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楽しく強くなるのが大前提です♪
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部室に着いた5人は柚季のノートパソコンの動画に釘付けになっていた。真剣な表情で自分達のプレーを客観的に見てみる。
(やっぱりオレンジマジックとは違う。もっと私が動かないと攻撃も守備もちぐはぐになっちゃう)
そう思った志保は自分の足の震えに気が付いた。やせ我慢をしていたが、試合中、自分の足も限界にかなり近くなっていた。
自陣から敵陣へ、敵陣から自陣へ。サッカーにはなかなかない短距離ダッシュの往復。サッカーとはペース配分が全然違う。亜紀が足を攣らなければ、恐らく自分がリタイアしていた。こんな事では真夏、しかも連戦となる大会に参加するのは負けに行くようなものだ。
(やっぱりもう少しスタミナをつけないといけないな)
そう思った志保がメンバーを見回すとある事に気が付いた。柚季も理沙も足が微妙に痙攣して震えていた。あれだけコートを縦横無尽に走れば当たり前のことだ。GKの舞は足に震えこそなかったが、腕や足に青あざが出来ている。必死でゴールを死守してくれた証拠だ。
たった2試合、真剣にゲームをしただけでここまでボロボロになるという事は、チームの実力が明らかに足りていないということだった。
「合宿をしよう! 夏休みに!」
志保がいきなり大きな声で提案する。メンバー達が疑問の顔を浮かべて志保に注目する。そんな視線を浴びながらも志保は
「せっかく柚季ちゃんのおかげで攻撃の方向性も見えたことだし、この戦術を煮詰めない手はないよ。そしてあとは持久力アップ。5人だけで大会に挑むのだから頑張らないと」
キラキラした目でそう訴える志保にメンバー達は何も言えなかった。志保の言っている事は正論であり、フローラルの最大の弱点でもある。しかし、志保の目に微妙な迷いがある事を理沙は見逃さなかった。
「志保、これは部長として聞く。あなたはフローラルを強くしたいの? それとも楽しく活動していきたいの?」
理沙の質問に志保の心臓が一瞬止まった。親友に心の底に隠れていた心情を完全に見抜かれた事で志保に次の言葉は出なかった。そんな志保を見て大きなため息をつく理沙。
「やっぱり。軍隊方式の部活にはしたくない。けど、強くはなりたい。強くなるためには辛い筋トレや練習に耐えないといけない。そんな葛藤があるんでしょ?」
完全に親友に心を読まれた志保は、ただ立ち尽くすしかなかった。亜紀も自分の素直な意見を口に出した。
「確かに強くなる事と辛い練習は比例しますわね。しかし、それはある程度は仕方がないことですわ」
「そんな事は絶対ないよ」
健が部室の扉を開きながらそう言い放つ。その顔は自信有りげで、メンバーを納得させるだけの理由があるのだろう。
「どういう事ですか? 辛い練習や筋トレをしなくても強くなれるって事ですか?」
「そうだな。その答えはイエスでもあるけど、ノーでもあるかな」
理沙の質問に健が謎掛けのように答える。理沙も志保もメンバー一同、全員の上に?マークが浮かぶ。そんなメンバー達の様子を見ていた健は苦笑しながら自分の考えを伝える。
「そんなに難しいことじゃない。フットサルを楽しめばいいだけだよ」
笑いながらそう言う健に対してメンバー達はさらに悩みだす。
「例えば俺がみんなに何の説明もなく筋トレしろとかトラック20周して来いって言ったらどう思う? 嫌々やるだろ? でも、ちゃんとスタミナをつける為とかこの技術を習得する為にはこの練習が必要なんだよって説明したら少しはやる気になるでしょ? だから、根本はフットサルを楽しんでやることなんだ。ごめん、俺も上手く説明出来ないけど、何となく伝わると嬉しい」
「さすが健さんですわ! どんな練習でも楽しんでやることが重要ってことですわね」
「相変わらず亜紀さんの兄貴へのアピールが激しいの。本当に兄貴を好きなのかの?」
「私に聞かないで。真実を知るのが恐い」
「亜紀さんが将来義姉に……僕は耐えられるのかの」
「心中お察しいたします」
健への猛アピールを繰り返す亜紀。そんな亜紀に聞こえないように、柚季達は小声でツッコミを入れる。しかし、健はそんな話をしているとは露知らず、一生懸命みんなに説明を続ける。
「簡単に言えばそうなるかな。ついでに言えば、練習方法を自分達で考え出せばより楽しく練習できるよ。もし、その練習が理に適っていないのなら俺が指摘する。やらされる練習より自主的に楽しく練習した方が飲み込みも絶対に早い。辛いけど楽しく。そんな練習法をみんなで考えればいい」
手を合わせて納得するメンバー達。すると健をそっちのけでメンバー達が練習法を考え始めた。
「まずは絶対に持久力だな。普通にマラソンとかしていたら、ただの苦行でしかないからな」
「そだね。競争して罰ゲームを考えるとかハンデを付けるとかだね」
「あとは動きながらのトラップの練習もしたいですわ」
「私はセットプレーとかも考えた方が良いと思う。何パターンかあった方が絶対にいい」
「僕はもう少し状況判断が早くしたいの。視野を広げる練習だの」
メンバー達から色々な意見が飛び交う。それぞれの思っている事を相手に伝える。その重要性をお互いが再確認していた。チームとして足りない部分はもちろん、個人の苦手な部分も客観的に伝えていく。その様子を見て健は満足そうに頷いた。
「柚季に呼ばれたけど、俺は必要ないみたいだね。みんなで一杯話し合って、練習内容は明日聞く。あと、夏休みはなるべく来るようにするから、予定表があったらもらえるかな?」
「あっ、はい。今すぐに用意したしますわ」
亜紀が急いで立ち上がり、体育館の使用予定表を健に渡した。予定表を受け取った健はざっと流すように確認すると「じゃあ、また明日」と言いながら部室を後にした。そんな健の後姿を、目で追いながら両手を前で組む亜紀。
「うわぁ~、一昔前の少女マンガのワンシーンを現実に見られるとは思わなかった」
(コクコク)
「もう、告白しちゃえばいいのにね。早くしないと誰かに取られちゃうかもしれないのに」
志保達の会話を聞いた亜紀は顔を真っ赤にして否定をし始める。
「わ、私はそんな風には思っていませんわ。大体、私の将来の旦那様は相原財閥の時期党首にならなければなりませんのよ。健さんには失礼ですけど、まだその器の片鱗を見せてもらっていませんわ。まあ、確かにリーダーシップ等はあるようですけど」
「真面目に答えるな、ツッコミ辛いわ! 亜紀のこれからは正直どうでもいい。重要なのは今後のフローラルだ」
「ちっ! 面白かったのに」
「志保! 舌打ちするな!」
部長の立場である理沙が亜紀イジリを無理矢理打ち切って、真剣な顔で語り始めた。
「健さんの言うとおり、楽しく強くなろう。フットサルは楽しい。だから辛い練習も少しでも楽しく。それがフローラルに必ず繋がっていく。そう信じて明日からの練習を頑張っていこう」
「おう!」
(やっぱりオレンジマジックとは違う。もっと私が動かないと攻撃も守備もちぐはぐになっちゃう)
そう思った志保は自分の足の震えに気が付いた。やせ我慢をしていたが、試合中、自分の足も限界にかなり近くなっていた。
自陣から敵陣へ、敵陣から自陣へ。サッカーにはなかなかない短距離ダッシュの往復。サッカーとはペース配分が全然違う。亜紀が足を攣らなければ、恐らく自分がリタイアしていた。こんな事では真夏、しかも連戦となる大会に参加するのは負けに行くようなものだ。
(やっぱりもう少しスタミナをつけないといけないな)
そう思った志保がメンバーを見回すとある事に気が付いた。柚季も理沙も足が微妙に痙攣して震えていた。あれだけコートを縦横無尽に走れば当たり前のことだ。GKの舞は足に震えこそなかったが、腕や足に青あざが出来ている。必死でゴールを死守してくれた証拠だ。
たった2試合、真剣にゲームをしただけでここまでボロボロになるという事は、チームの実力が明らかに足りていないということだった。
「合宿をしよう! 夏休みに!」
志保がいきなり大きな声で提案する。メンバー達が疑問の顔を浮かべて志保に注目する。そんな視線を浴びながらも志保は
「せっかく柚季ちゃんのおかげで攻撃の方向性も見えたことだし、この戦術を煮詰めない手はないよ。そしてあとは持久力アップ。5人だけで大会に挑むのだから頑張らないと」
キラキラした目でそう訴える志保にメンバー達は何も言えなかった。志保の言っている事は正論であり、フローラルの最大の弱点でもある。しかし、志保の目に微妙な迷いがある事を理沙は見逃さなかった。
「志保、これは部長として聞く。あなたはフローラルを強くしたいの? それとも楽しく活動していきたいの?」
理沙の質問に志保の心臓が一瞬止まった。親友に心の底に隠れていた心情を完全に見抜かれた事で志保に次の言葉は出なかった。そんな志保を見て大きなため息をつく理沙。
「やっぱり。軍隊方式の部活にはしたくない。けど、強くはなりたい。強くなるためには辛い筋トレや練習に耐えないといけない。そんな葛藤があるんでしょ?」
完全に親友に心を読まれた志保は、ただ立ち尽くすしかなかった。亜紀も自分の素直な意見を口に出した。
「確かに強くなる事と辛い練習は比例しますわね。しかし、それはある程度は仕方がないことですわ」
「そんな事は絶対ないよ」
健が部室の扉を開きながらそう言い放つ。その顔は自信有りげで、メンバーを納得させるだけの理由があるのだろう。
「どういう事ですか? 辛い練習や筋トレをしなくても強くなれるって事ですか?」
「そうだな。その答えはイエスでもあるけど、ノーでもあるかな」
理沙の質問に健が謎掛けのように答える。理沙も志保もメンバー一同、全員の上に?マークが浮かぶ。そんなメンバー達の様子を見ていた健は苦笑しながら自分の考えを伝える。
「そんなに難しいことじゃない。フットサルを楽しめばいいだけだよ」
笑いながらそう言う健に対してメンバー達はさらに悩みだす。
「例えば俺がみんなに何の説明もなく筋トレしろとかトラック20周して来いって言ったらどう思う? 嫌々やるだろ? でも、ちゃんとスタミナをつける為とかこの技術を習得する為にはこの練習が必要なんだよって説明したら少しはやる気になるでしょ? だから、根本はフットサルを楽しんでやることなんだ。ごめん、俺も上手く説明出来ないけど、何となく伝わると嬉しい」
「さすが健さんですわ! どんな練習でも楽しんでやることが重要ってことですわね」
「相変わらず亜紀さんの兄貴へのアピールが激しいの。本当に兄貴を好きなのかの?」
「私に聞かないで。真実を知るのが恐い」
「亜紀さんが将来義姉に……僕は耐えられるのかの」
「心中お察しいたします」
健への猛アピールを繰り返す亜紀。そんな亜紀に聞こえないように、柚季達は小声でツッコミを入れる。しかし、健はそんな話をしているとは露知らず、一生懸命みんなに説明を続ける。
「簡単に言えばそうなるかな。ついでに言えば、練習方法を自分達で考え出せばより楽しく練習できるよ。もし、その練習が理に適っていないのなら俺が指摘する。やらされる練習より自主的に楽しく練習した方が飲み込みも絶対に早い。辛いけど楽しく。そんな練習法をみんなで考えればいい」
手を合わせて納得するメンバー達。すると健をそっちのけでメンバー達が練習法を考え始めた。
「まずは絶対に持久力だな。普通にマラソンとかしていたら、ただの苦行でしかないからな」
「そだね。競争して罰ゲームを考えるとかハンデを付けるとかだね」
「あとは動きながらのトラップの練習もしたいですわ」
「私はセットプレーとかも考えた方が良いと思う。何パターンかあった方が絶対にいい」
「僕はもう少し状況判断が早くしたいの。視野を広げる練習だの」
メンバー達から色々な意見が飛び交う。それぞれの思っている事を相手に伝える。その重要性をお互いが再確認していた。チームとして足りない部分はもちろん、個人の苦手な部分も客観的に伝えていく。その様子を見て健は満足そうに頷いた。
「柚季に呼ばれたけど、俺は必要ないみたいだね。みんなで一杯話し合って、練習内容は明日聞く。あと、夏休みはなるべく来るようにするから、予定表があったらもらえるかな?」
「あっ、はい。今すぐに用意したしますわ」
亜紀が急いで立ち上がり、体育館の使用予定表を健に渡した。予定表を受け取った健はざっと流すように確認すると「じゃあ、また明日」と言いながら部室を後にした。そんな健の後姿を、目で追いながら両手を前で組む亜紀。
「うわぁ~、一昔前の少女マンガのワンシーンを現実に見られるとは思わなかった」
(コクコク)
「もう、告白しちゃえばいいのにね。早くしないと誰かに取られちゃうかもしれないのに」
志保達の会話を聞いた亜紀は顔を真っ赤にして否定をし始める。
「わ、私はそんな風には思っていませんわ。大体、私の将来の旦那様は相原財閥の時期党首にならなければなりませんのよ。健さんには失礼ですけど、まだその器の片鱗を見せてもらっていませんわ。まあ、確かにリーダーシップ等はあるようですけど」
「真面目に答えるな、ツッコミ辛いわ! 亜紀のこれからは正直どうでもいい。重要なのは今後のフローラルだ」
「ちっ! 面白かったのに」
「志保! 舌打ちするな!」
部長の立場である理沙が亜紀イジリを無理矢理打ち切って、真剣な顔で語り始めた。
「健さんの言うとおり、楽しく強くなろう。フットサルは楽しい。だから辛い練習も少しでも楽しく。それがフローラルに必ず繋がっていく。そう信じて明日からの練習を頑張っていこう」
「おう!」
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