄く、好きになってしまったの!
あなたは今も、わたしと結婚したいと思ってくれている?
あなたの気持ちが変わってしまっても、構わない、今度はわたしがあなたを振り向かせてみせるわ!」
フェリクスはわたしをじっと見つめ、最後まで黙って聞いていた。
そして、一歩、踏み出した。
「オリーヴ=デュボワ伯爵令嬢、君が好きです。
君の刺繍を見た時、きっと、僕は君に恋をしたんだと思う。
君と一緒にいて、もっと、もっと、君を好きになったよ。
君の潔い所も、剣術が得意な所も、活動的でお人好しな所も、
動物たちに愛されている所も、エリザベスを懐柔してしまう程の魅力も、感心するし、尊敬している。
完璧に見えて、苦手な事がある所も、可愛い。
いつも元気な君が、萎れていると、気になって何も手に付かなくなる…
君の事を知る程に、好きになってしまうんだ。
最初から好きなのに、これ以上、好きになれるとは思わなかった」
フェリクスの告白に、わたしはぼうっとしていた。
こんな風に、自分を見てくれていたなんて、思わなかった…
「昨日、レイモンが現れた時には、不安になったし、焦ったよ。
僕は今まで一体、何をしていたんだってね…
レイモンの言う通り、僕は君に断られるのが怖くて、慎重になっていたんだ…」
フェリクスは自嘲し、頭を振った。
そして、顔を上げ、その宝石の様な碧色の瞳で、真直ぐにわたしを見た。
「改めて、申し込むよ、オリーヴ、僕と結婚して下さい」
「はい、フェリクス、あなたと結婚するわ!」
フェリクスが輝く様な笑顔を見せる。
きっと、わたしも同じだろう。
「ありがとう!オリーヴ!」
フェリクスがわたしを強く抱きしめ、わたしも強く抱きしめ返した。
空が明るくなり始める中、わたしたちは乗馬など忘れ、手を取り合い、
笑いながら駆け出していた。
◇
「オリーヴ、祖父、フォーレ伯爵に会って貰えるかな?」
館に戻って来て直ぐに、フェリクスから言われた。
フォーレ伯爵家の仕来りで、選んだ相手を伯爵に披露し、結婚の許しを貰うのだ。
それと同時に、フェリクスが《伯爵》の継承権を得るかどうかが決まる___
「ええ、だけど、わたしで大丈夫かしら?」
フェリクスは何も言わないので、ついつい、忘れてしまうが、
わたしは規格外に背が高く、周囲からは《不格好》と言われてきた。
伯爵夫人に相応しいとはとても思えない。
「もし、継承権が貰えなかったら…」
フェリクスに悪いというのもあるが、一番は、彼が後悔しないか…その事への不安だった。
だが、フェリクスはいつもの様に、微笑み…
「その時は、何処か牧場を買って、二人で暮らさないかい?
馬を育ててもいいし、牛や豚、羊を飼うのもいいね…」
フェリクスは獣医も出来るし、わたしはその助手をするのも良い。
「動物に囲まれて暮らすのね…楽しそう!」
例え、認められなくても、わたしたちは大丈夫___
わたしの心は晴れ、「伯爵に会うわ!」と答えていた。
わたしとフェリクスは一緒に朝食を食べ、着替えをしてから、落合い、伯爵の部屋を訪ねた。
「フェリクスです、伯爵に紹介したい方がいます」
フェリクスが扉の前で声を掛けると、「入れ!」と返事があった。
わたしはドキドキとしてきたが、フェリクスが勇気付ける様に、手を握ってくれたので、背筋を伸ばせた。
伯爵だろうと、グリズリーだろうと、来るなら、来いよ!
伯爵の部屋は広く、壁際には大きな本棚が占めていて、本がぎっしりと詰められている。
家具は重厚だが、ソファの生地は花模様だし、敷かれた絨毯は唐草模様。
丸テーブルや小さなテーブルにはレースが掛けられている。
繊細な細工のランプや、素朴な花を挿した花瓶が置かれている。
猫足の家具も多く、何処か可愛らしく温かみがある。
わたしはふと、壁に掛けられた大きな肖像画に気付いた。
綺麗で上品な夫人の肖像だ。
伯爵夫人かしら?
ずっと前に亡くなったと聞いたが、今もこうして、肖像画を飾っているのは、想いが強いからだろうか?
伯爵はソファ椅子に座っていた。
白髪に白い髭の老人だが、その碧色の目は鋭い。
わたしを観察しているのだろう…
ふと、わたしは隣のソファ椅子に目を向けた。
フリルの付いた可愛らしいクッションが置かれている。
伯爵夫人の椅子かしら?
きっと、誰にも座らせないのだろう…
不思議と、そんな事を考えていると、フェリクスの凛とした声が聞こえてきた。
「伯爵、紹介します、オリーヴ=デュボワ伯爵令嬢です。
僕は彼女との結婚を決めました、どうか、お許し下さい___」
フェリクスが頭を下げる。
わたしも彼に習い、頭を下げた。
「良い人を選んだな、フェリクス。
二人ならば、フォーレ伯爵家を任せられる。
フェリクス、オリーヴ、伯爵家を継いでくれるな?」
わたしたちは顔を上げた。
伯爵は微笑を浮かべ、わたしたちを見ていた。
その碧色の目は優しい…
フェリクスがわたしの手を握り、わたしたちは、「はい!」と答えていた。
「さぁ、二人共、座りなさい、結婚式はいつ挙げる?」
途端に、伯爵は態度を変え、馴れ馴れしくなった。
わたしはそこで、《それ》に気付いた。
「ガブ?」
思わず漏らしたわたしに、フェリクスは不思議そうな顔をしたが、
伯爵は悪戯っ子の様に、ニヤリと笑い、「しらんなー」と誤魔化した。
絶対に、ガブだわ!
もしかして、普段はドミニクとフェリクスに仕事を任せて、遊んでいるのかしら?
それに、伯爵がガブなら、あの夫婦の話は…
フェリクスの祖父と祖母の話という事になる。
流石、血は争えないわね…
わたしは今朝の自分たちを思い出し、「くすくす」と笑ってしまった。
「オリーヴ、どうしたの?」
「ううん、何でもないの!
フェリクス、結婚式で一つだけ、どうしても叶えて貰いたい事があるの」
「君の為なら、出来る限りの事をするよ」
フェリクスが約束してくれたので、わたしはそれを話した。
「結婚式に、画家のジョエル=フゥベーを招待して頂きたいの!」
フェリクスと伯爵は目を丸くした。
「大叔父のジョエル?」
「ジョエルはわしの異母弟じゃ、結婚式でなくとも、いつでも呼べるが?」
わたしは頭を振った。
「結婚式でなくては困るわ!
実は、わたしの父が、画家ジョエル=フゥベーの、大、大、大崇拝者なの!
結婚式に招待して下されば、きっと父は感激して、伯爵に感謝するわ!」
「はっはっは!良かろう!披露パーティでは同じテーブルにしてやる。
ジョエルには、何点か絵を持って来る様に伝えよう!」
伯爵は即座に手を打ってくれた。
「良かったね、オリーヴ」
フェリクスがわたしの手を取り、両手に包んだ。
優しい瞳だが、少しだけ、唇を尖らせている。
「だけど、僕にも何か強請ってくれないかな?
僕にも君の為に何かをさせて欲しいな」
わたしは「ふふふ」と笑い、彼に盗むようなキスをした。
「それは、これからよ!
楽しみにしていて、わたしのフェリクス!」
《完》
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