最低のピカレスク-死刑囚は神を殺す

ねこねこ大好き

文字の大きさ
上 下
23 / 44

神の冒涜者、狂太郎

しおりを挟む
 トーナメント会場は静まり返っていた。
 皆我が目が信じれられなかった。
 確かに狂太郎はヘクタールに胸を貫かれ、殺された。

 なのに狂太郎は、胸に風穴を開けて笑っている。

「いでぇ……はははは! これがごろざれるかんがくか」

 狂太郎は血を吐きながら狂気する。

「きょ、狂の能力は私と同じ不老不死だったのか!」
 サテラが驚愕する。

 その間にもギチギチと狂太郎の傷がふさがる。今は心臓が作り出され、鼓動を始めていた。

「不老不死、なんと厄介な能力を持っていやがる!」
 ヘクタールが舌打ちする。
「しかも再生速度が異常に早い」
 ヘクタールが構える。

「時よ止まれ!」

 再び世界が停止する。

「両手両足首胴体! すべてを切断してコンクリートで固めてやる! そこで不老不死となったことを悔やむがいい!」
 ヘクタールが突撃する。

「んなことできると思ってるのか?」
 狂太郎が突撃してきたヘクタールにカウンターを放った。
 ヘクタールの腹部が、狂太郎の貫手で貫かれた。
「な、なぜだ! 時が止まったこの世界でなぜ動ける!」
「時が止まった? そういえば嫌に静かだ」
 狂太郎はキョロキョロと辺りを見渡す。
「なんだ! サテラ! どうして固まってんだ! おい! 今俺が最高にかっこいいところだぞ!」
 狂太郎がヘクタールの腸から腕を引き抜いた瞬間、時が動き出した。

「へ、ヘクタール様!」
「な、なにが起きた!」
「ヘクタール様が膝をつくなんて!」
 会場は混乱の渦に飲まれる。
 その中で狂太郎は静かに微笑む。
「ヘクタール、ありがとよ。俺は初めて殺される快感を味わった」
 狂太郎は己の胸を掴む。
「今までずっと退屈だった。誰を殺しても、何を犯しても心は満ちなかった。だからいつしか死を考えた。最高の死を。いつか必ず現れる敵に殺されることを!」
 狂太郎が拳を握りしめ、倒れるヘクタールに振り上げる。
「殺されるってのはいい気分だ。そうだろ? ヘクタール!」

「雷神剣!」
 突如会場に雷鳴がとどろき、雷が狂太郎を焼き殺す。
「風神発破!」
 さらに猛烈な風が狂太郎を切り裂く。

「ヘクタール! 逃げるわよ!」
「サニー! それにラーグ! なぜお前たちがここに!」
「心配だったから様子を見に来ただけだ! それより、あいつ、まだ生き返るぞ!」
 ギシギシと狂太郎の死体が蠢く。
「ごちそうがさらに二匹も現れた。最高だ!」
「雷神剣!」
 ラーグと呼ばれた青年が雷の大剣を狂太郎に振りかざす。
「アイスアーマー! ライト!」
 狂太郎が永久凍結の鎧で防ぐ。
「あれはナンバー100の能力!」
 サテラが声を上げる。
「きょうちゃんの能力が分かった」
 静流が息を飲む。
「きょうちゃんの能力は、戦った相手、犯した相手の能力を手に入れる!」

 世界にはルールがある。それをぶっ壊す力がある。
 それは悪魔とも魔王とも呼ばれる存在が必ず持つ能力。

 能力名は神の冒涜者。神の力すらも手に入れる、まさに神をも恐れぬ能力であった。

「さあ! やろうぜ! お楽しみはこれからだ!」
 狂太郎が氷と雷と風の鎧を身に纏い、吠えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

異世界で美少女『攻略』スキルでハーレム目指します。嫁のために命懸けてたらいつの間にか最強に!?雷撃魔法と聖剣で俺TUEEEもできて最高です。

真心糸
ファンタジー
☆カクヨムにて、200万PV、ブクマ6500達成!☆ 【あらすじ】 どこにでもいるサラリーマンの主人公は、突如光り出した自宅のPCから異世界に転生することになる。 神様は言った。 「あなたはこれから別の世界に転生します。キャラクター設定を行ってください」 現世になんの未練もない主人公は、その状況をすんなり受け入れ、神様らしき人物の指示に従うことにした。 神様曰く、好きな外見を設定して、有効なポイントの範囲内でチートスキルを授けてくれるとのことだ。 それはいい。じゃあ、理想のイケメンになって、美少女ハーレムが作れるようなスキルを取得しよう。 あと、できれば俺TUEEEもしたいなぁ。 そう考えた主人公は、欲望のままにキャラ設定を行った。 そして彼は、剣と魔法がある異世界に「ライ・ミカヅチ」として転生することになる。 ライが取得したチートスキルのうち、最も興味深いのは『攻略』というスキルだ。 この攻略スキルは、好みの美少女を全世界から検索できるのはもちろんのこと、その子の好感度が上がるようなイベントを予見してアドバイスまでしてくれるという優れモノらしい。 さっそく攻略スキルを使ってみると、前世では見たことないような美少女に出会うことができ、このタイミングでこんなセリフを囁くと好感度が上がるよ、なんてアドバイスまでしてくれた。 そして、その通りに行動すると、めちゃくちゃモテたのだ。 チートスキルの効果を実感したライは、冒険者となって俺TUEEEを楽しみながら、理想のハーレムを作ることを人生の目標に決める。 しかし、出会う美少女たちは皆、なにかしらの逆境に苦しんでいて、ライはそんな彼女たちに全力で救いの手を差し伸べる。 もちろん、攻略スキルを使って。 もちろん、救ったあとはハーレムに入ってもらう。 下心全開なのに、正義感があって、熱い心を持つ男ライ・ミカヅチ。 これは、そんな主人公が、異世界を全力で生き抜き、たくさんの美少女を助ける物語。 【他サイトでの掲載状況】 本作は、カクヨム様、小説家になろう様でも掲載しています。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

処理中です...