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本編
4★
しおりを挟む夜になり、ランプに灯りを入れた頃、クリスが部屋に戻って来た。
ガチャリ…扉が音を立てたのに気付き、わたしは「ほっ」と、安堵の息を吐き、
椅子から立ち上がった。
あれから、わたしは落ち着かず、じっと、その扉を見つめていたのだ。
そんなわたしに、クリスは苦笑した。
「姉さんは従順で、正に、籠の鳥だね」
わたしは何と答えたら良いのか分からなかった。
相手は愛する弟のクリスだというのに、こんな事は初めてだ。
「晩餐は後にしてもいい?」
「ええ…」
「それじゃ、姉さん、おいで」
クリスはベッドに腰を下ろし、わたしを呼んだ。
わたしは戸惑いながら、クリスの前に行く。
「クリス?」
クリスはわたしの両手を掴むと、わたしを見つめた。
「これから僕は姉さんに酷い事をするよ。
これはね、僕の私怨、復讐なんだ。
姉さんにとっては理不尽だろうから、僕を憎んでいいよ」
私怨?復讐?
「クリス?どういう事なの?説明を…きゃ!?」
言い終わらない内に、わたしは腕を引かれ、ベッドに押し倒されていた。
クリスがわたしを組み敷き、見下ろしている。
何て冷たい目…
ゾクリとした。
「っ!!」
息を飲むと、口を塞ぐ様にキスをされた。
「ん!?んん!!」
舌が滑り込み、口内を蹂躙する。
わたしは驚きと焦りで藻掻いたが、その固い体はビクともしなかった。
頭を振ると、顎を掴まれ、身動きも出来なくなった。
「んっ!!…!!」
長いキスに、わたしは息が出来ず、頭が朦朧としていた。
漸く唇を離された時、わたしは苦しさに息を吸い込み、堰込んだ。
「カホッ!カホッ!」
「婚約破棄されて、操を立てる必要が無いのは分かるけどね、
弟にキスをされた時には、少し位、抵抗した方がいいんじゃない?姉さん」
わたしはビクリとした。
驚きの方が大きく、相手がクリスである事も忘れていた。
「それにしても、イーサンは碌にキスもしてくれなかったの?」
クリスが小さく笑い、わたしの口に指を二本入れて来た。
「かっ、はっ!」
「噛まないでね、姉さん」
クリスの指が虐める様に舌を弄ぶ。
「っ!!」
わたしは苦しさに涙を零し、クリスのシャツの腕を引いた。
クリスは指を抜いてくれたが、それで終わりでは無かった。
その手が、わたしの夜着の胸元を掴み、ぐいっと引き下げた。
「きゃっ!?」
無防備な胸が露わになり、わたしは慌てて身を捩り手で隠した。
「いや!見ないで!!」
クリスは構わずに、わたしの首元に口付ける。
「ひっ!!」
それだけでも、どうかなりそうだというのに、
夜着の裾から潜り込んだ手が、太腿を撫で、
内腿に入り込み…秘部に触れた___
「いやあぁっ!!」
体がビクリと跳ねる。
「触っちゃ、やぁ…っ!!やめて…やめてぇ!!」
その指から逃げようと足をバタつかせるも、逃げ場など無いという様に、追って来る。
遂には、ツプリと中に入って来た。
「あああ!!!」
くちゅくちゅといやらしい音がし、わたしは恥ずかしさに泣きたくなった。
クリスは何も言わず、だからといって、止めてもくれない。
指で中を無遠慮に掻き回され、わたしは感じた事の無い感覚に、身悶えしていた。
「あっ…!!ああ!!」
怖い!
何をされるのか分からず、怖い!
自分がどうかなりそうで、怖い!
胸を隠していた手が、いつの間にか外れていた。
その事に、胸の膨らみの突起を舐められて気付いた。
「ひぁ!!」
わたしがビクリとし声を上げると、クリスはそれを口に含んでしまった。
口の中で舐められ、甘噛みされると、頭の奥が痺れた。
「ん、いやぁ!!」
秘部を弄る指も動きを速め、わたしを追い立てた。
「_____!!」
クリスが体を起こしたので安堵したが、クリスはわたしの足の間に移動しただけだった。
クリスはわたしの足を掴むと、持ち上げ、大きく開かせた。
「い、いや、いや…見ないで!クリス!」
隠そうとするわたしの手よりも、クリスがそこに舌を入れる方が早かった。
「んん!!やぁ!!」
ぴちゃ
ぴちゃ…
くちゅくちゅ…
クリスが見せつける様に、音を立てて舐める。
「止めて、汚いから…ぁぁ!!」
恥ずかしくて消えたくなる。
だけど、そんな事は起こらず、わたしはただ泣くしか出来ない。
「いや!いや!いや!」
どうして止めてくれないのか、どうして何も言ってくれないのか…
わたしは不安に圧し潰されそうになる。
だが、指を深く入れられ、抜き差しされ、舌で舐められ吸われると、堪らず…
わたしは体を震わせ、意識を飛ばしていた。
「もぉ、やめてぇ…」
「これからだよ、姉さん、僕を見て」
わたしは目を上げる。
そして、後悔した。
クリスの目は冷たく、そして、わたしに当てられているのは、彼のものだった___
「いや…駄目…わたしたち、姉弟でしょ…?」
急に恐ろしくなり、わたしはガタガタと震えた。
だが、クリスは薄く笑った。
「そうだよ、姉さん、ごめんね…」
◇
クリスは幾らわたしが泣き叫び、「止めて」と言っても止めてくれなかった。
時間を掛け押入って来ると、腰を使い深く突き上げた。
わたしは人形の様に揺さぶられ、痛みと恐怖の中、ただ、みっともなく泣き喚いた。
クリスがわたしの奥へとそれを吐き出した事で、それは漸く終わりを告げた。
これは、悪夢に違いない。
悪い夢だと思いたかった。
だが、次に目を覚ました時、わたしの夜着は整えられていたが、
はっきりと、行為の跡が見えた。
違和感と鈍痛。
わたしは震えていたが、クリスの姿が無い事には安堵していた。
重い体を引き摺り、風呂場へ行く。
脚を伝って落ちるものに気付き、どうしようもなく、涙が零れた。
「う…っく…」
◇
朝になり、扉が開き、クリスがワゴンを押して入って来た。
わたしは夜着を着ていたが、腕で胸を隠し、壁を背に立っていた。
そんなわたしを見て、クリスはニコリと邪気の無い笑みを見せた。
「お早う、姉さんは相変わらず早起きだね、良く眠れた?」
「!?」
あんな事をしておいて、悪びれる事も無いなんて!
わたしには、クリスが何を考えているのか、分からなかった。
「はい、どうぞ」
カップをテーブルに置かれたが、わたしは壁際から動けなかった。
クリスは「くすり」と笑う。
「僕に抱えて連れて来て欲しいの?姉さん」
わたしはビクリとし、壁から離れたが、
痛みと違和感で、思う様に体が動かず、足が縺れてしまった。
「きゃ!!」
「ああ、何してるの、危ないな…」
床に倒れたわたしを、クリスが軽々と抱き上げた。
「ひっ!!」
「そんな顔しないでよ、僕が姉さんを抱くのは夜だけだから」
それは、今後も…?
わたしはそれを察し、泣き出していた。
「いや…いや…!もう、したくないの!」
「うん、痛かったよね?でも、慣れれば良くなるから、ほら、泣かないで」
クリスはわたしを椅子に下ろすと、頭を撫でた。
クリスの口調は優しいが、その言葉に優しさは見えなかった。
わたしは悲鳴を飲み込み、震えながらも何とか言った。
「いや…ど、どうして、あ、あんな事、したの!?
なぜ、しなくちゃいけないの?わたしたち、姉弟なのよ?」
クリスには抵抗は無いのだろうか?
わたしを抱かずとも、クリスならば相手は簡単に見つけられるだろう。
そういう店もあると、わたしだって知っている。
それに、酷い事をしておいて、優しく接するなんて…
クリスが理解出来ず、わたしには恐怖だけがあった。
だが、クリスはあっさりと言った。
「僕、言ったよね?復讐だって」
復讐?
「わたし、クリスに、何かしたの?」
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「クリス、お願い、分かる様に説明をして…」
わたしはクリスの正気を疑った。
「僕たちの子なら、きっと、凄く可愛いだろうね」
クリスは微笑んだ。
だが、それは少し悲し気にも見えた。
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