【完結】悲しき花嫁に、守護天使の奇跡は降りそそぐ

白雨 音

文字の大きさ
上 下
3 / 12

しおりを挟む

『フレリアぁ、シよう。』
「何をですか…って、《剣精サマ》ではないですか。ご無沙汰しております。」
『そう、そう、それや。わいの惚れたんは、その笑顔や!』

フレリアはわいの言葉に首を傾げる。
かわいい! 好きだ!! いつか抱きたい!!!
わいは前世の記憶を振り返った。

わいの前世での記憶は、高3の夏までやった。
それ以降は受験勉強やら部活引退やら諸々あって、記憶の濃度が薄い気ぃがするんや。

それが、たった11ヶ月しか違わない癖にまだ高2で青春真っ盛りな弟がやっていたゲームで、わいの記憶はバラ色になった。

恋をしたのだ。

ゲームのヒロイン、フレリアに。

フレリアは、最終的には登場人物の男という男に抱かれる。

ロマンチックだったのは僅かで、酷かったり、激しかったり、変態チックだったり、性奴隷のようだったり、いろいろな方法でヤられ、喘いでいた。

でも、わいが好きになったのはエロシーンやない。その前の、相手役の男達と恋に落ちて、だんだんその気持ちを意識し、告白するまでの期間の、恋するフレリアに恋をしたんや。

それで、わいの成績は大変なことになった。

高3の夏休み直前、希望していた5番目の学校まで全てが圏外になった。
でもわいには、後悔などなかった。

フレリアの恋を見守ることだけが、わいの生きる希望やったからや。

でも、思えば《見守り方》があかんかったんやろう。
わいは、弟がプレイする画面の中のフレリアに恋をしていたから…

ある日、弟が言った。
わいのことを《キモい》と。
そんなに気になるなら、自分でゲームを買ってプレイしろと。

その日は朝からクーラーの調子が悪くて、室内は室外と同じくらい暑かった。
やから、たぶん弟もイラついていたんやろう。

どこからかナイフを取り出すとわいの胸をぷすりと刺し、そのまま引き抜いた。

弟は、あんなに震える手ではナイフを掴んでいられなかったのだろう。
その場にナイフを落とし、奇声を発しながら玄関を飛び出した。



わいは、その場で膝をつき、そのまま横に倒れた。
目の前には、わいの血の付いたナイフ。

もうダメだと思ったその時、わいの頭に走馬灯のように駆けたのは、フレリアと、一番応援していた《剣聖》と呼ばれていた攻略対象の騎士のスチル。

「生まれ変わったら、フレリアのいる世界に行きたい。《剣聖》と呼ばれる強い男になって、フレリアをあいつらから守りたい!」
『よし、その願い、儂が叶えてやろう。』

目が覚めたら、フレリアのいる世界で《剣精》になっていた。

──神様よ、《ケンセイ》違いやろうが!!!

わいがこの世界で最初に叫んだのは、この言葉だった。






で、それからウン100年…
わいはとうとう、フレリアに出おうた。

それにフレリアは、わいにキッスもしてくれた。

わいは《剣精サマ》の持つ様々な力を使って、フレリアを守った。

ケド、やっぱり実体をもっとらんのは不利や!
結局、将来の《剣聖》にフレリアを取られてもうた。






『フレリア、好きやで!』
「《剣精サマ》、まさか今日でお別れですの? フラグ立ってません?」
『わいは消えん! フレリアをイかすまでは!!』
「はぁ。でも《剣精サマ》、私をイかせてしまえば消えてしまうかもしれませんわ。でもそれは嫌。いつまでも、愉快な話し相手になってくださいませんと。」
『フレリア~! わかった。わいはフレリアをイかせん!』
「はい、言質、頂戴致しました!!」
『なんやと? でもイかせんでも、キスくらいはしたる!』

チュッ

「…んっ……あんっ! どこにキスしてるの!」

「いやぁ~んっ!!!」

バシッ

『あう~っ』

フレリアのビンタは、今日も強烈だった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

好きだった人 〜二度目の恋は本物か〜

ぐう
恋愛
アンジェラ編 幼い頃から大好だった。彼も優しく会いに来てくれていたけれど… 彼が選んだのは噂の王女様だった。 初恋とさよならしたアンジェラ、失恋したはずがいつのまにか… ミラ編 婚約者とその恋人に陥れられて婚約破棄されたミラ。冤罪で全て捨てたはずのミラ。意外なところからいつのまにか… ミラ編の方がアンジェラ編より過去から始まります。登場人物はリンクしています。 小説家になろうに投稿していたミラ編の分岐部分を改稿したものを投稿します。

虐げられた私、ずっと一緒にいた精霊たちの王に愛される〜私が愛し子だなんて知りませんでした〜

ボタニカルseven
恋愛
「今までお世話になりました」 あぁ、これでやっとこの人たちから解放されるんだ。 「セレス様、行きましょう」 「ありがとう、リリ」 私はセレス・バートレイ。四歳の頃に母親がなくなり父がしばらく家を留守にしたかと思えば愛人とその子供を連れてきた。私はそれから今までその愛人と子供に虐げられてきた。心が折れそうになった時だってあったが、いつも隣で見守ってきてくれた精霊たちが支えてくれた。 ある日精霊たちはいった。 「あの方が迎えに来る」 カクヨム/なろう様でも連載させていただいております

【本編完結】赤い薔薇なんて、いらない。

花草青依
恋愛
婚約者であるニコラスに婚約の解消を促されたレイチェル。彼女はニコラスを愛しているがゆえに、それを拒否した。自己嫌悪に苛まれながらもレイチェルは、彼に想いを伝えようとするが・・・・・・。 ■拙作『捨てられた悪役令嬢は大公殿下との新たな恋に夢を見る』のスピンオフ作品。続編ではありません。 ■「第18回恋愛小説大賞」の参加作品です ■後日番外編を投稿予定(時期未定)

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】みそっかす転生王女の婚活

佐倉えび
恋愛
私は幼い頃の言動から変わり者と蔑まれ、他国からも自国からも結婚の申し込みのない、みそっかす王女と呼ばれている。旨味のない小国の第二王女であり、見目もイマイチな上にすでに十九歳という王女としては行き遅れ。残り物感が半端ない。自分のことながらペットショップで売れ残っている仔犬という名の成犬を見たときのような気分になる。 兄はそんな私を厄介払いとばかりに嫁がせようと、今日も婚活パーティーを主催する(適当に) もう、この国での婚活なんて無理じゃないのかと思い始めたとき、私の目の前に現れたのは―― ※小説家になろう様でも掲載しています。

申し訳ありませんが、貴方様との子供は欲しくありません。

芹澤©️
恋愛
王太子の元へ側室として嫁いだ伯爵令嬢は、初夜の晩に宣言した。 「申し訳ありませんが、貴方様との子供は欲しくありません。」

職業『お飾りの妻』は自由に過ごしたい

LinK.
恋愛
勝手に決められた婚約者との初めての顔合わせ。 相手に契約だと言われ、もう後がないサマンサは愛のない形だけの契約結婚に同意した。 何事にも従順に従って生きてきたサマンサ。 相手の求める通りに動く彼女は、都合のいいお飾りの妻だった。 契約中は立派な妻を演じましょう。必要ない時は自由に過ごしても良いですよね?

王太子の愚行

よーこ
恋愛
学園に入学してきたばかりの男爵令嬢がいる。 彼女は何人もの高位貴族子息たちを誑かし、手玉にとっているという。 婚約者を男爵令嬢に奪われた伯爵令嬢から相談を受けた公爵令嬢アリアンヌは、このまま放ってはおけないと自分の婚約者である王太子に男爵令嬢のことを相談することにした。 さて、男爵令嬢をどうするか。 王太子の判断は?

処理中です...