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エピローグ

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窓の外では、黄金色の葉が、ひらひらと降っている。
一面が秋色に染まる頃、それは届いた。


「奥様、お手紙が届いています」
「ありがとう、リリー」

受け取ったのは、何の変哲も無い白い封筒だった。
だが、そこに記された差出人の名は、待ち望んだ人の名で、
わたしは目を見張り、息を飲んでいた。

「まぁ!アンリエット!?」

妹、アンリエットからの手紙___

これまでずっと、アンリエットと連絡を取りたいと願ってきたが、
行方を掴む事が出来なかった。

アンリエットからの手紙は、トラバース卿宛になっていて、
トラバース卿より転送されてきていた。

「アンリエットは、わたしがトラバース卿の館を出た事を知らないのね…」

一体、妹は今までどうしていたのか…
わたしは急ぎ、その封筒を開けた。


【お姉様へ】

【お姉様、あたしが今何処に居るか分かって?】
【あのカントルーブ公爵領の都よ!】
【ロベール卿に見初められたの!凄いでしょう!】

それでは、一緒に逃げた男とは別れたという事だ。
わたしは、アグレッシブなアンリエットに驚いていた。

【ロベール卿は凄くお金持ちなのよ!あたしの為なら、湯水の様にお金を使ってくれるの!】
【それに、こっちの都は凄いのよ!】
【ガエルモンド公爵領なんて、田舎も田舎よ!】
【ああ、お姉様にも一度見せてあげたいわ!】
【お姉様はまだ下女をしているの?】
【負債を払ってあげたいけど、遠い地では無理なの、ごめんなさいね】

アンリエットは、レオナールに負債を完済して貰った事を知らないのだ。
ガエルモンド公爵領にいれば、噂で聞いたかもしれないが、
カントルーブ公爵領にいては、話に聞く事も無いだろう。

「伝える術が無かったから、仕方ないわね…
わたしの事、気にしてくれていたのね…」

助けてくれる気は無さそうだが、例え手を差し伸べられても、わたしは断っただろう。
あのままトラバース卿の館に居たとしても、妹に犠牲を払わせてまで助かりたいとは思わない。

【こっちに来る事があったら、あたしを訪ねて来てね】
【ロベール卿の名を出せば直ぐに分かるから!】

結婚したとは書いていないので、恐らく妾なのだろう。
だが、文面から感じるアンリエットは幸せそうで安心した。

「きっと、ロベール卿は良い方なのね」

わたしはペンを取り、便箋に向かった。

負債は完済されている事、両親の死は事故だった事。
叔父が謀った事であり、その叔父が捕まった事も知らせなければいけない。

【アンリエット、あなたが幸せそうなので、安心しました】
【わたしはトラバース卿の館を出て、ラックローレン伯爵に嫁ぎました】
【夫は優しく、とても良い方です】
【わたしも幸せにやっていますので、安心して下さい】
【もし、近くに来られた時には、是非寄って下さい___】


「その頃には、良い知らせが出来るかも」

わたしはそっと、下腹を撫でた。


《完》
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