20 / 42
相談
しおりを挟む
帰宅してから美月の頭の中に祐介の言葉がリフレインされる。
(気になる人)・・・か。
気になる人なら美月にだっている。近いようで遠い存在。美月にとって圭吾はまさにそんな存在だった。
しかし、圭吾の立場からは自分はサポーターでしかないのだ
机に座り、練習場で圭吾と2人で撮った写真を見ながら思い悩む。
そんな時、美月の部屋をノックする音と共に姉の「入るよ~」の声がした。
「うん」
美月は力なく返事をする。姉は美月の部屋に入ってくるなり、少し興奮して美月に話しかけた。
「今日はどうだった? 何か言われたの?」
「・・・うん」
美月は祐介との食事での出来事を全て姉に話した。姉はいつものように黙って美月の話を聞いてくれた。
話を聞き終わった姉が、優しい声で聞いてきた。
「ふ~ん、で、美月はどうしたいの?」
「どうしたいって言われても」
まだ美月は姉に圭吾の事を伝えてはいない。圭吾がいるから祐介との恋愛を考えられないでいる。そんな美月の心を見透かしたように姉が口を開いた。
「いつまでも圭吾君~って言っていても仕方ないでしょ」
美月はその言葉に心臓が飛び跳ねる。さらに姉は続けて
「とりあえずの彼氏でいいじゃない? 恋愛ごっこしてみたら?」
「えっ、好きでもない人と?」
「んじゃ、嫌いなの?」
「別に嫌いじゃないけどさ」
未だに迷っている美月。そんな美月の様子を見て姉は優しく語り掛けるように美月に話をし始めた。
「あのね、美月。恋愛は白か黒か、YesかNoかってすぐ決めなきゃいけないものじゃないよ。付き合っていく内に好きになるかもしれない。嫌いになるかもしれない。でも、それは一杯会って、一杯話をして、初めてわかること。この人だ)って思ってから本当の恋愛が始まるの。ほとんどの人がそうなの。美月が圭吾君のことが好き、ってのは、私が1番知ってる。でもね、あの人はJリーガーだよ。住んでいる世界の違う人だよ。その道下さんだっけ? 優しそうな人じゃん。いい人みたいじゃん。ちゃんと美月の逃げ場所を用意してくれてるよ。断ってもいいようにしてくれてる。美月を傷つけないように考えてくれてる。とりあえずの彼氏って思ってみたらどう?その代わり、美月はちゃんと一ヶ月は彼氏としてみてあげること。ダメな時にはちゃんと断る事。わかった?」
美月は姉の話を聞いて逆に質問してみた。
「お姉ちゃん、今の彼氏って確か告白されたんだよね? 始めは好きじゃなかったの?」
「私? 私は友達だったから。でも、恋愛意識は持ってなかった」
「付き合ってから好きになったの?」
「う~ん、いつ好きになったかはわからないな。でも気付いたら好きになってた」
照れながら美月の大好きな姉はそう言った。
「人なんてどんなことで好きになるかわからないよ」
そこまで言うと姉は立ち上がり、美月の部屋から出ようとした。
部屋を出る時、
「でもね、最終的に決めるのは美月だよ。私は美月に幸せになってほしいって思ってるよ」
と付け加えた。
優しい姉の言葉に対し、圭吾の事を言おうとしたがまだ言えずにいた。美月は部屋に張ってある圭吾のポスターを見つける。
(もっと違う立場で出会えてたらどんな風になっていただろう)
そんな思いにふけっていると美月の携帯にメールが届いた。
美月が携帯を開くとメールは2件届いていた。
ひとつは祐介から。もうひとつは圭吾からであった。
美月はどちらからのメールを開くか悩んだが、とりあえず祐介のメールから開いた。
「今日は一緒に見に行ってくれてありがとね。返事はゆっくり考えてくれていいから。んじゃ、またメールします。
迷惑だったら言ってください。」
そして「おやすみなさい。試合が悪夢だったからいい夢を見てくださいね。」付け加えられていた。
祐介の心遣いが逆に美月を苦しめる。
(早く結論出さないといけないよね)
ずっとこのまま、祐介を待たせるわけにはいかない。しかし、圭吾を好きだと言う気持ちが消えない。
そんな気持ちの中、美月は意を決して圭吾のメールを開いた。
「ごめん。途中交代してしまいました。次は頑張るから、また友達や家族を誘って試合に来て応援してね」
美月はメールを見て少しばかり落ち込んだ。
やはり自分は圭吾にとって沢山のサポーターの中の1人でしかない。メールからは少しの愛情も伝わってこない。
(期待する方がおかしいんだよね)
しかし、自分の気持ちは祐介より圭吾の方に向いているのは間違いない。
こんな気持ちで祐介と形式だけとは言え、彼氏彼女になっていいのか?
ちゃんと祐介を彼氏として見れるのか?
好きな人がいるのに、こんな気持ちで祐介は納得してくれるのか?
恋愛経験のない自分にはまったくわからない。布団に入ったが、まったく眠れない。
美月にとって初めて圭吾にメールを返信しなかった日となってしまった。
(気になる人)・・・か。
気になる人なら美月にだっている。近いようで遠い存在。美月にとって圭吾はまさにそんな存在だった。
しかし、圭吾の立場からは自分はサポーターでしかないのだ
机に座り、練習場で圭吾と2人で撮った写真を見ながら思い悩む。
そんな時、美月の部屋をノックする音と共に姉の「入るよ~」の声がした。
「うん」
美月は力なく返事をする。姉は美月の部屋に入ってくるなり、少し興奮して美月に話しかけた。
「今日はどうだった? 何か言われたの?」
「・・・うん」
美月は祐介との食事での出来事を全て姉に話した。姉はいつものように黙って美月の話を聞いてくれた。
話を聞き終わった姉が、優しい声で聞いてきた。
「ふ~ん、で、美月はどうしたいの?」
「どうしたいって言われても」
まだ美月は姉に圭吾の事を伝えてはいない。圭吾がいるから祐介との恋愛を考えられないでいる。そんな美月の心を見透かしたように姉が口を開いた。
「いつまでも圭吾君~って言っていても仕方ないでしょ」
美月はその言葉に心臓が飛び跳ねる。さらに姉は続けて
「とりあえずの彼氏でいいじゃない? 恋愛ごっこしてみたら?」
「えっ、好きでもない人と?」
「んじゃ、嫌いなの?」
「別に嫌いじゃないけどさ」
未だに迷っている美月。そんな美月の様子を見て姉は優しく語り掛けるように美月に話をし始めた。
「あのね、美月。恋愛は白か黒か、YesかNoかってすぐ決めなきゃいけないものじゃないよ。付き合っていく内に好きになるかもしれない。嫌いになるかもしれない。でも、それは一杯会って、一杯話をして、初めてわかること。この人だ)って思ってから本当の恋愛が始まるの。ほとんどの人がそうなの。美月が圭吾君のことが好き、ってのは、私が1番知ってる。でもね、あの人はJリーガーだよ。住んでいる世界の違う人だよ。その道下さんだっけ? 優しそうな人じゃん。いい人みたいじゃん。ちゃんと美月の逃げ場所を用意してくれてるよ。断ってもいいようにしてくれてる。美月を傷つけないように考えてくれてる。とりあえずの彼氏って思ってみたらどう?その代わり、美月はちゃんと一ヶ月は彼氏としてみてあげること。ダメな時にはちゃんと断る事。わかった?」
美月は姉の話を聞いて逆に質問してみた。
「お姉ちゃん、今の彼氏って確か告白されたんだよね? 始めは好きじゃなかったの?」
「私? 私は友達だったから。でも、恋愛意識は持ってなかった」
「付き合ってから好きになったの?」
「う~ん、いつ好きになったかはわからないな。でも気付いたら好きになってた」
照れながら美月の大好きな姉はそう言った。
「人なんてどんなことで好きになるかわからないよ」
そこまで言うと姉は立ち上がり、美月の部屋から出ようとした。
部屋を出る時、
「でもね、最終的に決めるのは美月だよ。私は美月に幸せになってほしいって思ってるよ」
と付け加えた。
優しい姉の言葉に対し、圭吾の事を言おうとしたがまだ言えずにいた。美月は部屋に張ってある圭吾のポスターを見つける。
(もっと違う立場で出会えてたらどんな風になっていただろう)
そんな思いにふけっていると美月の携帯にメールが届いた。
美月が携帯を開くとメールは2件届いていた。
ひとつは祐介から。もうひとつは圭吾からであった。
美月はどちらからのメールを開くか悩んだが、とりあえず祐介のメールから開いた。
「今日は一緒に見に行ってくれてありがとね。返事はゆっくり考えてくれていいから。んじゃ、またメールします。
迷惑だったら言ってください。」
そして「おやすみなさい。試合が悪夢だったからいい夢を見てくださいね。」付け加えられていた。
祐介の心遣いが逆に美月を苦しめる。
(早く結論出さないといけないよね)
ずっとこのまま、祐介を待たせるわけにはいかない。しかし、圭吾を好きだと言う気持ちが消えない。
そんな気持ちの中、美月は意を決して圭吾のメールを開いた。
「ごめん。途中交代してしまいました。次は頑張るから、また友達や家族を誘って試合に来て応援してね」
美月はメールを見て少しばかり落ち込んだ。
やはり自分は圭吾にとって沢山のサポーターの中の1人でしかない。メールからは少しの愛情も伝わってこない。
(期待する方がおかしいんだよね)
しかし、自分の気持ちは祐介より圭吾の方に向いているのは間違いない。
こんな気持ちで祐介と形式だけとは言え、彼氏彼女になっていいのか?
ちゃんと祐介を彼氏として見れるのか?
好きな人がいるのに、こんな気持ちで祐介は納得してくれるのか?
恋愛経験のない自分にはまったくわからない。布団に入ったが、まったく眠れない。
美月にとって初めて圭吾にメールを返信しなかった日となってしまった。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
夫を愛することはやめました。
杉本凪咲
恋愛
私はただ夫に好かれたかった。毎日多くの時間をかけて丹念に化粧を施し、豊富な教養も身につけた。しかし夫は私を愛することはなく、別の女性へと愛を向けた。夫と彼女の不倫現場を目撃した時、私は強いショックを受けて、自分が隣国の王女であった時の記憶が蘇る。それを知った夫は手のひらを返したように愛を囁くが、もう既に彼への愛は尽きていた。
壊れた心はそのままで ~騙したのは貴方?それとも私?~
志波 連
恋愛
バージル王国の公爵令嬢として、優しい両親と兄に慈しまれ美しい淑女に育ったリリア・サザーランドは、貴族女子学園を卒業してすぐに、ジェラルド・パーシモン侯爵令息と結婚した。
政略結婚ではあったものの、二人はお互いを信頼し愛を深めていった。
社交界でも仲睦まじい夫婦として有名だった二人は、マーガレットという娘も授かり、順風満帆な生活を送っていた。
ある日、学生時代の友人と旅行に行った先でリリアは夫が自分でない女性と、夫にそっくりな男の子、そして娘のマーガレットと仲よく食事をしている場面に遭遇する。
ショックを受けて立ち去るリリアと、追いすがるジェラルド。
一緒にいた子供は確かにジェラルドの子供だったが、これには深い事情があるようで……。
リリアの心をなんとか取り戻そうと友人に相談していた時、リリアがバルコニーから転落したという知らせが飛び込んだ。
ジェラルドとマーガレットは、リリアの心を取り戻す決心をする。
そして関係者が頭を寄せ合って、ある破天荒な計画を遂行するのだった。
王家までも巻き込んだその作戦とは……。
他サイトでも掲載中です。
コメントありがとうございます。
タグのコメディに反対意見が多かったので修正しました。
必ず完結させますので、よろしくお願いします。
ある辺境伯の後悔
だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。
父親似だが目元が妻によく似た長女と
目元は自分譲りだが母親似の長男。
愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。
愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした
ましゅぺちーの
恋愛
王国の名門公爵家の出身であるエレンは幼い頃から婚約者候補である第一王子殿下に全てを捧げて生きてきた。
彼を数々の悪意から守り、彼の敵を排除した。それも全ては愛する彼のため。
しかし、王太子となった彼が最終的には選んだのはエレンではない平民の女だった。
悲しみに暮れたエレンだったが、家族や幼馴染の公爵令息に支えられて元気を取り戻していく。
その一方エレンを捨てた王太子は着々と破滅への道を進んでいた・・・
伝える前に振られてしまった私の恋
メカ喜楽直人
恋愛
母に連れられて行った王妃様とのお茶会の席を、ひとり抜け出したアーリーンは、幼馴染みと友人たちが歓談する場に出くわす。
そこで、ひとりの令息が婚約をしたのだと話し出した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる