いきることのいみ

ゆう

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お化粧

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彼女、佐藤エリさんは派遣の会社を営んでいる。

少し特殊で美容部員専門の派遣会社だ。

エリさん自身も美容師で美容部員出身らしい。

エリ「夕食はレストラン予約してるの。
まだ時間があるからお化粧してあげようか?」

加奈子「いえ、結構です。今までした事ないので」

エリ「すっぴんでいられるのは若い時だけよ」

加奈子「ごめんなさい、興味ないので」

エリ「絶対可愛いくなるのにな」

この人、欠陥品の私に普通に接してくる、不思議な人。

エリ「少しだけしようよ」

根負けした。

加奈子「じゃぁ、少しだけ」

大きな鏡の前に座らされ、自分の姿が鏡に映る。

こんな顔してたっけ?いつ自分の顔を見たかも憶えていない。

エリ「綺麗な肌ね」

そう言って私の頬を触る。

冷たい指、優しく頬を撫でる。

彼女の指から私の心に流れ込んでくるものを感じた。初めてだったそんな事を感じたのは。

何かはわからない、でも確かに流れ込んできた。

エリ「すぐ終わるわ」

彼女は素早く薄化粧してくれた。

エリ「はいっ、できたよ。すっぴんのあなたも可愛いけど、こっちの方がずっと可愛いわ」

鏡の中に映るのは誰?

私じゃなかった、別人だ。

エリ「ねぇ、笑ってみて。笑顔のあなたが見てみたいわ」

加奈子「すいません、どうやって笑うのかわかりません。笑った事なくて」

エリ「そうなんだ」

そう言って私の頭を優しく抱きしめてくれた。

また何か流れ込んできた。

それから予約していたレストランで食事をし、自宅まで送り届けてくれた。





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