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合宿地に向け出発しようとゲシュペンストの選手達が名古屋駅に着いた。
もちろん、その中に圭吾もいた。平日だと言う事もあり、サポーターの集まりも少ない。サインや写真を求められ、新幹線の時間までそれに応じる選手達。
当然、主力の圭吾もサインや写真を求められた。新幹線の時間が迫り、そろそろ出発時間となる。チームメイトから「圭吾、そろそろだぞ」と声が掛かる。
サポーターからも
「頑張ってください」
「降格しないと信じてます」
などと声が掛かる。
「頑張ります。降格しません」
と、圭吾はサポーター達に声をかけ、改札口に向かおうとした瞬間、圭吾の目に美月の姿が飛び込んできた。少し離れた距離で圭吾を見つめる眼差し。無理に作っている悲しそうな作り笑顔。
自分の好きな異性がそこに立っていた。美月は圭吾に少しずつ近寄ってくる。
そして
「読んでください」
そう言って手紙を圭吾に手渡し、走り去っていった。後を追いたい気持ちが圭吾を支配しそうになる。
しかし、圭吾には出来なかった。出来るわけがなかった。
目で美月の追うことが今の圭吾に出来る精一杯の行動だった。
「これにて合宿は終わる。後半戦に成果が出るように祈っている」
監督のこの言葉で強化合宿が終了となった。明日、チームは愛知に帰ることになる。
合宿が終わるまでは美月の手紙は読まないと誓っていた。手紙を読むとサッカーに集中出来なくなる事を圭吾は恐れた。
読めば美月のことを考えてしまう。わざわざ気持ちを乱すことはない。圭吾は合宿中、走りまくった。
何もかも忘れ、必死に、ただがむしゃらに走った。
しかし、美月のことを忘れることは出来ずにいる。
自分がこんなに女々しい男だとは思ってもなかった。部屋に戻り、ルームメイトの田代がいない間に美月の手紙を読むことに決めた圭吾。
手紙を広げようとするが、手が震える。心臓の音が隣の部屋にいる人に聞こえるんじゃないかと思うぐらい鼓動する。
意を決し、美月の手紙に目を通し始めた。
「メールだと長くなりそうですし、圭吾君の気遣いを無駄にしたくないので手紙を書くことにしました。
彼氏が出来た事を隠していてごめんなさい。
隠すつもりじゃなかったけど、結果的に隠す事になってしまいました。
でも、彼氏が出来ても圭吾君を応援する気持ちは全然変わりません。
私は圭吾君の中で自分はだけは特別なサポーターとだと思ってしまいました。
けど、圭吾君の中ではどこにでもいる、誰とも変わらないサポーターですよね。
たくさんいる圭吾君のファンの1人ですよね。
圭吾君はこれからゲシュペンストで、オリンピックで活躍する人。
そして世界へ羽ばたいていく人だと私は思っています。
私はただの高校生。
住んでいる世界が違いますよね。
少しでも圭吾君との距離が縮んで嬉しかったです。
これからも圭吾君を見続けていこうと思っています。
しっかり応援したいと思っています。
私の大好きな圭吾君のプレーを見せてください。
真剣で、本気で、楽しんでサッカーをしている圭吾君が大好きです。
これからも圭吾君の活躍を祈っています。
美月より」
手紙に美月の涙の後があった。
そして何回も書き直した形跡もあった。圭吾も手紙を読みながら泣いていた。美月の気持ちを知らず、酷い事していた自分を責めずにはいられなかった。
もう、時は戻らない。
笑いあえた2人の関係はもうどこにもない。圭吾にとっても、特別なサポーターは普通のサポーターになってしまった。
素直に美月と彼氏の幸せを願う事は出来ない小さな男。
圭吾の出来る残された事。
最高のサッカーを、最高のプレーを美月に見せること。
星を見ながら圭吾は美月に最後となる誓いをした。
もちろん、その中に圭吾もいた。平日だと言う事もあり、サポーターの集まりも少ない。サインや写真を求められ、新幹線の時間までそれに応じる選手達。
当然、主力の圭吾もサインや写真を求められた。新幹線の時間が迫り、そろそろ出発時間となる。チームメイトから「圭吾、そろそろだぞ」と声が掛かる。
サポーターからも
「頑張ってください」
「降格しないと信じてます」
などと声が掛かる。
「頑張ります。降格しません」
と、圭吾はサポーター達に声をかけ、改札口に向かおうとした瞬間、圭吾の目に美月の姿が飛び込んできた。少し離れた距離で圭吾を見つめる眼差し。無理に作っている悲しそうな作り笑顔。
自分の好きな異性がそこに立っていた。美月は圭吾に少しずつ近寄ってくる。
そして
「読んでください」
そう言って手紙を圭吾に手渡し、走り去っていった。後を追いたい気持ちが圭吾を支配しそうになる。
しかし、圭吾には出来なかった。出来るわけがなかった。
目で美月の追うことが今の圭吾に出来る精一杯の行動だった。
「これにて合宿は終わる。後半戦に成果が出るように祈っている」
監督のこの言葉で強化合宿が終了となった。明日、チームは愛知に帰ることになる。
合宿が終わるまでは美月の手紙は読まないと誓っていた。手紙を読むとサッカーに集中出来なくなる事を圭吾は恐れた。
読めば美月のことを考えてしまう。わざわざ気持ちを乱すことはない。圭吾は合宿中、走りまくった。
何もかも忘れ、必死に、ただがむしゃらに走った。
しかし、美月のことを忘れることは出来ずにいる。
自分がこんなに女々しい男だとは思ってもなかった。部屋に戻り、ルームメイトの田代がいない間に美月の手紙を読むことに決めた圭吾。
手紙を広げようとするが、手が震える。心臓の音が隣の部屋にいる人に聞こえるんじゃないかと思うぐらい鼓動する。
意を決し、美月の手紙に目を通し始めた。
「メールだと長くなりそうですし、圭吾君の気遣いを無駄にしたくないので手紙を書くことにしました。
彼氏が出来た事を隠していてごめんなさい。
隠すつもりじゃなかったけど、結果的に隠す事になってしまいました。
でも、彼氏が出来ても圭吾君を応援する気持ちは全然変わりません。
私は圭吾君の中で自分はだけは特別なサポーターとだと思ってしまいました。
けど、圭吾君の中ではどこにでもいる、誰とも変わらないサポーターですよね。
たくさんいる圭吾君のファンの1人ですよね。
圭吾君はこれからゲシュペンストで、オリンピックで活躍する人。
そして世界へ羽ばたいていく人だと私は思っています。
私はただの高校生。
住んでいる世界が違いますよね。
少しでも圭吾君との距離が縮んで嬉しかったです。
これからも圭吾君を見続けていこうと思っています。
しっかり応援したいと思っています。
私の大好きな圭吾君のプレーを見せてください。
真剣で、本気で、楽しんでサッカーをしている圭吾君が大好きです。
これからも圭吾君の活躍を祈っています。
美月より」
手紙に美月の涙の後があった。
そして何回も書き直した形跡もあった。圭吾も手紙を読みながら泣いていた。美月の気持ちを知らず、酷い事していた自分を責めずにはいられなかった。
もう、時は戻らない。
笑いあえた2人の関係はもうどこにもない。圭吾にとっても、特別なサポーターは普通のサポーターになってしまった。
素直に美月と彼氏の幸せを願う事は出来ない小さな男。
圭吾の出来る残された事。
最高のサッカーを、最高のプレーを美月に見せること。
星を見ながら圭吾は美月に最後となる誓いをした。
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