彼女の周りは敵だらけなので無意味と思われた固有スキルを使い殺していく

絵樹瑠

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思い

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「俺には2つの固有スキルがある。それは知ってるよな?」

 「うん……知ってる……」

 レイはまず自分のスキルについて語ろうと思った。そうしたほうがいいと思ったからだ。

「まず思念転送は自分の感情を相手に送ったり、相手の感情がわかるスキルだ。俺はこれを使ってリリィがいる場所を探した」

「?けど頭痛や吐き気がすごいから使えないって……」

「そこは我慢したよ。そうしないと助けられないからな」

「レイ……」

 リリィはレイが自分のためにそこまでしてくれることが嬉しかった。けど何故吸血鬼の自分を見捨てないのかが、わからなかった。いままで隠してきたこと、吸血鬼だったことになぜ怒らないのか?

「レイはどうして私を、吸血鬼を助けに来てくれたの……?」

 それを聞かずにはいられなかった。レイがどんな気持ちかわからない。どう思っているのか、何を思っているのか知りたくなったからだ。

「……昔約束しただろ?どんなことがあっても必ず助けるって」

「っ!?」

 その言葉を聞いてリリィの瞳に涙が滲んだ。確かに昔、自分が臆病だった頃ブラックウルフに襲われて、助けられたときにそう言われた。けどそれをまだ覚えて、いや助けに来るとは思わなかったからだ。それは自分が吸血鬼だから。

「私は、吸血鬼だよ……?」

 リリィは震えそうになる声を我慢しながらいった。拒絶される可能性もあるかもしれないからだ⁉

「ああ、知ってる」

「ずっと、騙してたのに、なんで……?」

「リリィが好きだからだ」

「!?レイっ!」

 瞳から涙が零れ落ちる。リリィはもう我慢出来なかった。レイに抱きつき泣き声をあげた。

「ずっと、怖かった……!バレたらレイから、嫌われるんじゃないかって……!もう一緒にいられないんだって……!」

 レイは自分が馬鹿だと思った。リリィが苦しんでいたのにそれに気づけなかったなんて。

「不安にさせてごめん……。けど俺をもっと信じてもいいだぞ?」

 リリィの背中に左腕を回し、右腕で頭を頭を撫でながら謝った。それで安心したのか、ようやく落ち着いてきた。

「うん今度から信じる……」

 顔をあげてリリィがそう言ながらながら笑った。とても嬉しそうで、安心しきった笑顔だった。

「落ち着いたか?それならもうひとつのスキルの説明をするぞ?」

「え?あ、ごめん……」

 自分のせいで話が、しかも泣きついてそらしたことが恥ずかしくなったのか、顔を赤くさせながらそう言った。

「別にいいよ。では、もうひとつのリンクの効果はなんだと思う?」

「繋げる?だったような……」

「そうだ。けど俺が今回繋げたのはリリィのステータスだ。まあその影響かわからないが、髪と眼の色が変わっていたんだよ」

「それってずるくない……?」

 リリィはそう言った。実際レイ自身もこれはずるいと思う。けどこれにはたぶん制約がある。

「繋げている間、繋がれた人が麻痺、または死亡したらどうなると思う?」

「どうって……あ……」

「そう、自分もそうなる。例えばリリィに繋げていて、敵からそうされた場合、相手の勝ちになる」

 つまり繋がっているのだから、こちらにも影響が出ると言うことだ。まあ敵に知られなかったら大丈夫かもしれないが。

「なんでも使い方が大事なんだよ。ある一つに優れていたら他に欠陥もある。それよりこれからどうする?」

 「私は戻れない……」

 そう、リリィは戻れない。村の人達に自分が吸血鬼だとバレたからだ。今回は村から誰も犠牲者は出なかったが、次もそうだとは限らない。なら村にいない方がいいと、そう思った。

「なら一緒に逃げるか?」

「え?けどレイは村から出る理由がない……」

「お前がその理由だよ。お前がどこかに行くんなら俺も行く。俺はお前と一緒にいたいからな」

「レイ……!ありがとう……」

 レイはリリィがもう村に帰らないのはなんとなく察していた。だからもしそうなったら自分も村に帰らないとも決めていた。

(村のみんなはどうせ信用できない。仮にリリィが村にいることを許しても、もしもの時は切り捨てるはずだ)

レイは思考していた。これからどうするかを。

 (心残りはもうない。村には家族がいたが、子供一人守ろうとしない奴らを家族だとはもう思えない。家族はリリィだけで充分だ。しかしここを出ても金が無い。無いならどうすればいい?)

「じゃあとりあえずここに泊まるか」

「え……?」



 答えは簡単、殺して奪えばいい。それだけだ。

 

 
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