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出会い
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日本代表候補でもあり、U―22代表でもある石川圭吾は早朝ランニング中、昨日のクラブハウスの事を思い出していた。
今日は同じゲシュペンストの選手の杉田や津島が名古屋のデパートイベントでサイン&握手会をする。
「圭吾、暇なら見に来いよ。終わったら飯でも食べに行こうぜ」
「俺がサポーターの子に見つかったらスギ君に握手を求める人がいなくなっちゃうよ」
「いいじゃん、サプライズで。ファンが喜ぶなら俺はコスプレしてサイン会に出席してもいいぜ」
杉田がこう言うと周りにいたゲシュペンストの選手達が大爆笑した。
良い雰囲気……なんだよな。最近、負けが込んできているけど大丈夫そうだ。みんなの顔に悲壮感はないし明るい表情が見える。このリーグ中断期間が浮上のきっかけになるように頑張らないとな。俺の出来がゲームの勝敗を左右する。やれる自信はあるんだ。あとは結果だけ。どんな形でもいいから結果を出す!
で、杉君と飯か。どうせ、暇だし。スギ君と飯を食いながら、サッカー談義でもしますかね。お互い彼女もいないし、寂しく1人で飯を食うなら誰かと食べた方が美味しいに決まっているし。
そう思った圭吾は自宅に帰るとすぐに着替えをし始めた。自分はプロのサッカー選手とはいえ、普段、町で歩いていてもそうそう声を掛けられるわけじゃない。
(そこまでカッコつけることもない)
Tシャツとジーパンに着替え、イベント会場に向かうと、ゲシュペンストサポーターと見て分かる人たちがたくさん並んでいた。
遠巻きで会場を見てみると数百人の列が並んでいる。
その様子を見て圭吾は時間がかかりそうだと思い、デパートの中をうろつくことにした。
買い物していれば時間ぐらいすぐ過ぎるだろ。その辺をうろついてい時間でも潰しますかね。と思っていた俺はとんでもなく甘かった。ショートケーキにメイプルシロップをかけ、その上に練乳をかけるぐらい甘かった。
そんなに有名になった自覚はない。断言できる。だけど、思い知らされたね。ゲシュペンストサポーターがたくさんいる所でうろつくなんて無謀だった。後悔先に立たずってこういう事を言うんだね。
握手会を終えたサポーターに見つけられた圭吾。その場で握手やサインを求められてくる。
(ヤバイ、昨日の笑い話が本当になる)
圭吾を中心に人の輪が出来始め、どんどんと人が増えていく。握手会を終えたサポーターがそのままこちらに流れているようだった。
必死に応援してくれるサポーターを邪険に扱う事も出来ず、何枚かサインをするが一向に人の列が途切れる事がない。
やっべ。このままだと俺の方が約束の時間に遅れる。杉君や津島に逆に怒られる。絶対に奴らは怒るよ。しかも理由がこれで遅刻って。絶対に他の奴らにチクられて『オリンピック代表キャプテンは流石だよね』とか『未来のA代表は候補の人気は違うね~』とか冷やかされるに違いない。
「今日はオフだからこれで勘弁して」
そう言ってサポーターの輪から逃げ出した。が、サインを諦めきれない小学生中心の子供達が追ってくる。
(まずいよな~。ホントにイベントの邪魔しちゃったかも)
そう思いながら早足でその場を去る。
時々後ろを振り返り、追ってくるサポーターを見てみると人数は減っているものの、まだ圭吾の様子をうかがっている。
ここで立ち泊まったら、また人だかりができるよな。仕方がない。一旦ここを出るか。他で時間を潰して、もう1度来ればいいや。
立ち止まることなく出口に着いた圭吾は後ろを振り返る。
追ってくる子供達に手を振り
「ゲシュペンストを応援してくれてありがとう。試合見に来てね」
そう言って自動扉を出ようと振り向いた瞬間、圭吾の鍛えられた胸に飛び込んでくる人がいた。
もちろん、弾かれ転んだのは相手のほうだった。派手に転ぶ女の子。
よそ見していた自分が悪いと思い、圭吾はすぐに手を差し伸べた。
今日は同じゲシュペンストの選手の杉田や津島が名古屋のデパートイベントでサイン&握手会をする。
「圭吾、暇なら見に来いよ。終わったら飯でも食べに行こうぜ」
「俺がサポーターの子に見つかったらスギ君に握手を求める人がいなくなっちゃうよ」
「いいじゃん、サプライズで。ファンが喜ぶなら俺はコスプレしてサイン会に出席してもいいぜ」
杉田がこう言うと周りにいたゲシュペンストの選手達が大爆笑した。
良い雰囲気……なんだよな。最近、負けが込んできているけど大丈夫そうだ。みんなの顔に悲壮感はないし明るい表情が見える。このリーグ中断期間が浮上のきっかけになるように頑張らないとな。俺の出来がゲームの勝敗を左右する。やれる自信はあるんだ。あとは結果だけ。どんな形でもいいから結果を出す!
で、杉君と飯か。どうせ、暇だし。スギ君と飯を食いながら、サッカー談義でもしますかね。お互い彼女もいないし、寂しく1人で飯を食うなら誰かと食べた方が美味しいに決まっているし。
そう思った圭吾は自宅に帰るとすぐに着替えをし始めた。自分はプロのサッカー選手とはいえ、普段、町で歩いていてもそうそう声を掛けられるわけじゃない。
(そこまでカッコつけることもない)
Tシャツとジーパンに着替え、イベント会場に向かうと、ゲシュペンストサポーターと見て分かる人たちがたくさん並んでいた。
遠巻きで会場を見てみると数百人の列が並んでいる。
その様子を見て圭吾は時間がかかりそうだと思い、デパートの中をうろつくことにした。
買い物していれば時間ぐらいすぐ過ぎるだろ。その辺をうろついてい時間でも潰しますかね。と思っていた俺はとんでもなく甘かった。ショートケーキにメイプルシロップをかけ、その上に練乳をかけるぐらい甘かった。
そんなに有名になった自覚はない。断言できる。だけど、思い知らされたね。ゲシュペンストサポーターがたくさんいる所でうろつくなんて無謀だった。後悔先に立たずってこういう事を言うんだね。
握手会を終えたサポーターに見つけられた圭吾。その場で握手やサインを求められてくる。
(ヤバイ、昨日の笑い話が本当になる)
圭吾を中心に人の輪が出来始め、どんどんと人が増えていく。握手会を終えたサポーターがそのままこちらに流れているようだった。
必死に応援してくれるサポーターを邪険に扱う事も出来ず、何枚かサインをするが一向に人の列が途切れる事がない。
やっべ。このままだと俺の方が約束の時間に遅れる。杉君や津島に逆に怒られる。絶対に奴らは怒るよ。しかも理由がこれで遅刻って。絶対に他の奴らにチクられて『オリンピック代表キャプテンは流石だよね』とか『未来のA代表は候補の人気は違うね~』とか冷やかされるに違いない。
「今日はオフだからこれで勘弁して」
そう言ってサポーターの輪から逃げ出した。が、サインを諦めきれない小学生中心の子供達が追ってくる。
(まずいよな~。ホントにイベントの邪魔しちゃったかも)
そう思いながら早足でその場を去る。
時々後ろを振り返り、追ってくるサポーターを見てみると人数は減っているものの、まだ圭吾の様子をうかがっている。
ここで立ち泊まったら、また人だかりができるよな。仕方がない。一旦ここを出るか。他で時間を潰して、もう1度来ればいいや。
立ち止まることなく出口に着いた圭吾は後ろを振り返る。
追ってくる子供達に手を振り
「ゲシュペンストを応援してくれてありがとう。試合見に来てね」
そう言って自動扉を出ようと振り向いた瞬間、圭吾の鍛えられた胸に飛び込んでくる人がいた。
もちろん、弾かれ転んだのは相手のほうだった。派手に転ぶ女の子。
よそ見していた自分が悪いと思い、圭吾はすぐに手を差し伸べた。
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