【完結】濡れ衣の令嬢は、籠の鳥

白雨 音

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夜になり、ランプに灯りを入れた頃、クリスが部屋に戻って来た。

ガチャリ…扉が音を立てたのに気付き、わたしは「ほっ」と、安堵の息を吐き、
椅子から立ち上がった。
あれから、わたしは落ち着かず、じっと、その扉を見つめていたのだ。

そんなわたしに、クリスは苦笑した。

「姉さんは従順で、正に、籠の鳥だね」

わたしは何と答えたら良いのか分からなかった。
相手は愛する弟のクリスだというのに、こんな事は初めてだ。

「晩餐は後にしてもいい?」
「ええ…」
「それじゃ、姉さん、おいで」

クリスはベッドに腰を下ろし、わたしを呼んだ。
わたしは戸惑いながら、クリスの前に行く。

「クリス?」

クリスはわたしの両手を掴むと、わたしを見つめた。

「これから僕は姉さんに酷い事をするよ。
これはね、僕の私怨、復讐なんだ。
姉さんにとっては理不尽だろうから、僕を憎んでいいよ」

私怨?復讐?

「クリス?どういう事なの?説明を…きゃ!?」

言い終わらない内に、わたしは腕を引かれ、ベッドに押し倒されていた。
クリスがわたしを組み敷き、見下ろしている。
何て冷たい目…

ゾクリとした。

「っ!!」

息を飲むと、口を塞ぐ様にキスをされた。

「ん!?んん!!」

舌が滑り込み、口内を蹂躙する。
わたしは驚きと焦りで藻掻いたが、その固い体はビクともしなかった。
頭を振ると、顎を掴まれ、身動きも出来なくなった。

「んっ!!…!!」

長いキスに、わたしは息が出来ず、頭が朦朧としていた。
漸く唇を離された時、わたしは苦しさに息を吸い込み、堰込んだ。

「カホッ!カホッ!」

「婚約破棄されて、操を立てる必要が無いのは分かるけどね、
弟にキスをされた時には、少し位、抵抗した方がいいんじゃない?姉さん」

わたしはビクリとした。
驚きの方が大きく、相手がクリスである事も忘れていた。

「それにしても、イーサンは碌にキスもしてくれなかったの?」

クリスが小さく笑い、わたしの口に指を二本入れて来た。

「かっ、はっ!」
「噛まないでね、姉さん」

クリスの指が虐める様に舌を弄ぶ。

「っ!!」

わたしは苦しさに涙を零し、クリスのシャツの腕を引いた。
クリスは指を抜いてくれたが、それで終わりでは無かった。
その手が、わたしの夜着の胸元を掴み、ぐいっと引き下げた。

「きゃっ!?」

無防備な胸が露わになり、わたしは慌てて身を捩り手で隠した。

「いや!見ないで!!」

クリスは構わずに、わたしの首元に口付ける。

「ひっ!!」

それだけでも、どうかなりそうだというのに、
夜着の裾から潜り込んだ手が、太腿を撫で、
内腿に入り込み…秘部に触れた___

「いやあぁっ!!」

体がビクリと跳ねる。

「触っちゃ、やぁ…っ!!やめて…やめてぇ!!」

その指から逃げようと足をバタつかせるも、逃げ場など無いという様に、追って来る。
遂には、ツプリと中に入って来た。

「あああ!!!」

くちゅくちゅといやらしい音がし、わたしは恥ずかしさに泣きたくなった。
クリスは何も言わず、だからといって、止めてもくれない。
指で中を無遠慮に掻き回され、わたしは感じた事の無い感覚に、身悶えしていた。

「あっ…!!ああ!!」

怖い!
何をされるのか分からず、怖い!
自分がどうかなりそうで、怖い!

胸を隠していた手が、いつの間にか外れていた。
その事に、胸の膨らみの突起を舐められて気付いた。

「ひぁ!!」

わたしがビクリとし声を上げると、クリスはそれを口に含んでしまった。
口の中で舐められ、甘噛みされると、頭の奥が痺れた。

「ん、いやぁ!!」

秘部を弄る指も動きを速め、わたしを追い立てた。

「_____!!」


クリスが体を起こしたので安堵したが、クリスはわたしの足の間に移動しただけだった。
クリスはわたしの足を掴むと、持ち上げ、大きく開かせた。

「い、いや、いや…見ないで!クリス!」

隠そうとするわたしの手よりも、クリスがそこに舌を入れる方が早かった。

「んん!!やぁ!!」

ぴちゃ
ぴちゃ…
くちゅくちゅ…

クリスが見せつける様に、音を立てて舐める。

「止めて、汚いから…ぁぁ!!」

恥ずかしくて消えたくなる。
だけど、そんな事は起こらず、わたしはただ泣くしか出来ない。

「いや!いや!いや!」

どうして止めてくれないのか、どうして何も言ってくれないのか…
わたしは不安に圧し潰されそうになる。
だが、指を深く入れられ、抜き差しされ、舌で舐められ吸われると、堪らず…
わたしは体を震わせ、意識を飛ばしていた。


「もぉ、やめてぇ…」

「これからだよ、姉さん、僕を見て」

わたしは目を上げる。
そして、後悔した。

クリスの目は冷たく、そして、わたしに当てられているのは、彼のものだった___

「いや…駄目…わたしたち、姉弟でしょ…?」

急に恐ろしくなり、わたしはガタガタと震えた。
だが、クリスは薄く笑った。

「そうだよ、姉さん、ごめんね…」



クリスは幾らわたしが泣き叫び、「止めて」と言っても止めてくれなかった。
時間を掛け押入って来ると、腰を使い深く突き上げた。
わたしは人形の様に揺さぶられ、痛みと恐怖の中、ただ、みっともなく泣き喚いた。

クリスがわたしの奥へとそれを吐き出した事で、それは漸く終わりを告げた。

これは、悪夢に違いない。
悪い夢だと思いたかった。

だが、次に目を覚ました時、わたしの夜着は整えられていたが、
はっきりと、行為の跡が見えた。
違和感と鈍痛。
わたしは震えていたが、クリスの姿が無い事には安堵していた。

重い体を引き摺り、風呂場へ行く。
脚を伝って落ちるものに気付き、どうしようもなく、涙が零れた。

「う…っく…」




朝になり、扉が開き、クリスがワゴンを押して入って来た。
わたしは夜着を着ていたが、腕で胸を隠し、壁を背に立っていた。
そんなわたしを見て、クリスはニコリと邪気の無い笑みを見せた。

「お早う、姉さんは相変わらず早起きだね、良く眠れた?」

「!?」

あんな事をしておいて、悪びれる事も無いなんて!
わたしには、クリスが何を考えているのか、分からなかった。

「はい、どうぞ」

カップをテーブルに置かれたが、わたしは壁際から動けなかった。
クリスは「くすり」と笑う。

「僕に抱えて連れて来て欲しいの?姉さん」

わたしはビクリとし、壁から離れたが、
痛みと違和感で、思う様に体が動かず、足が縺れてしまった。

「きゃ!!」

「ああ、何してるの、危ないな…」

床に倒れたわたしを、クリスが軽々と抱き上げた。

「ひっ!!」

「そんな顔しないでよ、僕が姉さんを抱くのは夜だけだから」

それは、今後も…?
わたしはそれを察し、泣き出していた。

「いや…いや…!もう、したくないの!」
「うん、痛かったよね?でも、慣れれば良くなるから、ほら、泣かないで」

クリスはわたしを椅子に下ろすと、頭を撫でた。
クリスの口調は優しいが、その言葉に優しさは見えなかった。
わたしは悲鳴を飲み込み、震えながらも何とか言った。

「いや…ど、どうして、あ、あんな事、したの!?
なぜ、しなくちゃいけないの?わたしたち、姉弟なのよ?」

クリスには抵抗は無いのだろうか?
わたしを抱かずとも、クリスならば相手は簡単に見つけられるだろう。
そういう店もあると、わたしだって知っている。

それに、酷い事をしておいて、優しく接するなんて…

クリスが理解出来ず、わたしには恐怖だけがあった。
だが、クリスはあっさりと言った。

「僕、言ったよね?復讐だって」

復讐?

「わたし、クリスに、何かしたの?」

わたしには思い当たらない。
唯一、考えられるのは、公爵を毒殺した罪で捕まり、家に迷惑を掛けた事だ。
クリスにも迷惑を掛けてしまったのだろうか?
そういえば、牢に来た時のクリスは冷たかった…

「わたしの所為で、家にもクリスにも迷惑を掛けてしまった事は、謝ります…」
「ああ、そっちは大した問題じゃないよ」

え?
わたしは、クリスの言葉が信じられず、目を上げた。
あれ以上の事があるだろうか…

「姉さんはね、それと気付かない間に、僕から大切な人を奪ったんだよ。
姉さんは僕に良くしてくれたし、姉さんの事は好きだから、
僕との子供を産んでくれたら、それで許してあげるよ」

大切な人を奪った?
それに、子供!?

「クリス、お願い、分かる様に説明をして…」

わたしはクリスの正気を疑った。

「僕たちの子なら、きっと、凄く可愛いだろうね」

クリスは微笑んだ。
だが、それは少し悲し気にも見えた。


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