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手助けしてみた。されてみた。

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「遥香ちゃん、ごめんなさいって謝るからこの事は千絵ちゃんには内緒で。本当に嫌われたくないの」

 良孝の言葉を聞いた遥香が笑いながらもフォローを入れる。

「大丈夫ですよ。じゃあ、私も秘密を少し教えますね。絶対に千絵には内緒ですよ。私から見るとヨッシーさんは脈ありです。千絵の友達として態度でわかります。だから頑張ってください」
「マジで? 俺、超頑張るよ! 本当に、本当に頑張るよ!」

 テンションが上がり、大きくなった良孝の声が車の中に響き渡る。そんな良孝に鳳斗が水を差した。

「うるせぇよ。リア充、死ね! ふくらはぎ、爆発しろ! そしてさっさと用件を言え。切るぞ」
「冷たっ! モテナイ同盟の会長、副会長の仲じゃん」
「はあ? そんな同盟を組んだ覚えも無ければ、副会長になった覚えも無いわ」
「アホだ、アホだとは思っていたが、この流れも読めないぐらいアホだったか。会長は鳳斗、お前に決まっている」
「切るぞ」

 鳳斗と良孝の会話で遥香が声を殺しながら、涙目で笑っている。

「ちょっと待て~い。せっかくプレゼントをやろうと電話してやったのに、そういう態度に出るならやらんぞ」
「くれる物による。プレゼントの中身を早く言え」
「なんで貰う方が上から目線なんだよ。それはだな……サッカー観戦チケットだ~!」
「切るぞ」
「待て~い!」

 さらに大きな声で良孝が鳳斗を呼び止める。鳳斗がため息をつきながら返事をする。

「なんなんだよ」
「今日の試合だぞ。今から行けるぞ。デートにはもってこいじゃん」
「なんで自分で行かないんだよ。それこそ千絵ちゃんを誘って行けばいいだろが」
「千絵ちゃん、バイト……断られた」
「な、なんかすまん」
「で、俺も行く気が無くなった。お前は遥香ちゃんと今からの予定は立てているのか?」
「……予定、ない」
「やっぱりな。さすがの鳳斗クオリティー」
「なんでお前の俺への信用感はゼロなんだよ!」

 しかし図星をつかれ、鳳斗は何も言えなくなる。そのタイミングで、電話口から良孝がたたみ掛ける。

「遥香ちゃんはサッカー見たくない? 映画の勉強にもなるかもよ」

 良孝のその言葉を聞いた鳳斗は、隣に座る遥香を見てみた。遥香は目を輝かせながら、自分の気持ちを鳳斗に伝える。

「行ってみたいです。私、サッカーを生観戦した事無いですし、私、気になります」
「深夜アニメでそんな台詞を聞いた事があるけど、とりあえず俺はツッコまない。でも、まあ、遥香さんがそう言うなら」

 多分、千絵ちゃんと行くためにチケットを用意したんだろうな。……ぷっ、ざま~! 日頃の行いが悪いから千絵ちゃんに断られるんだよ。口に出して直接ヨッシーには言わないけどね。
 こいつ、見かけによらず傷つきやすいんだよね。

「で、どこにチケットはどこに取りに行けばいいんだ? タダで良いのか?」
「今回に限り、無料で譲ってやろう。その代わり、お願いしますは?」
「はあ?」

 電話口から聞こえてくる良孝の言葉に思わず鳳斗が疑問の声を上げる。

「お父さんやお母さんから習わなかったか? 人に頼む時はお願いしますって言わないといけないって」
「くっ! なんじゃそりゃ」
「タダだよ。無料だよ。遥香ちゃんが行きたいって言っているんだよ。この場合の『行きたい』は『イキたい』じゃないからな」
「字面でしか分からんような核弾頭レベルの下ネタを唐突にぶち込んでくるんじゃねぇ。完全に幸が乗り移ってんじゃねぇか」

 軽い屈辱を受け、鳳斗は迷った。
 だがしかし、隣の遥香を横目で見てみると、鳳斗と良孝のやり取りに笑いながらも物凄く行きたそうな顔をしていた。

「ちっ、なんたる屈辱」

 そんな寂しそうな表情をされたら惚れちゃうよ。そういう表情は好きな人の前で作りなさい。好きになっちゃうでしょ。恋愛ネガティブマイスターの俺じゃなかったら勘違いしてるよ。
 
 諦めた表情でため息を付きながら「お願いします。そのチケットをどうか譲ってください」とかなりの棒読みで鳳斗が良孝に頼み込んだ。

 その声を聞いた良孝は満足げな声で

「全然気持ちがこもってない様に聞こえるが、まあいいや。家まで取りに来い。今からなら全然間に合うからよ」

 と言って電話を切る。

 良孝の返答を聞いた鳳斗は目的地を変え、車を走らせる。助手席でサッカー観戦に胸を躍らせ、目を輝かせる遥香だった。
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