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第二章
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しおりを挟む結局、姉はトランク一つ運ぶのがやっとで、後からボブに運んで貰う事にした。
ボブは姉を見て、「ぼう」としていた。
執事のセバスは、姉に対しても動揺せず接していたので、わたしは幾らか安堵した。
セバスまで骨抜きにしてしまったら、妻であるアンナに申し訳ない。
わたしたちの部屋は、ウィルが言っていた通り、プリシラ夫人の部屋の隣だった。
わたしたちは、先に夫人に挨拶に行く事にした。
「大奥様、エレノア様とお姉様のルシンダ様がお見えです」
セバスが声を掛けると、扉が開かれた。
いつも通り、扉を開けたのはケイシーだ。
ケイシーはわたしに対して、いつも不機嫌そうにしているが、
今日は姉を見て「ギョッ」としていた。
気持ちは分かるわ…
わたしと違い、姉には貴族のオーラがある。
下位貴族などは、そのオーラで簡単に怯ませる事が出来る。
そして、その美貌は、女性たちを怯ませる___
わたしたちは、ベッドでクッションを背に座っているプリシラ夫人の元へ行った。
ケイシーとは違い、姉を見るプリシラ夫人の目はキラキラと輝いていた。
「プリシラ様、こちらは姉のルシンダです、館に招いて下さり感謝致します」
「ようこそ、我が館にお出で下さいました、心行くまで、ご滞在なさって下さい。
勿論、エレノア、あなたもですよ!」
プリシラ夫人に、『エレノア様』から『エレノア』と呼ばせる事に成功していたが、
態度の方はあまり変わりが無かった。
「オールストン公爵子息、ジェイコブの妻、ルシンダです、暫くお世話になります」
姉は威厳たっぷりに名乗る。
辺境伯よりも立場が上だと言いたいのだろうか?
わたしはハラハラと見守ったが、プリシラ夫人は特に何も思わなかった様だ。
「オールストン公爵領は直ぐ隣ですから、良く存じています。
オールストン公爵領とは違って、ここは田舎です、羽を伸ばされていかれて下さい」
わたしたちは簡単に挨拶を済ませて部屋を出た。
用意された部屋に入ると、ボブに頼んでおいた姉の荷物は既に届いていた。
その事に、姉は特に驚く事無く、さっさと晩餐会に出る準備を始めた。
その美貌から、これまでも周囲は姉を甘やかし放題だった。
皆が手を貸したがるのだ。
姉はそれに慣れ切っていたが、結婚して、益々酷くなった様に思う。
公爵子息の妻だもの!自分では何もしないわよね!
わたしの部屋はその続きにあり、部屋が分かれている事だけが救いだった。
ああ、早く帰ってくれたらいいのに!
「ここまで来て、晩餐に出るとは思って無かったわ。
知っていれば、もっと良いドレスを持って来たのに…」
姉は零していたが、それは十分に良いドレスに見えたし、その美しさは半減したりはしていない。
フン!残念だわ!
姉の傍に居るわたしなど、侍女にしか見えないだろう。
姉を従えて食堂に入って行くと、分かり易く、クレイブが恋に落ちた。
クレイブは目を見開き、姉を見ていたかと思うと、さっと席を立ち、椅子を引きに来た。
「ありがとう」
姉は当然の様な顔をし、椅子に座った。
クレイブは頬を赤くし、ぼんやりとしていたが、「はっ」とし、席に戻って行った。
わたしの椅子を引く気は無いらしい。
わたしの椅子はウィルが引いてくれたので、機嫌を損ねずに済んだ。
晩餐中もクレイブは姉に見惚れていたが、姉が結婚していると知ると、
この世の終わりの様に暗くなり、肩を落としていた。
ああ、気の毒なクレイブ…
クレイブがこれまで結婚していなかったのは、面食いだった所為かしら?
でも、お姉様に恋をする位だもの、きっと、女性の上辺しか見ないのね…
それとも、性格は自分が変えられると思っているのかしら?
それなら、結婚しなくて正解かもね…
だが、結婚していると知り、引き返せるなら安心だ。
問題は…と、わたしはウィルを盗み見た。
ウィルは晩餐が始まってからずっと、にこやかに、そして積極的に姉に話し掛けている。
いつもこんなに話していたかしら?
「ノークス家は、伯爵家だったんですか!?
それでは、エレノアは貴族のご令嬢だったんですね!」
驚くウィルに、姉はわたしに『何故話していないの?』という目を向ける。
わたしはそれを無視して、スープを飲んだ。
別に、話さなかった訳じゃないわ、話す機会が無かっただけよ…
ここでは、《オースグリーン館の相続人》というだけで、すんなりと迎えられたのだ。
「驚きました…いえ、ですが、納得ですよ、エレノアは気品がありますからね…」
あら、そうかしら?
わたしは反射的に背を伸ばした。
「それにしても、エレノアにお姉さんがいるとは知りませんでしたよ!
お若いですが、結婚されているそうですね?」
「三年前、十八歳の時に、オールストン公爵子息、ジェイコブに見初められ、嫁ぎましたの」
「それでは、オールストン公爵領から来られたのですか?
ここから一日位ですね、僕も良く行きますよ!賑やかで、良い所ですね」
そんなの、初耳だわ。
わたしが知らない事を、ペラペラと調子良く喋っているウィルが、憎たらしく見えてきた。
「ええ、何でもありますの、とても住み易い所ですわ」
幸い、姉の方は誰にも魅力を感じておらず、ツンと澄まし、高位貴族然としている。
これで嫌われないのだから、美人は得だ。
わたしなんて、町の人たちから散々、『生意気娘』と言われたものだ。
勿論、それは最初の頃で、今は違うけど。
「ここも良い所ですよ!料理はいかがですか?
あなた方姉妹の為に、料理長が腕を揮ってくれましたよ!」
「ええ、結構なお味ですわ」
そう言いながらも、姉はあまり手を付けていない。
昔から体型を気にしてあまり食べないのだ。
だが、相手はウィルだ、全く気付いておらず、言葉通りに受け取った。
「そうでしょう!この料理に使っている野菜は全て、エレノアが育てたものなんですよ!
町で…いえ、恐らくですが、国で一番美味しい野菜です!」
ウィルが嬉々として話す中、わたしは額を押さえた。
こんな所まで来て野菜を作っているのかと、姉はきっと、馬鹿にするわ…
「エレノアが野菜を?」
「はい!ですが、野菜だけではありませんよ!オースグリーン館の庭をご覧になられたでしょう?
エレノアは畑作りの天才ですよ!ああ、畑だけではありませんよ!
果実もですし、鶏もエレノアのお陰で、見事な卵を産む様になりましたからね!」
「ウィル…お姉様は、畑には興味ないわ」
わたしは頭を振り、やんわりと止めたが、それで止まるウィルでは無かった。
「畑に興味はなくても、妹さんの功績には興味がありますよね?ルシンダ」
「エレノアの、功績…?」
姉はウィルに胡乱な目を向けている。
姉にとって、わたしは『出来損ない』なのだ。
「はい!エレノアが来て、全てが変わりました!これ程、領地が豊だった事はありません!
領地の者たち皆が、エレノアに感謝しているんですよ!
話せば長くなりますが、よろしいですかね?」
わたしはギョッとし、割って入った。
「ウィル!そんな話、退屈なだけだわ!」
「そんな事はありませんよ!ルシンダは妹のあなたを心配して、
ここまで来て下さっているのですから、僕から詳しくお話しするのが良いでしょう!」
変な使命感を持たないで下さい!!
姉が「構いません」と言った事、プリシラ夫人がにこやかに頷いていた事、
クレイブが役立たずになっていた事、ケイシーが黙り込んでいた事で、
一気に、ウィルの独壇場になった。
ウィルはこれまでの事を嬉々とし、そして、大袈裟に語った。
恐らく、姉はうんざりしていただろうが、ウィルを止める事は、最早誰にも出来なかった。
「___エレノアは素晴らしい妹さんですね!あなたもさぞ自慢でしょう!」
そんな言葉で結んだウィルに、わたしは頭を抱えたくなった。
自慢なんて!!
それ処か、わたしは《ノークス伯爵家の出来損ない》なのだ!
わたしは一気に食欲を失い、ナイフとフォークを置き、姉の辛辣な言葉を待った。
「妹は母方の血を強く受け継いでいます、それを役立てられているのね…
私と兄は、残念ながら、何も特別な力はありませんので、羨ましく思いますわ…」
羨ましい?
わたしは聞き慣れない言葉に、思わず顔を上げ、姉を見ていた。
姉は無表情で、その考えは読めなかった。
「その通りですよ!僕も羨ましいです!
エレノアはオースグリーン館の相続人ですからね!」
ウィルがズレた事を堂々と言い放ち、この話題は終わりを迎えた。
部屋に戻り、わたしは姉に聞いていた。
「わたしを羨ましいって言ったのは、本当?」
姉は無表情でドレスを脱ぎながら、素っ気なく答えた。
「どれだけ努力しても、それだけは手に入れられないでしょう?」
「お姉様の美貌もよ」
「それもそうね、美しく賢くある為に、努力もしているけど、誰もそこは見てくれないのよね…」
いや、姉が見せないだけだ。
いつも、『努力などしていない』という顔をしている。
姉は自尊心が高く、負けず嫌いなのだ。
それに、やはり、《元》が良いのは確かだ___
「曾祖母は、あなたを可愛がっていたでしょう?
曾祖母はあなただけに力を見せた。
私はそれを隠れて見ていたの、惨めで悔しくて、泣いちゃったわ…」
姉が見ていた?
「草原を花畑に変えた時?あれは、夢だと思ってたわ…」
「夢じゃないわよ、あなたより私の方が大きかったから、良く覚えているわ。
悔しくて、あの後、花畑を毟ってやろうとしたの、
だけど、あまりに綺麗だったから、出来なかったわ…」
夢じゃなかった…
「曾祖母は、そんな私を見ていたのよ、何も言わずに、頭を撫でてくれたわ…
私も曾祖母が大好きだったわ、私も遺産が欲しかった、
曾祖母の物なら、何でも良かったのに…」
遺産を貰ったのは、わたしだけだ。
何だか申し訳ない気持ちになった。
「その思い出が遺産だわ、二人だけの思い出だもの」
「あなたに同情される日が来るなんてね…」
姉は「ふっ」と自嘲する。
「同情じゃないわ、それに、遺産が欲しいなら、《種》を分けてあげてもいいわよ」
「私は庭仕事なんてしないわよ」
「もう!だから、遺産が貰えなかったのよ!」
「違うわ、私に力が無い所為よ」
「力は、愛する心、想いよ!」
わたしは自然に、それを口にしていた。
力が何かなんて、考えた事も無かったのに…
「やっぱり、私には無理だわ___」
姉はベッドに潜り込み、直ぐに寝息を立て始めた。
余程疲れていたらしい。
「疲れている所に、ウィルの長話しを聞かされるなんて、何て気の毒なお姉様!」
でも、聞いてくれたわ…
皆の前で、『出来損ない』とも言わなかった。
「わたしの事、嫌いだとばかり思っていたわ…」
姉はいつも、わたしを『出来損ない』と蔑んでいた。
冷たくして、馬鹿にして…
でも、嫉妬だったなら…
「許してあげてもいいかしら?」
嫉妬は、わたしもしているもの…
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