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応援の旗

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 今日はミストラル神戸戦。
 美月はいつものようにホームのゴール裏に陣取った。
「フラッグ見てくれるといいね」
 美月と一緒に来た友達が笑顔で美月に話しかけてくる。友達には言ってないが美月は見てくれると確信していた。
 メールで返ってきた圭吾からの返事。
(必ず探すから)
 その言葉を信じ、美月は目一杯大きく姉と一緒に作ったゲームフラッグをあげた。
 美月にとっては今までのフラッグは今までとは違い、力作で自分自身も満足する出来栄えだった。ゲシュペンストの勝利を信じて、圭吾の活躍を信じて、美月は作ってきたフラッグを高々と掲げた。
 しかし、ゲシュペンストの調子ははっきり言って良くはない。
 ここ8試合に勝ちがない状態。
 サポーターの怒りも徐々に大きくなりつつあり、前々回のホームの試合ではサポーターが選手の乗ったバスを囲み、動けなくするという騒動まで起こっている。
 そんな状態だからこそ美月はしっかり応援すると心に決めていた。

 どの選手だって、石川選手だって負ける為に試合をしているわけじゃない! 
 どっちのチームも勝ちたいから名勝負や感動が生まれるんじゃない。そりゃ贔屓しているチームが快勝すれば嬉しいのは凄く分かるし、負ければ凄く悔しいのも分かる。当然、応援している私たちも真剣に応援している。
 だからこそ選手たちには勝利をもぎ取って、最高の喜びを選手たちと分かち合いたい
 勝利をもぎ取るために最大限の努力をしているはず。
 でも、勝負の世界だから勝つチームがあれば負けるチームもある。試合内容では決して負けてはいない。ただ結果がついてきていない。
 しょうがないじゃん! サッカーってさ、そういうものじゃないの?
 今日は結果が出ますように

 自分に出来ることは祈る事、応援する事。ゲシュペンストが勝利する事を信じ、美月は応援団と一緒に声を出した。
選手たちがピッチに登場し、アップが始まる。圭吾を見つけた美月は大きな声で、その名を叫んだ。


中央で練習する圭吾の目には美月のフラッグを発見出来ずにいた。
 応援団から圭吾の応援歌が流れる。声援に応えるように手を振る。
 その時にも探してみるがやはり美月のゲームフラッグは見当たらない。
 と言うか、色んなゲームフラッグが立っていてどれが美月のゲームフラッグかわからない状態であった。

 これは無理。しょうがないか。これだけ色んな旗があったら分かんねぇ。
 俺、あんまり旗とか見ないし。旗が多いからって試合にかてるわけじゃないし。本当に来てくれているかもわからないし……
 よし、探したけど分からなかったって正直にメールしよう。

 圭吾は気持ちを試合に切り替えた。
 浮ついた気持ちでは負けてしまう。
 本当に来てくれているなら情けない試合は見せたくない。恋心ではないが、カッコいい自分を見せたい。
 そしてネットのラボーラになんて書いてくれるか、読んでみたい。
(今日は絶対に勝つ!)
 圭吾は今日だけは美月の言ったようにサポーターの為にプレーしようと思い、気合を入れ直した。
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