異世界に転移したからモンスターと気ままに暮らします

ねこねこ大好き

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最終章 決着

決戦当日:トラップ

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 決戦当日。さっそく戦いの場に向かう。

 目的地は魔界と人間界の国境にある森。

 何が待ち受けているか、楽しみでもあるし、怖くもある。

 同行者はティア、ゼラ、ギンちゃん、ハクちゃん、朱雀、カーミラ、フランさん、ラルク王子、ガイ、マリア、メデューサ、ダイ君、エメ君、キイちゃん。そしてその部下の魔王が総勢百万人。

 圧倒的戦力だ。負けるはずがない。勝ったら皆で美味い酒でも飲もう。

「なぜ私まで勇者と戦わないといけないんだ?」
「同じく」
 決戦の森前で最後の休憩時、フランさんとラルク王子はげんなりと隣でお茶を飲む。

「仲間だから良いでしょ」
「そりゃそうだが」
「荒事は苦手なんだよ」
 二人とも気乗りしない感じだ。

「頼むよ。皆、直情型で軍の指揮が苦手だから、冷静な二人の助けが必要なんです」
「それを言われると……」
「納得するしかないか」
 二人は周りで笑顔で剣を振り回すやる気満々な魔王たちを見る。

「よーし! 最後の特訓だ! 行くぜ!」
「うわぁあああ!」
 ガイなど張り切り過ぎて部下を薙ぎ払っている。
 お前が戦力を削ってどうするんだ?

「いっくよーーーー!」
「行くわよ!」
 血の気の荒いマリアにメデューサも同じだ。

 魔王は個人プレーが得意だが軍の指揮はいまいち得意ではない。
 さらに獲物が居たらその身体能力で、我先にと叩き潰すことに夢中になってしまう。

 朱雀やカーミラ、キイちゃんは違うが、それでも大軍となると三人だけでは軍を管理しきれない。
 何より俺自身、軍の指揮は苦手だ。
 だから冷静で軍の指揮経験もあるラルク王子と、魔界の三分の一を統治していたフランさんの助けが必要だった。

「分かった」
「けが人が出ないように頑張るよ。もう出てるけど」
 二人は深々とため息。

「それはそれとして、本当に策も無く森に突っ込むつもりか?」
 ラルク王子が言った。

「策も何も、この大軍で森を包囲すればそれだけでチェックメイトでしょ」
「そりゃそうだが……」
「力押し。確かに戦争で一番効果的な戦術だが」
 二人とも渋い顔をする。

「しかし奴らは必ず森に罠を仕掛けてる」
「力押しだと足元を掬われるぞ」
 二人の意見ももっともだ。

「だから二人は森の包囲を続けて。中に入るのは少数精鋭。俺とティアとゼラに朱雀にカーミラにガイ、マリア、メデューサ、ダイ君、エメ君、キイちゃん。そしておまけに止めても絶対について来るハクちゃんとその保護者のギンちゃんの十三名だ」
「十三名?」
「少なすぎないか?」

「偵察目的だからね。危なくなったらすぐに帰って来る」
「うーむ。しかしもう少し連れて行った方が良いぞ」
 ラルク王子は唸る。

「ならカーミラとダイ君、エメ君にキイちゃんの部下を連れて行く。総勢三百人だ」
「偵察ならそれくらいか」
 ラルク王子は渋い顔だ。
「もう少し多くても良いと思うが」
 フランさんも渋い顔だ。

「それ以上連れて行っても統率が取れないよ」
「魔王は本当に個人プレーが好きだな」
 ラルク王子はため息。
「結局突っ込むことしか出来ないからね。俺もそっちの方が性に合ってるし」
 俺は苦笑い。

「君が一番血の気が荒いんじゃないか?」
 フランさんは苦笑した。

「とにかく十三名で十分だよ。魔界でも随一の実力者だからね」
「分かった。君を信じよう」
「包囲は任せてくれ」
 二人の了解が取れた。

 ならいよいよ進軍だ!

「よーし! そろそろ進軍だ! ティア! ゼラ! 朱雀! カーミラ! ガイ! マリア! メデューサ! ダイ君! エメ君! キイちゃん! ハクちゃん! ギンちゃん! 作戦通り突撃だ!」
「よっしゃぁあああああ!」
 一目散にガイが森へすっ飛んで行った。

「抜け駆けはダメーーーー!」
「待ちなさい!」
 そしてマリアとメデューサも突っ込んだ。

「まさに切り込み隊長だな」
 朱雀は点になっていく三人の背中に肩をすくめる。

「俺たちは麗夜様を護衛します」
「必ず守ります! 何せ俺たちは麗夜様直属の騎士ですから!」
「命に代えても!」
 ダイ君とエメ君、キイちゃんは突っ込まずにピタリと俺に寄りそう。
 そして俺の周りにはドラゴン騎士団、ワイバーン騎士団の護衛が並んだ。

「私も先行します。麗夜様はゆっくりと後について来てください」
 カーミラとその部下の吸血鬼軍は影となって森へ入って行った。

「何だかドキドキするな!」
 ゼラは少し高揚した感じに笑う。
「うむ! ティアもドキドキ!」
 ティアは初めての戦争に緊張しているようだ。

「俺は空から偵察して見るぜ」
 朱雀はフッと煙の雲を作ると、それに乗ってふわふわと上空へ行った。

 空には朱雀、突撃隊にガイとマリアとメデューサ。偵察隊にカーミラ。護衛はダイ君にエメ君にキイちゃん。傍にはティアにゼラ。

「勝つイメージしかないな」
 大山達はこの実力者相手にどうやって立ち回る気なんだろう?

「まあいい! 行こう!」
「しゅっぱつしんこー!」
 ハクちゃんが俺の頭に乗って拳を振り上げた。

「娘の血の気が荒いのは環境のせいかの?」
 ギンちゃんは諦め顔だった。



 森に入った。
「見られてるな」
 入るとすぐに視線を感じた。

「【千里眼】のチートだろうな」
 ゼラが微笑する。

「【千里眼】ってどんなチートなんだ?」
「敵の位置はもちろん、思考や未来すら読み取ることができるチートだ」
「情報戦では負け確だったか」
「だからこそ単純な力押しの方が効果的ということだな」
 ゼラの表情に緊張が走る。

「どうかしたか?」
「何か変だ」
 ゼラは自分の手足を見る。

「ティア、なんか変?」
 ティアも困惑したような表情で手足を見る。

「力が入らない?」
 ダイ君たちも戸惑いの表情を見せる。

「どうやらトラップが発動したみたいだ」
 俺は平気だった。だがティアたちの様子を見る限り、大山達が仕掛けたトラップに、皆は引っかかってしまったようだ。

 しかし、見られているという感覚以外に、何か踏んだとか、トラップに引っかかったとかという感覚は無かった。

「そうか。【千里眼】で手動発動したってことか」
 【千里眼】を使えば位置も何もかもバレバレだ。ならトラップを発動させるタイミングも自分で選べる。そして自分で選ぶって事は、相手に気づかれないまま罠を作動させることができるって事だ。

「いったん戻ろう。偵察は十分だ」
 さすが大山だ。一筋縄ではいかない。

 皆を停止させる。

「ん!」
 その瞬間、皆の体が光に包まれた。

「これは転移魔法!」
 俺たちを引き離すつもりだ!

「麗夜!」
 ティアが手を伸ばして来た。
 しかし、それに捕まろうとした瞬間、視界が真っ白に変わった。



■■■【大山サイド】■■■
「とりあえず最初の作戦は完了だ」

 三村は水晶の塊に移る麗夜たちを見てほくそ笑む。

「桐山。奴らのレベルは」
「言われた通り、麗夜以外レベル1にした」
 桐山は青い瞳を瞬かせる。
 すぐに元の黒目に戻った。

 桐山の能力。【神が定めし弱者】
 目に移る者のレベルを強制的に1にする呪いの魔眼だ。

「森を包囲する魔軍のレベルも1。作戦の第一段階は成功。第二段階の始まりだ」
 三村は笑いながら、今度は仲間たちが移る水晶の画面に目を移す。

「【神が定めし強者】発動」
 三村の能力。【神が定めし強者】
 ①目に移る者のレベルとステータスを一億倍にする。
 ②目に移る者に状態異常無効の効果を与える。
 ③目に移る者の状態異常を解除する。
 ④目に移る者に【不老不死】の効果を与える。
 ⑤目に移る者に【瞬間再生】の効果を与える。
 ⑥目に移る者に【無限の体力】の効果を与える。

「これで良し」
 三村は魔法で作られた携帯電話で電話する。

「皆、作戦は第二段階へ入った。すぐに転移した敵が目の前に現れる。各個撃破しろ」
 そう言って三村は電話を閉じた。

「さてさて。魔王様はどうする?」
 三村は勝ち誇ったように微笑した。
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