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皇都へ
いざ皇都へ
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朝起きたら歯を磨いて顔を洗って大食堂へ行って皆と一緒に朝ごはん。
献立はトーストとベーコンと目玉焼きに鶏肉スープ。
いつも通りの平和な朝だ。
「うにゅ~~~」
「むぎゅ~~~」
そしてティアとゼラに抱き付かれるのもいつも通りだ。
「二人とも。食べられないんだけど」
両腕が塞がって動けない。
「おお!」
「そうだったな!」
二人とも今更気づいたという感じに声を上げる。
「麗夜。あーん」
そしてティアがトーストを口元へ持ってくる。
「麗夜。あーんだ。ちゃんとふうふうしたから火傷しないぞ」
反対側からゼラが口元へ目玉焼きを持ってくる。
違う、そうじゃない。
でも二人とも満面の笑みだから断れない。
「あ、あーん」
ティアのトーストを一かじりした後、ゼラの目玉焼きを一かじりする。
美味しいけど滅茶苦茶食べづらい!
「お主たち行儀が悪いぞ」
ギンちゃんはそんな俺たちを見てため息を漏らした。
すると二人は息を合わせて言う。
「大丈夫」
「問題ない」
何が?
「む~~~」
そしてなぜかハクちゃんが俺を見て唸っている。
「ゼラ。あーんして」
ハクちゃんはゼラの膝に腰を移動させるとマリアちゃんが作ったデザートのショートケーキの苺をフォークにぶっ刺してゼラにあげる。
「お! ありがとう」
ゼラは俺からハクちゃんに意識を変えてパクリと苺を食べる。
「美味しいな」
そしてお姉ちゃんみたいにハクちゃんの頭を撫でた。
「にへへへへ」
ハクちゃんは妹みたいに嬉しそうだった。
ゼラが俺にべったりだったから嫉妬したのかな? 友達を盗られたみたいに。
「麗夜にもあげる」
ハクちゃんはさっきと打って変わって楽しそうにゼラの膝の上で体を揺らしながらショートケーキをくれた。
「ありがと」
パクリと食べると甘くて美味しい。
「お主らいい加減にせい!」
そしてギンちゃんが大食堂に響き渡るくらいの大声で怒った。
「すいませんすいません!」
するとそれに驚いた魔王たちが一斉にギンちゃんに頭を下げる。君たちは全く悪くないんだけどなぁ。
「いや、お主らに怒った訳では無いんじゃ」
ギンちゃんは恥ずかしそうに口をもごもごさせる。
その間にゼラとハクちゃんがぼそぼそ話し合う。
「今のうちに逃げるぞ」
「うん!」
二人は仲良く身を屈めて大食堂から脱出した。
「俺たちも逃げるか」
「そうだね」
それに習って俺とティアもギンちゃんから逃げる。
「あいつらはどこ行ったんじゃ!」
大食堂を抜け出すとギンちゃんの怒鳴り声が耳を貫いた。
こりゃしばらく戻れないな。
■
おやつ時、ギンちゃんの怒りが収まった後、俺とティアは自室に戻り、まったりとゼラにギンちゃん、ハクちゃんと一緒にババ抜きで遊ぶ。
「そろそろ皇都へ行こうと思う」
ティアから一枚カードを引く。
ハートのエース。ペアは作れなかった。
残り4枚。そろそろ終盤戦だ。
「皇都ってどこ?」
ハクちゃんが質問しながら俺の手札を難しそうな顔で見る。
「麗夜、ババ持ってる?」
皇都と質問してきたのにババを持って居るのか聞き直す。
ハクちゃんはババ抜きに夢中だ。
「持ってないよ」
微笑で答える。
「信じて良い?」
疑い深い顔だ。
「信じて良いよ」
「嘘吐いたら針千本飲ませるよ」
「良いよ」
「本当に飲ませちゃうからね」
「持ってないから安心して」
緊張したハクちゃんの顔が可愛らしくて笑ってしまう。
「分かった」
ハクちゃんは恐る恐る右端のハートのキングを引いた。
「揃った!」
ハクちゃんは顔を輝かせてテーブルに二枚のトランプを置く。
ハクちゃんは残り二枚。一着に王手だ。
「早く引いて早く引いて!」
ハクちゃんはゼラに手札を差し出す。
さっきの質問はすっかり忘れてしまったようだ。
「ならこれをもらおう」
ゼラは余裕な表情で右のトランプを取る。
「残念。揃わなかった」
ゼラは首を振りながら五枚の手札をティアに差し出す。
「ババはゼラが持って居る」
ティアは目を光らせる。
「どうしてそう思うんだ?」
ピクリとゼラの眉毛が動いた。
行方不明だったババはゼラが持って居たようだ。
「何となくゼラが持ってる気がする」
ティアはトランプを見透かそうと難しい顔で凝視する。
「私は持って居ないぞ」
ゼラはニッコリと花が咲いたように笑う。
絶対にゼラが持ってる。分かりやすい。
「ふむ……たとえゼラが持っていてもティアはゼラから一枚引かないといけない」
ティアは覚悟を決めたように真ん中のカードを引こうとする。
ギュ!
ゼラが指に力を込めて、カードを押さえた。
「ゼラ。カード引けない」
ティアがムッとゼラを睨む。
「そのカードよりもこっちのカードが良い」
ゼラは作り笑いをしながら右端のカードをティアに渡そうとする。
「ティアはこのカードが良いの」
「それはババだからダメだ」
もうババ持ってるって公言してるよ。
「ゼラ。ルールは守れ」
このままだとゲームが進まないのでゼラに注意する。
「う~~む。麗夜が言うなら仕方がない」
ゼラは渋々といった感じに指の力を抜いた。
するとピッとティアがカードを引く。
「げ!」
ティアの表情が変わった。
「はっはっはっはっは! だから私の言う通りにカードを変えれば良かったのに! ティアは頑固な奴だなぁ!」
ゼラは高笑い。
もしかしてババはティアに移った?
「うにゅ~~~」
ティアは不機嫌な顔で手札をテーブルの下に隠してシャッフルする。
ティアは本当にババを引いてしまったようだ。
どうやらゼラはティアをからかうために一芝居打ったらしい。
素直に引かせておけばいいのに、意地悪な奴だ。
「はい、ギンちゃん」
ティアはしかめっ面で手札をギンちゃんに向ける。
ギンちゃんは迷わずにカードを引く。
「ぷぷぷ!」
するとティアがほくそ笑んだ。
ギンちゃんは表情一つ変えていないが、ティアの様子を見るに、ババはギンちゃんに移ったらしい。
「皇都に何しに行くんじゃ」
ギンちゃんは素知らぬ顔で俺に手札を差し出す。
「そろそろ和平交渉しに行こうと思って」
理由を言いながら手札を見る。
五枚あるうちのどれがババなのか分からない。
「もう向こうはちょっかいかけてこないし、放っておいても良いんじゃないか」
ギンちゃんは平然とした表情で言う。
ポーカーフェイスが上手い。
「俺の目的は戦争を終わらせて、クラスメイトの奴らを勇者からタダの人に戻して、誰にも邪魔されないようにしてから勝負すること。そうもいかないさ」
左端のカードを引く。
ババだった。
ギンちゃんは笑いもせず淡々とした表情だ。
でも耳と尻尾がピクピク嬉しそうに動いているから喜んでいるのが分かった。
次からは顔じゃなくて耳と尻尾に注目しよう。
「今の麗夜ならあいつらを屈服させるのも簡単だ」
ゼラが余裕な表情でカップを持つと、鼻を近づけて紅茶の香りを楽しむ。
ご機嫌だな。
「俺は彼らと戦う気はない。話し合いで解決したいんだ」
魔軍総出で戦争を仕掛ければ、話は魔軍の勝利、人間の降伏という形で簡単に終わるだろう。
でも戦争は嫌いだし、彼らに恨みはない。平和的に解決したい。
何より今の魔軍はでたらめなほど強すぎる。こんな戦力差で戦っても可哀そうなだけだ。
「それだと時間がかかるんじゃないか。手間もかかって面倒そうだ」
ゼラは眉間に眉を集める。
回りくどい俺のやり方が疑問らしい。気持ちは分かる。
「まあね。でも手間をかけても戦争をしたくない」
だからまずは皇都へ行って、人間たちの様子を偵察したい。
行ってみて、もしも戦争する気満々なら仕方ない。こちらもそれに答える。
しかしもしも戦争する気が無ければ、話し合いで解決できるし、その糸口も見つかる。
とにもかくにも行ってみないと話にならない。
「そんなに難しく考えなくていい。皆で遊びに行く感覚で良いよ」
偵察とか解決とか言ったが、やることはちょっと様子を見るだけ。一日で済む。
それよりもこの世界で一番栄えていると言われている町を皆と見物して見たい。
それが本音だ。
せっかくゼラという仲間も増えたんだ。全員で親睦を深めたい。
「げ!」
ハクちゃんが悲鳴を上げた。
俺の手札を見てみるとババが無くなっていた。
今度はハクちゃんに移ってしまったらしい。
「ゼラ! どうぞ!」
ハクちゃんは尻尾の毛を逆立たせてゼラに手札を差し出す。
「遊びに行くか。それなら面倒臭くなくていい」
ゼラは油断した顔で、優雅に紅茶を飲みながら、ハクちゃんの顔も見ないで、カードを引いた。
「なんで私のところに戻ってくるんだ!」
そして引いたカードを見て叫んだ。
勝負の結果はゼラの負けで終わった。
■
翌朝、さっそく皇都へ出発する。
メンバーは俺、ティア、ハクちゃん、ギンちゃん、ゼラ、ダイ君率いるドラゴン騎士団とキイちゃん率いるワイバーン騎士団、アンリ率いるエルフのお手伝い部隊、そして影に潜むことができるカーミラ率いる吸血鬼部隊だ。
朱雀たちは魔王城でお留守番だ。
「皇都まで歩いて行こう」
皇都まで千キロ以上の道のりだ。徒歩となると数か月かかる。
「遠いよ? ダイ君たちの背中に乗ればすぐだよ」
ティアの言うことはもっともだ。
「人間と和平しに行くんだ。なら俺たちも人間らしく歩いて行こう」
皇都の人たちを刺激したくない。こじれると面倒だ。
何よりすぐに行ってしまっては忙しなくて風情も何も無い。
たまにはゆっくり、皆と旅をしながら進み隊。
「ふむ。麗夜が言うならそうする」
ティアたちはピンと来なかったみたいだが、すぐに歩き出した。
「ワハハハハハハ!」
ハクちゃんは一目散に駆け出した。
「待たんか!」
ギンちゃんはそれを追いかける。
楽しそうな旅になりそうだ。
献立はトーストとベーコンと目玉焼きに鶏肉スープ。
いつも通りの平和な朝だ。
「うにゅ~~~」
「むぎゅ~~~」
そしてティアとゼラに抱き付かれるのもいつも通りだ。
「二人とも。食べられないんだけど」
両腕が塞がって動けない。
「おお!」
「そうだったな!」
二人とも今更気づいたという感じに声を上げる。
「麗夜。あーん」
そしてティアがトーストを口元へ持ってくる。
「麗夜。あーんだ。ちゃんとふうふうしたから火傷しないぞ」
反対側からゼラが口元へ目玉焼きを持ってくる。
違う、そうじゃない。
でも二人とも満面の笑みだから断れない。
「あ、あーん」
ティアのトーストを一かじりした後、ゼラの目玉焼きを一かじりする。
美味しいけど滅茶苦茶食べづらい!
「お主たち行儀が悪いぞ」
ギンちゃんはそんな俺たちを見てため息を漏らした。
すると二人は息を合わせて言う。
「大丈夫」
「問題ない」
何が?
「む~~~」
そしてなぜかハクちゃんが俺を見て唸っている。
「ゼラ。あーんして」
ハクちゃんはゼラの膝に腰を移動させるとマリアちゃんが作ったデザートのショートケーキの苺をフォークにぶっ刺してゼラにあげる。
「お! ありがとう」
ゼラは俺からハクちゃんに意識を変えてパクリと苺を食べる。
「美味しいな」
そしてお姉ちゃんみたいにハクちゃんの頭を撫でた。
「にへへへへ」
ハクちゃんは妹みたいに嬉しそうだった。
ゼラが俺にべったりだったから嫉妬したのかな? 友達を盗られたみたいに。
「麗夜にもあげる」
ハクちゃんはさっきと打って変わって楽しそうにゼラの膝の上で体を揺らしながらショートケーキをくれた。
「ありがと」
パクリと食べると甘くて美味しい。
「お主らいい加減にせい!」
そしてギンちゃんが大食堂に響き渡るくらいの大声で怒った。
「すいませんすいません!」
するとそれに驚いた魔王たちが一斉にギンちゃんに頭を下げる。君たちは全く悪くないんだけどなぁ。
「いや、お主らに怒った訳では無いんじゃ」
ギンちゃんは恥ずかしそうに口をもごもごさせる。
その間にゼラとハクちゃんがぼそぼそ話し合う。
「今のうちに逃げるぞ」
「うん!」
二人は仲良く身を屈めて大食堂から脱出した。
「俺たちも逃げるか」
「そうだね」
それに習って俺とティアもギンちゃんから逃げる。
「あいつらはどこ行ったんじゃ!」
大食堂を抜け出すとギンちゃんの怒鳴り声が耳を貫いた。
こりゃしばらく戻れないな。
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おやつ時、ギンちゃんの怒りが収まった後、俺とティアは自室に戻り、まったりとゼラにギンちゃん、ハクちゃんと一緒にババ抜きで遊ぶ。
「そろそろ皇都へ行こうと思う」
ティアから一枚カードを引く。
ハートのエース。ペアは作れなかった。
残り4枚。そろそろ終盤戦だ。
「皇都ってどこ?」
ハクちゃんが質問しながら俺の手札を難しそうな顔で見る。
「麗夜、ババ持ってる?」
皇都と質問してきたのにババを持って居るのか聞き直す。
ハクちゃんはババ抜きに夢中だ。
「持ってないよ」
微笑で答える。
「信じて良い?」
疑い深い顔だ。
「信じて良いよ」
「嘘吐いたら針千本飲ませるよ」
「良いよ」
「本当に飲ませちゃうからね」
「持ってないから安心して」
緊張したハクちゃんの顔が可愛らしくて笑ってしまう。
「分かった」
ハクちゃんは恐る恐る右端のハートのキングを引いた。
「揃った!」
ハクちゃんは顔を輝かせてテーブルに二枚のトランプを置く。
ハクちゃんは残り二枚。一着に王手だ。
「早く引いて早く引いて!」
ハクちゃんはゼラに手札を差し出す。
さっきの質問はすっかり忘れてしまったようだ。
「ならこれをもらおう」
ゼラは余裕な表情で右のトランプを取る。
「残念。揃わなかった」
ゼラは首を振りながら五枚の手札をティアに差し出す。
「ババはゼラが持って居る」
ティアは目を光らせる。
「どうしてそう思うんだ?」
ピクリとゼラの眉毛が動いた。
行方不明だったババはゼラが持って居たようだ。
「何となくゼラが持ってる気がする」
ティアはトランプを見透かそうと難しい顔で凝視する。
「私は持って居ないぞ」
ゼラはニッコリと花が咲いたように笑う。
絶対にゼラが持ってる。分かりやすい。
「ふむ……たとえゼラが持っていてもティアはゼラから一枚引かないといけない」
ティアは覚悟を決めたように真ん中のカードを引こうとする。
ギュ!
ゼラが指に力を込めて、カードを押さえた。
「ゼラ。カード引けない」
ティアがムッとゼラを睨む。
「そのカードよりもこっちのカードが良い」
ゼラは作り笑いをしながら右端のカードをティアに渡そうとする。
「ティアはこのカードが良いの」
「それはババだからダメだ」
もうババ持ってるって公言してるよ。
「ゼラ。ルールは守れ」
このままだとゲームが進まないのでゼラに注意する。
「う~~む。麗夜が言うなら仕方がない」
ゼラは渋々といった感じに指の力を抜いた。
するとピッとティアがカードを引く。
「げ!」
ティアの表情が変わった。
「はっはっはっはっは! だから私の言う通りにカードを変えれば良かったのに! ティアは頑固な奴だなぁ!」
ゼラは高笑い。
もしかしてババはティアに移った?
「うにゅ~~~」
ティアは不機嫌な顔で手札をテーブルの下に隠してシャッフルする。
ティアは本当にババを引いてしまったようだ。
どうやらゼラはティアをからかうために一芝居打ったらしい。
素直に引かせておけばいいのに、意地悪な奴だ。
「はい、ギンちゃん」
ティアはしかめっ面で手札をギンちゃんに向ける。
ギンちゃんは迷わずにカードを引く。
「ぷぷぷ!」
するとティアがほくそ笑んだ。
ギンちゃんは表情一つ変えていないが、ティアの様子を見るに、ババはギンちゃんに移ったらしい。
「皇都に何しに行くんじゃ」
ギンちゃんは素知らぬ顔で俺に手札を差し出す。
「そろそろ和平交渉しに行こうと思って」
理由を言いながら手札を見る。
五枚あるうちのどれがババなのか分からない。
「もう向こうはちょっかいかけてこないし、放っておいても良いんじゃないか」
ギンちゃんは平然とした表情で言う。
ポーカーフェイスが上手い。
「俺の目的は戦争を終わらせて、クラスメイトの奴らを勇者からタダの人に戻して、誰にも邪魔されないようにしてから勝負すること。そうもいかないさ」
左端のカードを引く。
ババだった。
ギンちゃんは笑いもせず淡々とした表情だ。
でも耳と尻尾がピクピク嬉しそうに動いているから喜んでいるのが分かった。
次からは顔じゃなくて耳と尻尾に注目しよう。
「今の麗夜ならあいつらを屈服させるのも簡単だ」
ゼラが余裕な表情でカップを持つと、鼻を近づけて紅茶の香りを楽しむ。
ご機嫌だな。
「俺は彼らと戦う気はない。話し合いで解決したいんだ」
魔軍総出で戦争を仕掛ければ、話は魔軍の勝利、人間の降伏という形で簡単に終わるだろう。
でも戦争は嫌いだし、彼らに恨みはない。平和的に解決したい。
何より今の魔軍はでたらめなほど強すぎる。こんな戦力差で戦っても可哀そうなだけだ。
「それだと時間がかかるんじゃないか。手間もかかって面倒そうだ」
ゼラは眉間に眉を集める。
回りくどい俺のやり方が疑問らしい。気持ちは分かる。
「まあね。でも手間をかけても戦争をしたくない」
だからまずは皇都へ行って、人間たちの様子を偵察したい。
行ってみて、もしも戦争する気満々なら仕方ない。こちらもそれに答える。
しかしもしも戦争する気が無ければ、話し合いで解決できるし、その糸口も見つかる。
とにもかくにも行ってみないと話にならない。
「そんなに難しく考えなくていい。皆で遊びに行く感覚で良いよ」
偵察とか解決とか言ったが、やることはちょっと様子を見るだけ。一日で済む。
それよりもこの世界で一番栄えていると言われている町を皆と見物して見たい。
それが本音だ。
せっかくゼラという仲間も増えたんだ。全員で親睦を深めたい。
「げ!」
ハクちゃんが悲鳴を上げた。
俺の手札を見てみるとババが無くなっていた。
今度はハクちゃんに移ってしまったらしい。
「ゼラ! どうぞ!」
ハクちゃんは尻尾の毛を逆立たせてゼラに手札を差し出す。
「遊びに行くか。それなら面倒臭くなくていい」
ゼラは油断した顔で、優雅に紅茶を飲みながら、ハクちゃんの顔も見ないで、カードを引いた。
「なんで私のところに戻ってくるんだ!」
そして引いたカードを見て叫んだ。
勝負の結果はゼラの負けで終わった。
■
翌朝、さっそく皇都へ出発する。
メンバーは俺、ティア、ハクちゃん、ギンちゃん、ゼラ、ダイ君率いるドラゴン騎士団とキイちゃん率いるワイバーン騎士団、アンリ率いるエルフのお手伝い部隊、そして影に潜むことができるカーミラ率いる吸血鬼部隊だ。
朱雀たちは魔王城でお留守番だ。
「皇都まで歩いて行こう」
皇都まで千キロ以上の道のりだ。徒歩となると数か月かかる。
「遠いよ? ダイ君たちの背中に乗ればすぐだよ」
ティアの言うことはもっともだ。
「人間と和平しに行くんだ。なら俺たちも人間らしく歩いて行こう」
皇都の人たちを刺激したくない。こじれると面倒だ。
何よりすぐに行ってしまっては忙しなくて風情も何も無い。
たまにはゆっくり、皆と旅をしながら進み隊。
「ふむ。麗夜が言うならそうする」
ティアたちはピンと来なかったみたいだが、すぐに歩き出した。
「ワハハハハハハ!」
ハクちゃんは一目散に駆け出した。
「待たんか!」
ギンちゃんはそれを追いかける。
楽しそうな旅になりそうだ。
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