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失って気付く事
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圭吾は美月にメールをした後、携帯をテーブルに放り投げた。
応援してくれる笑顔。自分を見つめてくれる眼差し。メールや電話での真剣な応援。
全て自分に向けたものだった。
美月が他の男に想いを寄せるなんて少しも思っていなかった。
なぜ、メールをしていた?
なぜ電話していた?
どうして弱い自分を見せれた?
(美月だから)
全てに気付くのが遅かった。
公園での出来事以来、美月に振り向いてもらえるようにメールし続けた。女性として意識し始めた。彼女にずっとそばにいてほしいと思い始めていた。
美月は女性なのだ。自分以外の誰かを好きになることもあるのだ。逆に告白されることもある。
なぜそんな簡単なことに今まで気づかなかったのか。美月のラボーラのブログでは一言も書かれてなかった。ほんのわずかな望みに賭け、美月にメールした。
しかし、返事は未だに返ってこない。
(否定しないって事は彼氏だってことだ)
圭吾の中の何かが切れた。自然に涙が頬をつたわる。
失った・・・
大切な何かを失った・・・
心の中の喪失感が圭吾の中で大きくなっていく・・・
「おぉぉぉぉぉ」
圭吾は叫んだ。
何もかも振り払うように頬を伝う涙を拭きもせず、自分の失ったものの大きさを実感した。
ファン感謝祭の次の日。圭吾はチームの練習を休んだ。足の筋肉に張りがあると嘘をついた。
明日からはチームは短期合宿に入る。
それまでにテンションとコンデションを上げなければならない。こんな気持ちではチームに迷惑をかける。
圭吾は何よりも自分自身が許せなかった。J2降格は絶対に避けなければならない。
降格となれば悲しむのはサポーターであり、美月なのだ。
(1日だけ)
クラブハウスで軽めの運動をし、明日からの合宿に備える圭吾。
そこにチームメイトの杉田が入ってきた。
「どうした?圭吾」
「ちょっと足に違和感が合って」
「そっか。」
杉田が何も無かったかのように横に座り荷物を詰め始める。そして杉田が圭吾に話し始めた。
「なんとか降格圏外に行こうぜ」
「あぁ」
「でも、何とかなるだろう。気楽にやろうぜ」
この言葉に対し、圭吾の中で何かが弾ける。圭吾は気付いたら大声を出し、杉田の胸ぐらを掴み掛かっていた。
「そんなんだから」
圭吾のどこにも吐き出せない気持ちが爆発した。それを見た他のチームメートが止めにかかる。
「おい、圭吾。どうした」
「落ち着けって、なんかあったのか?」
杉田の服から手を離す圭吾。
そして
「いや、ごめん。杉君。ちょっと疲れてて」
素直に謝る圭吾に杉田は「大丈夫か?」と声をかけた。
「大丈夫。ごめん、今日は帰るわ。お先」
と、声を振り絞りクラブハウスを出る圭吾。
大きく大切な物を失った圭吾の心の穴を埋めるのはサッカーしかなかった。
応援してくれる笑顔。自分を見つめてくれる眼差し。メールや電話での真剣な応援。
全て自分に向けたものだった。
美月が他の男に想いを寄せるなんて少しも思っていなかった。
なぜ、メールをしていた?
なぜ電話していた?
どうして弱い自分を見せれた?
(美月だから)
全てに気付くのが遅かった。
公園での出来事以来、美月に振り向いてもらえるようにメールし続けた。女性として意識し始めた。彼女にずっとそばにいてほしいと思い始めていた。
美月は女性なのだ。自分以外の誰かを好きになることもあるのだ。逆に告白されることもある。
なぜそんな簡単なことに今まで気づかなかったのか。美月のラボーラのブログでは一言も書かれてなかった。ほんのわずかな望みに賭け、美月にメールした。
しかし、返事は未だに返ってこない。
(否定しないって事は彼氏だってことだ)
圭吾の中の何かが切れた。自然に涙が頬をつたわる。
失った・・・
大切な何かを失った・・・
心の中の喪失感が圭吾の中で大きくなっていく・・・
「おぉぉぉぉぉ」
圭吾は叫んだ。
何もかも振り払うように頬を伝う涙を拭きもせず、自分の失ったものの大きさを実感した。
ファン感謝祭の次の日。圭吾はチームの練習を休んだ。足の筋肉に張りがあると嘘をついた。
明日からはチームは短期合宿に入る。
それまでにテンションとコンデションを上げなければならない。こんな気持ちではチームに迷惑をかける。
圭吾は何よりも自分自身が許せなかった。J2降格は絶対に避けなければならない。
降格となれば悲しむのはサポーターであり、美月なのだ。
(1日だけ)
クラブハウスで軽めの運動をし、明日からの合宿に備える圭吾。
そこにチームメイトの杉田が入ってきた。
「どうした?圭吾」
「ちょっと足に違和感が合って」
「そっか。」
杉田が何も無かったかのように横に座り荷物を詰め始める。そして杉田が圭吾に話し始めた。
「なんとか降格圏外に行こうぜ」
「あぁ」
「でも、何とかなるだろう。気楽にやろうぜ」
この言葉に対し、圭吾の中で何かが弾ける。圭吾は気付いたら大声を出し、杉田の胸ぐらを掴み掛かっていた。
「そんなんだから」
圭吾のどこにも吐き出せない気持ちが爆発した。それを見た他のチームメートが止めにかかる。
「おい、圭吾。どうした」
「落ち着けって、なんかあったのか?」
杉田の服から手を離す圭吾。
そして
「いや、ごめん。杉君。ちょっと疲れてて」
素直に謝る圭吾に杉田は「大丈夫か?」と声をかけた。
「大丈夫。ごめん、今日は帰るわ。お先」
と、声を振り絞りクラブハウスを出る圭吾。
大きく大切な物を失った圭吾の心の穴を埋めるのはサッカーしかなかった。
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