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第3章
第59話
しおりを挟む馬車に揺られること約半日ほど。
距離がすごく離れている訳でもないが、この時期はどの道も混んでいる。昼食をとらないままもう昼過ぎになってしまっている、想定より遅れてしまった。
ディランに手を取られ馬車から降りるともうそこは学園の目の前だった。城や小さな町と言っても差し支えないほどの敷地が目の前に広がる。
ちらちらと他の生徒の視線を感じるため、やっと馬車から解放されたというのに伸びすらできそうにない。
「お待ちしておりました、コーディリア家のご令嬢。私はこの学園のーー」
教員らしき人物から挨拶をされるが、馬車の疲れであまり頭に入ってこない。顔に出ないように、形だけは話を聞く。
黒髪であるディランを連れてきたことについて何か嫌なことのひとつでも言われるかもしれないと不安に思っていたが、そんなことはなくただ少しチラリと見られただけだった。
目の前の教員は、私だけでなくディランのことも快く出迎えてくれているらしかった。どうやら話を聞くに、私たちの荷物は学園側が寮へ運んでくれるらしい。
部屋の準備が整うまで自由に過ごしていいとの事だ。前もそうだったため驚きはないが、素直にありがたく思う。
「ありがとうございます、助かります」
お礼を口に出し軽く頭を下げる。目の前の初老の教員は、少し驚いたような顔をした。高等部から途中入学するような公爵令嬢が、身分が下の者に軽く礼をしたのがそんなに珍しいんだろうか。残念ながらそんなプライドは前の人生で使い切ってしまっている。
「生徒の数も多いでしょうに、皆にこんな出迎えをしているんですか?」
私と同じく頭を下げていたディランがそう不思議そうに、遠慮がちに問いかけた。教員は嫌な顔をすることなくにこやかに笑みを返す。
「教員の数も多いですからね、今はまだ始まっていませんし」
差別や偏見を強く持っていそうな年代の大人と普通に会話できたことが余程嬉しいのか、ディランの顔は明るい。思ったより学園は彼にとってもいい環境なのかもしれない。
「……一部の者のせいで色々大変でしょうが、頑張ってくださいね。こちら学園の地図です。食堂や図書室は開いてますのでご自由にお過ごしください」
そう言って礼をしつつ教員は去っていく、忙しいのかどこか足早だ。さすがに地図はなくても学園のなんとなくの地理は覚えているが、一応確認のためにざっと目を通した。やはり記憶通り、寮と校舎と正門のちょうど間くらいの位置に食堂がある。
「皆、あんないい人なんでしょうか……」
「そうだといいわね」
「はい」
彼の嬉しそうな顔を見るのは私も嬉しい。
使用人間の彼への暴力やいじめは私の働きでなくなっていたが、おそらくそれでも彼が嫌われているのは変わっていなかったはずだ。
カイロスなど、ディランと同年代の柔軟性のある若い使用人たちとは友人になれていたみたいだが、ベテランで思考が凝り固まった年のいった使用人たちから差別や嫌悪を取り除くのは難しいことだから。
それに、スケープゴートはどの集団にも生まれてしまうものだ。ディランがこの学園で、環境や人に恵まれるといいけど。
「ああそうだわ。喜びなさい、ここの食堂はラム肉のステーキが美味しいわよ~」
「えっ本当ですか。それは楽しみですね」
成長しても好きな物は変わらないらしい。私は少し笑って、食堂へと足を進めた。この時間帯ならあまり人もいないだろう。
私が前の人生の記憶を辿りながら食堂の当たりメニューとハズレメニューの解説を続けると、ディランもそれにつられて笑ってくれる。ご飯の情報は大事だ。
何気ない会話を楽しみながら歩を進めていくと、あっという間に食堂へついてしまう。ガラス張りになっているドアを開けると、読み通り人は少ないようだった。
「……お嬢様、あれ……」
ディランの視線を追う。
……そこには、一人の少女がいた。隅に座って1人で食事をとっているその少女はおそらく同い年くらいだろう。
少し陰気な空気を漂わせてはいるが遠目で見ても顔立ちが整っていることが分かる。
何よりその少女は、ディランと同じ艶やかな黒髪をしていた。
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おかえりなさいませ。
更新再開ありがとうございます。嬉しいです。
学園編もすごく楽しみ~♪
お忙しいとは思いますが続きお待ちしております。
応援していますね😃
感想ありがとうございます!
近況ボードへのコメントも本当にありがとうございました……♪応援とても励みになります😊
できるだけ毎日更新できるようがんばります!
お読み頂きありがとうございました……🎶
感想ありがとうございます!
そう言って頂けてとても嬉しいです……!最近更新が不定期になってしまっていて、とても申し訳ないです……💦最後まで見届けて貰えるようがんばります。
お読み頂きありがとうございました♪
感想ありがとうございます!
姉は良い人というか、書いてある通りのただの愚かな人ですね。愚かだからこそ優しい行動も馬鹿な行動も軽率にとってるイメージです。
中だるみしてしまってるのは私の文章力不足ですね……申し訳ないです。精進していけるよう頑張ります。
お読み頂きありがとうございました(^-^)