【完結】転生白豚令嬢☆前世を思い出したので、ブラコンではいられません!

白雨 音

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「会わない内に、随分逞しく成長したな、エリザ」

小さな嘆息と共に言われ、わたしは元々膨らんでいる頬を、更に膨らませた。

「お義兄様、その褒め言葉は、女性に対しては失礼ですから!」

確かに、身長が少し伸びて、横にかなり成長したけど!

「ああ、悪い、そんなつもりで言ったんじゃないよ。
以前のおまえは、内気で人を助けたり出来なかっただろう?
いつも、俺の背に隠れていた。
優しくて繊細で、外に出たら萎れて枯れてしまうんじゃないかと思っていたよ…」

ユーグの碧色の瞳には、《愛》が見えた。
《兄妹愛》だと分かっているけど…やっぱり、どきっとしてしまうわ。
これは、エリザ=デュランドに生まれた宿命かしら?
義兄にときめくようになっているの??

うう…不毛過ぎて嫌だわ…

「わ、わたしだって、十五歳です!いつまでも、深窓の令嬢ではいられないわ!」

わたしは妙な雰囲気を払うべく、強気で言った。
ユーグは寂しそうな目で、小さく笑った。

「ああ、そうだな…だが、少し化粧が濃いんじゃないか?
以前は化粧をするのは嫌だと言っていただろう?」

エリザは特別美人という訳ではない。
その上、傍にこんな超絶美形がいれば、自分の容姿に自信が持てなくなって当然だ。
「わたしなんて…化粧をしても笑われるだけ…」なんて、卑屈に思ったものだ。
勿論、当人を前に、そんな事は言えないけど…

「化粧を嫌がったのは十歳の頃でしょう?十歳は子供だもの、わたしは十五歳よ?
もっと、可愛く綺麗になりたいの!」

わたしは「うふふふ」と笑い、くるくると回った。
勿論、この巨体なので、直ぐによろけてしまったが、すかさずユーグが支えてくれた。
この肉の塊を簡単に支えられるなんて、やっぱりユーグは頼りになるわ…

「おまえは十分に可愛いし、綺麗だよ」

!!??

真顔で言われ、頬がカッと赤くなった。

こ、この、真正のシスコンめっ!!!

これでは《エリザ》が義兄に恋心を抱くのも、仕方がないのではないか??
いや、至極当然だろう。
つまり、元凶は義兄の方だ!!
わたしは胸の中でそう決定付けると、ユーグから離れ、素っ気なく返した。

「お義兄様は身内だからそういうのよ」

欲目ってヤツね!
義兄の言う事など、ノーカウントだ。

「まさか、好きな男でもいるのか?」

わたしの頭に浮かんだのは、《エミリアン》だった。
まだ出会ってもいないけど…

「変な男じゃないだろうな?
おまえみたいな世間知らずの令嬢を騙す事など、造作もないだろう…
誰か言ってみなさい、どんな奴か俺が判断してやる」

騙される前提で話さないで欲しいわ。
それに、わたしは深窓の令嬢でも、世間知らずでもないもの!
前世…女子高生だけども…の記憶を持つ、ハイパー令嬢よ!
オレオレ詐欺を撃退した事だってあるんだから!
悪い男なんて、手玉に取ってやるわ!おーほほほ!

「わたしを信じて、お義兄様!
わたしが選ぶんだもの、相手は最高の人よ!!」

わたしはユーグの胸をポン!と叩き、踵を返した。
このまま図書室に行きたかったけど、ユーグが付いて来そうなので、今日の所は諦め、寮に帰る事にした。
思った通り、ユーグは「寮まで送る」と言って聞かず、強引に付いて来たのだった。

全く、困ったシスコンね!!


◇◇


わたしが『好きな人がいる』と匂わせた所為なのか、ユーグのシスコン具合は悪化してしまった様だ。

朝、寮を出た所で、ユーグが立っているのに気付いた。

「お義兄様!?どうなさったの!?」

わたしは勿論驚いたが、一緒に登校しているジェシーとブリジットなど、「きゃー!!」と黄色い声を上げた位だ。

「行先は同じなんだ、一緒に行ってもいいだろう?」

「でも、ジェシーとブリジットがいるし…」

三学年上の男子生徒が一緒では、気を遣うに決まっている。
だが、ジェシーとブリジットはわたしの腕にしがみ付き、高い声でわたしの言葉を遮った。

「はい!是非、ご一緒に!」

「ユーグ様のお噂は、エリゼから聞いています!私たち、エリザのルームメイトなんです!」

「ルームメイトか、いつもエリザがお世話になっているね、仲良くしてくれてありがとう」

ユーグは愛想の良い方ではないが、礼儀正しく、外面が良い。
殊更優しい表情で、優しく言うので、二人の脳内は爆発した様だ。

「きゃーーー!!」
「やだ、どうしようーー!!」

どうもしなくていいわよ。

わたしは嘆息し、三人を置いて歩き出した。

「エリザ、怒ったのか?俺がいると邪魔か?俺にいて欲しくないのか?」

怒ってはいないけど、邪魔ではある。
だけど、それを言うと、きっとユーグは傷付いてしまうから…

「そんな、殊勝に見せても駄目よ!お義兄様の魂胆なんて、お見通しだもの!
どうせ、わたしの片想いの相手を探りたいのでしょう?」

「片想いか…」

ユーグは安堵の息を吐いたが、直ぐに顔を顰めた。

「どうして片想いなんだ?相手が受け入れないのか?
どんな理由で、おまえを受け入れないというんだ?
おまえ程可愛い娘はいないというのに…
おまえを振る様なら、その男は見る目がない!今の内に諦めるんだ、エリザ」

真剣な顔で何を言っているんだか…
恐るべし、シスコン男…

「お義兄様、例え兄妹であっても、恋愛に口出しをするものではなくてよ?」

「ああ、だが、俺はおまえが心配なんだ…」

「分かっています、心配して頂けてうれしいわ。
でも、わたしをもっと信用して下さい、わたしは、あなたの妹よ!」

わたしはユーグの逞しい肩をポン!と叩き、笑って見せた。





朝にしっかり言ったつもりだったが、然程効果は無かった様だ。

昼休憩になり、わたしはジェシーと一緒に、食堂へ向かった。
トレイを手に、栄養を考えて料理を乗せていく。
サンドイッチ用のバケットを一つと、サラダ、卵のフィリング、カットされた果実。

わたしに限らず、女子生徒は体型に気を遣っている者が多く、果実だけなんて女子も珍しくない。
ジェシーも丸パン一つとサラダ、果実だけだ。

「エリザ、何処に座る?」
「ええと、席は…」

わたしはさり気なくエミリアンがいないかと、周囲を伺った。
エミリアンは繊細で物静かだ、病弱なので直ぐに疲れてしまう事も考慮して…
トレイを返す事を考えれば、カウンター近くの隅の方にいる筈…
目を凝らしていると、カウンター近く、奥のテーブルに独りでいる姿を見つけた。

居たわ!!エミリアン様!!

直ぐに分かったのは、彼が銀色の髪をしているからだ。
銀髪は珍しいもの!

わたしはトレイをギュっと握り、そちらに向かおうとした。
だが、それを許さなかったのは…

「エリザ、席なら空いている、こっちだ!」

ユーグがわざわざ呼びに来て、わたしを促した。

ええ…

テーブルから呼ばれたのであれば、聞こえなかった振りも出来るが、
押し掛けて来て、上から威圧しているのだから、無視するのは無理だ。
ユーグは、微妙に引き攣るわたしの笑みに気付かないらしく、
「ジェシーだったね、お友達も一緒においで」と、愛想良くジェシーを誘い、仲間に付けた。

「エリザ、行こうよ~」

ジェシーの顔は輝き、その声は弾んでいる。
ジェシーが喜んでいるなら仕方が無い…今日の所は義兄の顔を立てて上げよう。
わたしは内心で嘆息し、ユーグに従ったのだった。


ユーグのテーブルにはレオンとアンジェリーヌの姿もあり、わたしの笑みは更に引き攣った。
アンジェリーヌはわたしたちの事など興味ないのか、料理を食べる手を止めない。
アンジェリーヌは平民だが、食べ方は上品で、マナーは身に付いている様だ。
流石、異国の御姫様ね!

レオンはわたしを見ると、食事の手を止め、愛想の良い笑みを見せた。

「エリザ、昨日は失礼したな、あの後、アンジェリーヌから話を聞いた。
アンジェリーヌに声を掛けてくれて感謝する。誤解し、責めた事を許せよ」

第三王子に向かって、『許さない』など言う者はいない。
故に、彼から緊張感は見えない。

「勿体ない御言葉です、レオン様」

「そうかしこまる必要は無い、おまえは我が親友の義妹だからな、
俺にとっても妹の様なものだ」

「勝手におまえの妹にするな」

ユーグがすかさずツッコミを入れ、レオンの隣に座った。
ユーグの体でレオンの姿は見えなくなったが、その楽しそうな笑い声はしっかりと届いた。

「常に冷静沈着で他人に執着しないおまえが、これ程入れ込むのだからな、
興味を持つなという方が無理だ!」

ユーグは「はー」とあからさまに嘆息して見せた。

「エリザってば、ユーグ様だけでなく、レオン様とも親しいなんて…凄いわぁ」

ジェシーが小声で言って来るのに苦笑して返し、「いただきます!」と手を合わせた。

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