異世界に転移したからモンスターと気ままに暮らします

ねこねこ大好き

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皇都へ

内乱の始まり

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 全くどうしてこうなったのか、俺は理解に苦しむね!
 霧島の策略を逆手にとってクラスメイトを陥れるって手筈だったのに、なぜか復讐する相手であるはずのクラスメイトのほとんどが霧島に皆殺しにされ、さらに洗脳された皇都軍と戦う! ふざけんな!
 世界からクラスメイトを孤立させ、タイマンして白黒つけるって覚悟が水の泡だ! 孤立させるとか回りくどいけどそれが俺の望みだった! 俺は虐められた! なら復讐する! でもそれはこの世界の人々に関係の無いこと! なら迷惑をかけないように! その気持ちは無惨にも消し飛んだ!

「どうして僕が戦わないといけないんだい?」
 皇都の正門前で皆を集めたところで、フランさんが開口一番に言う。
「どうして亜人の国の王である俺が戦わないといけないんだ?」
 ラルク王子は先ほどから腕組みして俯いてる。

「どうせだから俺の苦労を分けてあげようかと」
「どういう理屈だ?」
「君って奴は……」
 理由を言うと二人はげんなりした顔になった。

 一方魔軍の皆は元気いっぱいだ
「はっはっは! 戦だ戦!」
「頑張るぞ!」
「人間と戦うなんてひっさしぶり!」
 好戦的なガイとマリアとメデューサはやる気満々だ。

「ついに騎士らしい仕事がやれる!」
「騎士になってよかった……」
 ダイ君とエメ君は感無量といった感じだ。
「二人ともはしゃぐな。これは遊びじゃないんだぞ」
 キイちゃんは二人をたしなめる。しかし尻尾をふりふり振ってるからやっぱり嬉しいのだろう。

「私なら一人でこの町を吹っ飛ばせるぞ」
 ゼラは久しぶりな戦いということで張り切っている。
「俺はそんなの求めて無いからな」
 ちゃんと釘を刺して置く。
「ティアもできる!」
「そこで張り合わなくて良いから」
 ティアも久しぶりの戦いという感じで張り切ってる。

 一方ハクちゃんとギンちゃんは怒り心頭といった感じだった。
「皆助ける!」
「尻を蹴飛ばしてやる」
 優しい二人は霧島の行いが許せないようだ。

「しっかし洗脳使いとは嫌な奴が敵になったな」
 久しぶりにあった朱雀は煙の上で寝そべりながら煙草を吹かす。

「敵なだけなら良かったんだけどな」
「加えて悪党か。バカに力を持たせたらいけねえな」
 いつも飄々とする朱雀も呆れ顔だ。

「麗夜様。城周辺に集まる皇都軍が動き出しました」
 カーミラが影の中から報告に来た。
「敵の数は?」
「一万ほどです。全員鎧にメイスなど完全装備です。皇都内ですが手加減するつもりはないようです」
「霧島の奴、皇都を滅茶苦茶にするつもりか?」
 皇都の中で本気の戦争をやるつもりか。一般市民は避難してない。このままだと巻き添えでたくさんの人が死ぬ。

「命令は一つ。誰一人死なせず、皇都軍を制圧しろ」
「傷つけず?」
 魔軍一同が首をかしげた。

「つまり手加減してってこと。殺したら怒るから」
「て、手加減……」
 ガイにマリアにメデューサは難しい顔をする。

「あとできる限りケガさせないでね」
「そこまで手加減……」
「この面子だったら皇都軍なんてぶっちゃけ虫みたいなもんでしょ。なら虫を抓むくらいの感じで思いっきり手加減してね」
 この面子だったら一瞬で皇都軍皆殺しに出来るんだよなぁ……だから手加減させないとダメなんだよなぁ。

「が、頑張ります」
 ガイにマリアにメデューサは自信なさげに言った。
 言ってくれただけ良いか。

「こいつらに手加減ってのは無茶な注文じゃないか?」
 朱雀が横やりを入れて来た。

「どうしてやる気をなくさせるようなことを言うの」
「魔軍は人間と遊んだ事も無いんだぜ。フランにラルク王子、ハクちゃんやギンちゃん、ダイ君にエメ君にティアに麗夜は人間や亜人と触れ合ってたからどのくらい手加減すればいいのか分かってるけど、こいつらはどのくらい手加減すれば良いのか、どれくらい強いのか分かってねえ。それなのに手加減しろってのは酷な注文だ」
「う……」

 言われてみれば確かにそうだ。

「それに虫を抓むくらい優しくって言ったって、魔界の虫は蜂や蟻に蜘蛛も全部魔王の大群だぞ」
「確かに蜂や蟻は大岩クラスのデカさだ。ムカデなんて大木クラスだ。なるほど。虫のレベルが違う」
 朱雀の言うことは最もだ。

「確かにそうだな……でも手加減してくれないと兵士たち死んじゃうだろうし……」
 レベルが違いすぎるというのも考え物だ。

「手加減できないなら全力を出しても傷つけられないくらい弱くすればいい」
 俺が困っているとゼラがパチンと指を鳴らした。

「む! 力が抜けたような感覚が!」
 するとガイにマリアにメデューサの表情が変わった。

「なんか前より弱くなった気がする!」
「力が入らないわね」
 魔軍が騒めく。

「うぬ! ティアも力が抜けた気がする!」
「何だか昔に戻ったみたいじゃ」
 ティアとギンちゃんも困惑してる。

「う~ん! ジャーンプ!」
 ハクちゃんが思いっきり垂直飛びした。記録は三十メートル。十分すぎるけど今までのハクちゃんに比べたら記録が下がってる。

「ゼラ。皆に何したの?」
「麗夜と私以外のレベルを一時的にレベル50まで封印した」
 軽々となんてことを……。

「レベル制限か……昔は本当に絶望した能力だ」
 朱雀がふ~とため息を吐いた。

 どうしたものか?
 確かにそこまでレベルが下がれば人を殺すことは無いだろうけど。
「これが手加減か!」
 悩んだがガイは結構楽しそうだ。

「うむ! 人間はこんなに弱く無いと死んじゃう!」
「何だか新鮮ね! これはこれで面白いかも!」
 マリアにメデューサも楽しんでる。前向きでよろしい。

「怪我させないならこれで良し!」
「皆のためじゃからな」
「頑張る!」
 ティアにギンちゃんにハクちゃんも気にしてないみたいだ。

「そもそもレベル50って十分人間からしたら化け物だぞ」
「私はレベル50兆とかよりこっちの方が良い」
 フランさんとラルク王子などレベルが下がったのに安心してる。

「まあ、一時的だし、これで良いか」
 全員、魔王だから、レベル50でも人間だったらレベル200クラスの化け物だ。

「よし! 作戦を伝える!」
 とにかく準備は整ったと考えよう。

「皇都軍は狭い市街地に呼び込む。そこなら大軍が入って来れないから各個撃破できる。東はガイ、西はメデューサ、北はマリア、南はダイ君たちがお願い」
「おう!」
 ガイたちは拳を掲げる。

「フランさんは万が一けが人が出た時のための回復係。こっちに残ってて」
「そういうことなら分かった」
「ラルク王子は亜人軍と一緒に一般市民の護衛をお願い」
「仕方がない。ここまで来たのだからやってやろう」
「俺たちは皇都の城の近くで待機。皇都軍が城から居なくなったら突入しよう」
「そしてティアたちが霧島をぶっ飛ばす!」
 ティアは作戦を聞いてグッと拳を握る。

「では最後に、一番は自分の命。もしも危なくなったら殺しても許す」
 作戦を伝えた後、俺たちは各自配置についた。



■■■■



 麗夜たちが万全の態勢で待ち構える中、霧島は城の中で舌打ちする。
「戦術なんて知らないわよ……どんな命令すればいいの?」
 霧島は皇都軍を集結させた。しかしそこから先、何をすれば良いのか分からなかった。
「とにかく人を集めたけど……」
 霧島は腕組みする。
「まあ良いわ。命令は麗夜を殺せ。その仲間も殺せ!」
 発狂した霧島は麗夜を殺す事しか考えていない。

「そろそろいい具合かしら?」
 霧島は窓から外を見て、皇都軍の集まり具合を見る。
「こんだけ集まれば、麗夜がどんな化け物を飼っていても勝てるでしょ」
 霧島は命じる。

「命令よ。麗夜とその仲間を殺しなさい! もしも洗脳されていない奴が居たらそいつも殺しなさい!」
 霧島の号令とともに、兵士たちの瞳が虹色に輝いた。

 内乱が始まった。
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