上 下
19 / 25
本編

18

しおりを挟む


「アッシュの部屋で古い…日記の様なものを見つけた。
一部、転写してきた___」

転写魔法だ。
ディランは懐から手帳を取り出した。

「日記によると、ソルト・オッドはロータスよりも十五歳年上だったが、
彼女に恋をしていた。
彼女は美しく可憐で、一目見れば、誰もが恋に落ちたらしい。
その為、彼女を助けようと、数々の手が差し伸べられた。
だが、幾ら治癒しても、新たに病に掛かってしまう。
ソルトは彼女の為に、三年掛けて、病に強い体質にする薬を開発した」

「それが、クラーク公爵家の《秘伝の薬》なのですね!」

わたしはこれまで詳しい事を聞かされた事が無かった。
『病にならない為に飲むように』と言われ、何も考えずに飲んでいた。

「ああ、だが、そこで終わりではない」

ディランが手帳を捲る。

「薬で高い評価を得たソルトは、この機にロータスとの結婚を公爵に申し出るつもりでいた。
だが、病が治り元気になったロータスは、早々に公爵子息と婚約してしまった。
ソルトのロータスへの愛は憎悪に変わった」

憎悪!?
わたしはぞっとし、身を縮めた。

「ソルトは、病に弱い体質の一族が健康でいる為には、
この《薬》を飲み続ける必要があると言い、
調合法は明かさず、公爵家専属の薬師の座に収まった。
そして、少しずつ、薬に手を加え、ロータスだけを太らせて行った」

「そんな事が出来るのですか!?」

「ロータスに渡す薬と、他の者に渡す薬とを分けていたんだ。
それに、肥満体であっても、病の症状が出なければ、病の所為とは思わない。
薬の所為とも思わなかっただろう。
ソルトの狙いは、醜い姿になったロータスに、夫や子供たちが愛想を尽かし、
彼女の元から去る事だった。ロータスを孤独にし、手に入れようと企んだんだ。
ロータスは変わっていく自分の姿に怯え、食欲を止められない自分を責めた。
だが、夫や子供たちの愛は変わらなかった、彼女の姿が変わってしまっても愛し続けた」

「まぁ!」

何て素敵なのでしょう!
ロマンチックにうっとりしたが、まだ続きがあった。

「ロータスは生涯、ソルトに振り向く事は無かった。
ソルトはクラーク公爵家一族を憎み、呪った。
末代まで、一族が滅亡するまで、醜い姿を晒し続ける様に作られたのが、
《秘伝の薬》だ___」

「まぁ!」

その様な、恐ろしい意図があったなんて!
何も知らず、《秘伝の薬》を有難がっていた。一族皆、そうだろう…

「《秘伝の薬》の調合法を知るのは、オッド家の中でも、
クラーク公爵家の専属薬師の座に就く者だけにし、秘密を厳守し、
代々、祖先の恨みを晴らしてきたという訳だ」

凄い、執念を感じます!

「それでは、薬を飲まなければ、わたしたちはこの体型から逃れられるのですね!?」

「そういう事になるが、逆に、病に弱い体に戻る恐れもある」

うう…それは、困ります。
わたしはふと、それに気付いた。

「ですが、最初の薬には、太る効果は入っていなかったのですよね?
その薬を作って頂けたら、問題は解決しますわ!」

「ああ、だが、先祖の恨みは深いぞ、アッシュが素直に作ると思うか?
そもそも、アッシュはこの事を知っていて、《秘伝の薬》を作り続けている。
その気になれば、いつでも、最初の薬を作る事が出来たんだ」

つまり、報復は続行中なのですね…

わたしは「ふぅぅ」と、肩を落とした。

「それじゃぁ、アッシュと取引をすればいいんじゃない?」

ヒョコリと顔を出したのは、エイミーだった。
いつの間に来たのか、どうやら話を聞いていたらしい。
わたしは驚き、ポカンと目と口を開けたが、ディランは早速検討に入っていた。

「確かに、取引という手もある…
そもそもは、三百年も前の先祖の、たかが失恋の逆恨みだ。
アッシュを説き伏せる事も、不可能ではないかもしれない。
公爵に知らせ、アッシュと取引して貰うか」

「お父様を呼んで来てあげる!」

エイミーが出て行った。

たかが失恋の逆恨み…
だが、それこそが、根深いものになるのではないか…
ソルトのロータスへの想いは、あまりに深く、
こんな方法でしか、消す事が出来なかったのではないか…
わたしには、ソルトが気の毒に思えた。


父を待つ間、ディランは転写してきたものを、真剣に読んでいた。
わたしは邪魔をしない様に、メイドを呼び、お茶を運ばせる事にした。
暫くして、お茶が届き、エイミーが父と母を連れて戻って来た。
わたしたちは、図書室の大きなテーブルを囲み、席に着いた。

「はぁ、はぁ、それで、《秘密の話》とは、なんでしょう、ディラン殿下」
「ふぅ、はぁ…《秘密の話》だなんて、私たち、わくわくしていますのよ!」

二人共、息は荒いが、頬を紅潮させている。
その目を、子供の様に輝かせて。

「良い話とは限りませんが、お話しさせて頂きます___」

ディランが説明を始め、わたしは紅茶を注いで配った。

「これは驚いたね、そんな真実が隠されていたとは思わなかったよ…
それが本当ならば、一度、アッシュと話さなくてはいけないね」

「ああ!私たち、痩せる事が出来るのね!素晴らしいわ!」

「ああ、だがね、イザベラ、痩せて病に掛かってしまってはいけない。
ここは、何としても、アッシュを説得しなければね…」

わたしは話を聞きながら、ふと、思った。

ソルトは、自分の望みを口にしていない。
ロータスへ愛を告げる事も、公爵に申し出る事も無かった。
ソルトは、公爵かロータスに、想いを聞いて貰いたかったのではないか…

「お父様、アッシュのお話を伺いましょう!
内に秘めていた事を、全て吐き出して貰うのです。
恨み事でも何でも構いません、
ソルト様の無念を晴らさせてあげなくては、気が済む事は無い様に思います」

「ああ、おまえの言う通りだね、プリムローズ」

父は使用人を呼び、アッシュを連れて来る様に命じた。


暫くして現れたアッシュは、少なからず、この状況に困惑していた。
何と言っても、家族が勢揃いしているのだ。

「まぁ、座りなさい」

わたしは新しく紅茶を注ぎ、アッシュの前に置いた。

「アッシュ、《秘伝の薬》を調べさせて貰ったよ」

父が言うと、アッシュは顔色を変え、ガタンと勢い良く席を立った。

「何故、その様な事を!約束が違う!そんな事なら、もう、薬は作りませんぞ!」

「いいから、話を聞け、アッシュ」

ディランが魔法でアッシュを動けなくした。
アッシュは藻掻くも術を解く事は叶わず、ディランや父を睨み付けた。

「くっ!卑怯者め!!」

アッシュに暴言を吐かれながらも、父は平然と話を進めた。

「《秘伝の薬》には、病に強い体にする効果の他に、太る効果があるそうだね。
そして、それは、この薬を作ったソルト・オッドの恨みによるものだと…
それは、本当かね、アッシュ」

「フン!知りませんよ!私は調合通りに作っているだけですからね!」

「ソルト・オッドの恨みの事は知っているだろう?
それについて、君はどう思っているのかね?
先祖の恨みを引き継いでいるなら、ここでそれを話し、晴らしても良いのではないかと思うんだよ」

「フン!遺言通りさ、クラーク公爵家が一人残らず、死に絶えるまで、呪いは終わらない」

「そうか、だがね、もう、呪いのカラクリは分かってしまったからね」

父が言うと、アッシュは「ぐっ」と言葉に詰まった。

「ソルト・オッドの作った、最初の薬には、太る効果は入れられていなかった。
君に、その薬を作れるかね?」

「さぁ、ね」

「もし、君がその薬を作ってくれるというのなら、新たに契約を結びたい」

父が言い、アッシュの顔から毒気が抜けた。

「新たな、契約?」

「ああ、今までの契約は、ソルト・オッドと結んだものだ。
もう三百年も経つんだ、ソルトも『十分に復讐は果たした』と言うのではないかね?
もう、誰もソルトを知らない、ロータスの事も、思い出す者はいないんだ。
君は自由になっていい、アッシュ、君の望みはなんだね?」

「こんな所で、薬を作らされるのは、もう嫌だ!
俺は偉大な薬師だぞ!《臭い消しの薬》位、俺にだって作れたさ!
それを、馬鹿みたいに、《秘伝の薬》ばかり作らされて…うんざりなんだよ!
おまえらだけ、良い目を見させて堪るかよ!」

アッシュは野心家なのだろう。
家の仕来りでこの仕事を継いだ事が不満だった様だ。
それで、いつも不機嫌な顔をしていたのだ。

「それなら、太る効果の無い《秘伝の薬》の調合法を、私が買おう。
それに、退職金を加えて渡す。
それで、君は自由だ、どうかね?アッシュ」

自由を望んだ筈のアッシュだが、やはり先祖の遺言は重いのか、迷っていた。

「代々、受け継いで来た事だ、私の勝手には…」

「だがね、全てが明るみになった以上、これまで通りにオッド家の者を、
我が公爵家の薬師に就ける事は出来ないよ」

「フン!おまえらには《秘伝の薬》が必要だろう!」

アッシュが見下す様に言った。
それがある限り、アッシュは優位に立てると思っていたのだろう。
だが、父は毅然として言った。

「ああ、だが、我が公爵家にも誇りがある。
《秘伝の薬》の真相を知った今、その薬を喜んで用いる者は、一族にはおらんよ。
私の代で、ソルト・オッドの怨念を絶つ、そう決めたのだ。
アッシュ、選びなさい、太らない《秘伝の薬》の調合法を売り、出て行くか。
このまま、出て行くか」

「フン!先祖の為にも、俺はこのまま出て行くよ!
おまえら、全員、ソルト・オッドの呪いで命を落とすのさ!」

「いいだろう、おまえの望みを聞き入れよう、アッシュ。
今日までの給金を受け取り、館を出て行くがいい。
だが、一度館を出れば、二度とクラーク公爵家の敷居は跨がせない。
覚悟して行きなさい___」

父が執事を呼び、アッシュに給金を渡す様に命じた。
ディランが魔法を解き、アッシュは「フン!そっちこそ、後悔しても遅いからな!」と、
図書室を出て行った。

取引は決裂してしまった___

「これで、良かったのでしょうか…」

母が小さく言い、父が母の手をそっと握った。

「ああ、これでいい、少なくともアッシュは、先祖の柵から解き放たれた。
後は、私たちだ___」

父が言う通り、ソルト・オッドの怨念を断ち切る事には賛成だった。
だが、《秘伝の薬》が無ければ、わたしたちは、どうなってしまうのか?
病に掛かり、命を落とすかもしれない___

「少なくとも、これ以上、太ったりはせんだろう?」

父が軽口の様に言い、母が「薬の所為には出来ませんわね!」と明るく同調し、
わたしとエイミーは笑った。

「それに、三百年前とは違う、薬学も進歩した。
今の世の薬師に賭けようじゃないか!」

「そうですわね!」

話が纏まった所で、ディランが口を開いた。

「これは私の見解ですが、
おっしゃる通り、三百年前と現在では大きく違っています。
三百年前、それ以前のクラーク公爵家の食生活の記録を見ましたが、
脂肪や甘味を多く取り入れた食事が中心になっています。
中でも最も食されていたのが、アイアーオオトカゲの肉です」

アイアーオオトカゲの肉!?
今では見掛ける事が無い、ほぼ、絶滅した生き物だ。

「アイアーオオトカゲの肉は精が付きますが、その血には毒素があり、危険です。
クラーク公爵家の調理記録によると、アイアーオオトカゲの血を使った料理が幾つかありました。
体が弱くなった切っ掛けは、贅沢で偏った食事とアイアーオオトカゲの毒素によるものかもしれません。
それが遺伝により、引き継がれたのではないかと、考えます」

「ならば、食生活を見直せば良いのですな?」

「はい、なるべく、体に良いものを取り入れて下さい。
それから、適度に運動をなさって下さい。
病に掛かった時には、薬や治癒師に頼る事です」

「ああ、そうしよう、皆、している事だ、薬に頼りきり、楽をしていたのが間違いだ。
イザベラ、プリムローズ、エイミー、聞いた通りだよ、
もう、薬とも過去の因縁ともおさらばだ!」

父が宣言し、母、わたし、エイミーは「わぁ!」と喜びの声を上げた。

直ぐに料理長が呼ばれ、父とディランと三人で、食事の改善が時間を掛け練られた。

「油分と甘味は控えめに」
「パンは全粒粉が良いでしょう」
「なるべく腹持ちの良い物、歯応えのある物で…」

聞き慣れた言葉が飛び交い、わたしは笑ってしまいそうになり、必死に抑えた。

「葉っぱのサンドイッチなんて!絶対に美味しくないわ!」

エイミーが涙ながらに訴えるので、わたしは「意外と美味しいのよ」と言ってあげた。


その間に、アッシュは館を出て行った。
クラーク公爵家の薬師の給金は高く、アッシュは遊びや賭け事もしていなかった。
加えて独り身なので、相当貯め込んでいるだろう。当分、金に困る事は無い筈だ。
これからは、好きな場所へ行き、好きに薬を作るのだろうか?
後味が良いとは言えないが、因縁が切れた事だけで十分と言える。

子孫が三百年も遺言を守ったのだから、ソルト・オッドの怨念も晴れただろう。

そうあって欲しいものです…

三百年間、翻弄されてきた者たちを思い、わたしは願ったのだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

猛禽令嬢は王太子の溺愛を知らない

高遠すばる
恋愛
幼い頃、婚約者を庇って負った怪我のせいで目つきの悪い猛禽令嬢こと侯爵令嬢アリアナ・カレンデュラは、ある日、この世界は前世の自分がプレイしていた乙女ゲーム「マジカル・愛ラブユー」の世界で、自分はそのゲームの悪役令嬢だと気が付いた。 王太子であり婚約者でもあるフリードリヒ・ヴァン・アレンドロを心から愛しているアリアナは、それが破滅を呼ぶと分かっていてもヒロインをいじめることをやめられなかった。 最近ではフリードリヒとの仲もギクシャクして、目すら合わせてもらえない。 あとは断罪を待つばかりのアリアナに、フリードリヒが告げた言葉とはーー……! 積み重なった誤解が織りなす、溺愛・激重感情ラブコメディ! ※王太子の愛が重いです。

悪令嬢ブートキャンプ

クリム
恋愛
 国王に見染められた悪令嬢ジョゼフィーヌは、白豚と揶揄された王太子との結婚式の最中に前世の記憶を取り戻す。前世ダイエットトレーナーだったジョゼは王太子をあの手この手で美しく変貌させていく。  ちょっと気弱な性格の白豚王太子と氷の美貌悪令嬢ジョゼの初めからいちゃらぶダイエット作戦です。習作ということで、あまり叩かないでください泣

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです

伝える前に振られてしまった私の恋

メカ喜楽直人
恋愛
母に連れられて行った王妃様とのお茶会の席を、ひとり抜け出したアーリーンは、幼馴染みと友人たちが歓談する場に出くわす。 そこで、ひとりの令息が婚約をしたのだと話し出した。

完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。

音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。 だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。 そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。 そこには匿われていた美少年が棲んでいて……

気がついたら無理!絶対にいや!

朝山みどり
恋愛
アリスは子供の頃からしっかりしていた。そのせいか、なぜか利用され、便利に使われてしまう。 そして嵐のとき置き去りにされてしまった。助けてくれた彼に大切にされたアリスは甘えることを知った。そして甘えられることも・・・ やがてアリスは自分は上に立つ能力があると自覚する

どうぞご勝手になさってくださいまし

志波 連
恋愛
政略結婚とはいえ12歳の時から婚約関係にあるローレンティア王国皇太子アマデウスと、ルルーシア・メリディアン侯爵令嬢の仲はいたって上手くいっていた。 辛い教育にもよく耐え、あまり学園にも通学できないルルーシアだったが、幼馴染で親友の侯爵令嬢アリア・ロックスの励まされながら、なんとか最終学年を迎えた。 やっと皇太子妃教育にも目途が立ち、学園に通えるようになったある日、婚約者であるアマデウス皇太子とフロレンシア伯爵家の次女であるサマンサが恋仲であるという噂を耳にする。 アリアに付き添ってもらい、学園の裏庭に向かったルルーシアは二人が仲よくベンチに腰掛け、肩を寄せ合って一冊の本を仲よく見ている姿を目撃する。 風が運んできた「じゃあ今夜、いつものところで」という二人の会話にショックを受けたルルーシアは、早退して父親に訴えた。 しかし元々が政略結婚であるため、婚約の取り消しはできないという言葉に絶望する。 ルルーシアの邸を訪れた皇太子はサマンサを側妃として迎えると告げた。 ショックを受けたルルーシアだったが、家のために耐えることを決意し、皇太子妃となることを受け入れる。 ルルーシアだけを愛しているが、友人であるサマンサを助けたいアマデウスと、アマデウスに愛されていないと思い込んでいるルルーシアは盛大にすれ違っていく。 果たして不器用な二人に幸せな未来は訪れるのだろうか…… 他サイトでも公開しています。 R15は保険です。 表紙は写真ACより転載しています。

処理中です...