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二度目
幕間:鑑定の顛末
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◆◆ 鑑定の顛末 ◆◆
数日の内に、エロワ=ルーフォンが、助手を連れ、
デュラン侯爵家の美術品の鑑定に訪れた。
エロワたちは、数日館に宿泊し、鑑定に及んだ。
そして、侯爵を回廊に呼び、結果を伝えた。
「こちらに集めた物は、全て贋作でした」
そこには、結構な数の絵画や美術品が山積みされていた。
その量に、日頃にこやかな侯爵も、驚きの表情をしていた。
「これ程贋作があったとは…鑑定して頂いて助かりました」
「贋作はいかが致しましょうか?こちらで処分出来ますが…」
「お待ちなさい!」
エロワが申し出た時、何処からともなく、ルイーズが現れた。
「これが、確かに贋作であるかどうか、他の美術商にも見て頂きましょう。
処分はそれからにします。明日、美術商を呼びますので、あなた方も同席なさって」
『エロワが信用出来ない』と言っている様なもので、助手たちは顔を顰めた。
だが、エロワは「畏まりました」と頷いた。
翌日、ルイーズに呼ばれて来た美術商は、イヴォン=フゥベーだった。
フゥベーは、エロワが《贋作》とした美術品を丹念に調べた。
そして、その内の絵画二点、美術品三点を、「本物」と鑑定したのだった。
「嘘だと思われるなら、確認して下さい」
フゥベーは自信に満ちた様子だった。
エロワは、フゥベーが《本物》とした作品を再度鑑定した。
その結果…
「確かに、これは本物です」
これは一体、どういう事なのか?
侯爵は訳が分からずに唖然としていた。
だが、ルイーズは満足気な笑みを浮かべ、フゥベーもニヤリと笑っていた。
「どうやら、鑑定を間違えた様ですな、ルーフォン殿!」
フゥベーが、樽の様な体で踏ん反り返り、得意満面な顔で言う。
だが、エロワは動じる事なく、それを話した。
「私が《贋作》と鑑定したものには、印を付けています」
エロワは贋作の山から一つを取り、裏を見せた。
そこには小さく、赤色の塗料で《R》の文字が書かれていた。
「フゥベー殿が《本物》と鑑定したものには、印がありません。
恐らく、私が鑑定した後で、入れ替えられたのでしょう___」
フゥベーとルイーズの顔は一気に色を無くした。
それでも、ルイーズは食い下がった。
「そんな戯言!信用出来ませんわ!どうせ、印を入れ忘れたのでしょう!」
勿論、ルイーズは助手たちから睨まれた。
「印を入れ忘れる事はありません、私が確認し、助手も確認しています。
これだけの数、入れ忘れた事は後にも先にもありませんし、これからも絶対に無いでしょう」
「お黙りなさい!私を誰だと思っているの!侯爵夫人ですよ!」
追い詰められたルイーズは、爵位を振り翳し、抑え付けるしか無かった。
侯爵はやんわりとルイーズを止めた。
「よしなさい、ルイーズ。エロワは良くやってくれた、私は彼を信用するよ。
それに、何か分からないが、本物も幾つか戻ってきたんだ、うれしい事じゃないか。
エロワ、長く引き止めてしまい、申し訳なかったね、感謝しているよ___」
侯爵はエロワたちを労い、報酬を弾んだ。
フゥベーも報酬を待っていたが、侯爵は忘れてしまったのか、
エロワたちに挨拶を済ませると、去ってしまった。
「ルイーズ様、私の報酬は…」
フゥベーはルイーズから報酬を貰おうとしたが、ルイーズは怒り心頭だった為、
逆に罵声が返って来た。
「報酬なんてある筈ないでしょう!この、役立たず!!
あなたの口車に乗ったのが間違いだったわ!侯爵が私を疑ったらどうしてくれるの!
絞殺されない内に、帰りなさい!」
事の真相を覗き見ていたメイドたちは、ほくそ笑んだ。
「ルーフォン様、万歳ね!」
「本当、いい気味だわ!!」
「ねぇ、ルイーズ様は館の美術品を売って、代わりに贋作を置いていたって事?」
「酷いわ!許せない!誰か、旦那様にお話しするべきよ!」
「でも、信じて貰えないわ、証拠なんて無いし…」
「それに、旦那様は人が良すぎるのよ…」
メイドたちは嘆息し、ルイーズに見つかる前にと、持ち場に戻って行った。
◆◆◆
数日の内に、エロワ=ルーフォンが、助手を連れ、
デュラン侯爵家の美術品の鑑定に訪れた。
エロワたちは、数日館に宿泊し、鑑定に及んだ。
そして、侯爵を回廊に呼び、結果を伝えた。
「こちらに集めた物は、全て贋作でした」
そこには、結構な数の絵画や美術品が山積みされていた。
その量に、日頃にこやかな侯爵も、驚きの表情をしていた。
「これ程贋作があったとは…鑑定して頂いて助かりました」
「贋作はいかが致しましょうか?こちらで処分出来ますが…」
「お待ちなさい!」
エロワが申し出た時、何処からともなく、ルイーズが現れた。
「これが、確かに贋作であるかどうか、他の美術商にも見て頂きましょう。
処分はそれからにします。明日、美術商を呼びますので、あなた方も同席なさって」
『エロワが信用出来ない』と言っている様なもので、助手たちは顔を顰めた。
だが、エロワは「畏まりました」と頷いた。
翌日、ルイーズに呼ばれて来た美術商は、イヴォン=フゥベーだった。
フゥベーは、エロワが《贋作》とした美術品を丹念に調べた。
そして、その内の絵画二点、美術品三点を、「本物」と鑑定したのだった。
「嘘だと思われるなら、確認して下さい」
フゥベーは自信に満ちた様子だった。
エロワは、フゥベーが《本物》とした作品を再度鑑定した。
その結果…
「確かに、これは本物です」
これは一体、どういう事なのか?
侯爵は訳が分からずに唖然としていた。
だが、ルイーズは満足気な笑みを浮かべ、フゥベーもニヤリと笑っていた。
「どうやら、鑑定を間違えた様ですな、ルーフォン殿!」
フゥベーが、樽の様な体で踏ん反り返り、得意満面な顔で言う。
だが、エロワは動じる事なく、それを話した。
「私が《贋作》と鑑定したものには、印を付けています」
エロワは贋作の山から一つを取り、裏を見せた。
そこには小さく、赤色の塗料で《R》の文字が書かれていた。
「フゥベー殿が《本物》と鑑定したものには、印がありません。
恐らく、私が鑑定した後で、入れ替えられたのでしょう___」
フゥベーとルイーズの顔は一気に色を無くした。
それでも、ルイーズは食い下がった。
「そんな戯言!信用出来ませんわ!どうせ、印を入れ忘れたのでしょう!」
勿論、ルイーズは助手たちから睨まれた。
「印を入れ忘れる事はありません、私が確認し、助手も確認しています。
これだけの数、入れ忘れた事は後にも先にもありませんし、これからも絶対に無いでしょう」
「お黙りなさい!私を誰だと思っているの!侯爵夫人ですよ!」
追い詰められたルイーズは、爵位を振り翳し、抑え付けるしか無かった。
侯爵はやんわりとルイーズを止めた。
「よしなさい、ルイーズ。エロワは良くやってくれた、私は彼を信用するよ。
それに、何か分からないが、本物も幾つか戻ってきたんだ、うれしい事じゃないか。
エロワ、長く引き止めてしまい、申し訳なかったね、感謝しているよ___」
侯爵はエロワたちを労い、報酬を弾んだ。
フゥベーも報酬を待っていたが、侯爵は忘れてしまったのか、
エロワたちに挨拶を済ませると、去ってしまった。
「ルイーズ様、私の報酬は…」
フゥベーはルイーズから報酬を貰おうとしたが、ルイーズは怒り心頭だった為、
逆に罵声が返って来た。
「報酬なんてある筈ないでしょう!この、役立たず!!
あなたの口車に乗ったのが間違いだったわ!侯爵が私を疑ったらどうしてくれるの!
絞殺されない内に、帰りなさい!」
事の真相を覗き見ていたメイドたちは、ほくそ笑んだ。
「ルーフォン様、万歳ね!」
「本当、いい気味だわ!!」
「ねぇ、ルイーズ様は館の美術品を売って、代わりに贋作を置いていたって事?」
「酷いわ!許せない!誰か、旦那様にお話しするべきよ!」
「でも、信じて貰えないわ、証拠なんて無いし…」
「それに、旦那様は人が良すぎるのよ…」
メイドたちは嘆息し、ルイーズに見つかる前にと、持ち場に戻って行った。
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