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ポジションチェンジです♪
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ゆかりを含めた全員が揃ったのを確認した健は
「んじゃ、今からやる練習は明日から必ずやってね」
そう言って見本を見せ始めた。
健の練習は説明も上手く、なぜこういう練習が必要か、どんな場面で重要になるかを細かく説明してくれる為、メンバー達には物凄く分かりやすかった。
(なるほどね、なぜ、こんな練習をするか、それを理解させてから練習する。だからみんなが納得するんだ)
志保や舞が納得したように頷く。健のフットサルのレベルが高い為、簡単にやっているように見える。
だが、いざやってみると経験者の志保でさえなかなか越えられないハードルの高さであった。
「出来ないのはわかってる。出来るようになるための練習なんだから失敗してもいい」
「ほら、下を向かない。視野を広げる為に顔はなるべくすぐ上げること。慣れたら下を向かずにトラップする」
「止まってトラップしない。フットサルはコートが狭いんだから止まったらすぐに敵が来る。ボールを動かしながら自分も動く事」
健の大きな声が体育館に響き渡る。
「あの、ゴレイロの私もここまでやらないと駄目なんですか?」
舞が遠慮しながらも健に聞いてきた。健は(当たり前だよ)という顔をしながら
「当然。フットサルはゴレイロでも攻撃に参加するからね。これぐらいは出来るようにならないとね」
と言いながら舞に動くように促した。体育館を所狭しとぐるぐる回る。人数が少ない為、健が推奨している練習法がどんどん順番が回ってくる。
「こ、これ、結構疲れるね」
「うん。確かに。さすがに私も脚が動かなくなってきた」
理沙が弱音を吐くと舞がそれに乗っかった。だが、その会話に亜紀が飛び込んできた。
「はあ、はあ。でも、これは、健さんが、私たちのために、考えて、くれた練習ですわ。これしきの、練習で、バテていては、健さんの、期待に応え、られませんわ」
息を切らし、言葉が上手く出ない亜紀。しかし、持ち前の意地っ張りの性格で虚勢を張っている。だが、亜紀の身体は正直だった。
膝が震え、今にも崩れ落ちそうな身体を必死で気持ちだけで支えているのが見え見えである。健に良いところを見せようと言う亜紀の意地であった。
「あ、あなた達はまだいいわよ。わ、私なんかここ最近、運動していないんだから」
そう言ったゆかりは生ける屍のように体育館に横たわっていた。
「今日はこれぐらいにしようか。後はちょっとミーティングで話があるから着替えたら呼んでくれる?」
そう健が言うと必死に健の練習に喰らい着いていた5人がその場に座り込んだ。
「多分、健さん、Sだね」
「僕も、こんな兄貴、知らなかった、一面なの」
息を切らせながらの志保の問いに健の実妹である柚季が同じように息を切らせながらも答えた。
普段、家ではかなり優しい兄の健。
妹の自分は少し昔まではかなり甘えていた。兄貴が大学に入ってからは生活リズムが違ってきた為にほとんど顔を合わせる事がなくなり、少しだけ寂しい気持ちになっている。しかし、10数年、一緒に暮らしてきた柚季だが、こんな健を見た事は無かった。
(兄貴がこんなにSだったなんて。あとでデータを更新しておく必要があるの)
そんな事を思いながらゆっくりと息を整える柚季。静まり返る体育館に兄、健の声が響き渡った。
「さあ、着替えてミーティングするよ。早く着替えないと俺が部室に入れない」
健の言葉を聞いた6人は重りを付けたように重い腰を上げ、脚を引きずりながら部室に向かった。
ホワイトボードの前に立つ健。制服に着替えた5人はベンチに座り、健の言葉を待った。ゆかりだけがベンチに寝転がりまだ回復しないでいた。
「ごめん、今日はもう、私はいないものだと思って」
青白い顔で頭を上げ、そう言ったゆかりはそのままベンチに顔を伏せた。そんなゆかりを完全スルーして健がメンバーに話し始めた。
「今日の練習の意味は分かったよね? フットサルは常に動くスポーツ。止まった状態でボールを受ける事はほとんど無い。だから今日の練習メニューはこれからずっと行う事。みんなのレベルを見ながらステップアップするから」
そう言って健は練習メニューを書いた紙をそれぞれに配る。その内容をメンバー達がそれぞれ見比べると練習内容が個人個人で違っている。
「健さん、総合練習の後、個人練習になっていますけど、これは……」
理沙が健に質問した。
(私の練習と志保の練習は逆じゃないの?)
自分のポジションは志保より前で、どちらかと言うと最前線にいる亜紀のフォローがメインになるはず。それには亜紀や逆サイドにいる柚季にパスを通したり、スペースを空けたりの練習が必要だと自分では思っている、健は自分や志保に何を求めているのかがさっぱり分からなかった。
「じゃあ、まず結論から。志保ちゃんとと理沙ちゃんはポジションチェンジ。志保ちゃんがアラ、理沙ちゃんがフィクソ」
「え~、私、そんなに駄目? あの試合、そんなに致命的なミスした?」
志保が健に詰め寄っていく。先ほどの亜紀と同じ様に唇が重なり合うぐらい顔が近づける志保。
「あのちょっと。ここのメンバー。みんな、顔が近いって」
健が少しずつ後ずさりしていく。しかし、健の後を必要に追っていく志保。そんな2人の間に無理やり亜紀が身体を入れ込み、2人の間に距離を開けた。
「ちょっと志保さん、いくらなんでも取り乱しすぎですわ。健さんにそんなに近づくなんて」
顔を赤くしながら、亜紀が志保を睨む。しかし、納得のいかない志保は亜紀を無視し、さらに健に詰め寄ろうとするが、志保を両手で制し健に近づけまいと亜紀が必死で止める。
「もう邪魔! 亜紀ちゃん」
「あなたこそ、もう少し冷静になりなさいですわ。健さんに近寄り過ぎですわ」
志保の標的は次第に亜紀に移行し、口論となり始める。すると面倒見の良い舞が2人の間に入り、その場を収めようと2人をなだめた。いつもは理沙が先に止めに入るのだが、健に言われたポジションチェンジの理由を考えている為に仲裁には入ってこない。柚季にいたっては我関せずスタイルを取り、タブレットに何かを打ち込んでいる。
「理沙ちゃんも手伝ってよ~」
舞が悲鳴を上げるが、理沙の耳には届かなかった。
なぜ、ポジションを変わらないといけないのか? スクラッチの女性陣との試合は自分も志保も致命的なミスはしていない。ゲーム運びや戦略、つまり経験の差で負けたと思っている。シュートまでの形は何回か良い形もあったし、もう少し煮詰めていけばもっと良くなる気がする。確実に手ごたえがあった試合だった。しかし、健の言い方だとあの戦い方、ポジションチェンジと言う事は根本的に戦術が間違っていたと言う事だ。
納得がいかない理沙は健に理由をどうしても聞きたくなった。
「なんで志保とポジションチェンジなんですか? 理由を教えてください」
「うわっ、こっちもか!」
健が不安そうな顔を向け、オロオロし始める。だが、理沙はお構いなしに健に詰め寄った。
(あのポジションは私と志保で一晩考え抜いて、今まで練習してきたフォーメーション。それをいくらコーチになったからって、簡単に変えるなんて)
次第に頭に血が上る理沙。いくらコーチに就任したからといって、気分で変えられては困る。明確かつ、的確な理由がない限りは断固反対しようと思っていた。じゃれあっている志保と亜紀、舞の脇をすり抜けて理沙が今度は健に詰め寄った。
「ちょっと待った。ちゃんと説明するから落ち着いてくれ」
両手を前に差し出し、理沙を制す健。その言葉に理沙は立ち止まり、志保も亜紀も言い争いをやめた。
「ふう、とりあえず座ってくれ。ちゃんと説明するから。それでも納得いかないのならポジションを戻してもいいから」
健にそう言われたメンバー達は落ち着きを取り戻しベンチに座り直した。素直に従ってくれたみんなを見て健が安堵の顔色を浮かべる。
「じゃあ、説明するね」
そう言いながら健はホワイトボードに戦略、戦術を書き始めた。
「んじゃ、今からやる練習は明日から必ずやってね」
そう言って見本を見せ始めた。
健の練習は説明も上手く、なぜこういう練習が必要か、どんな場面で重要になるかを細かく説明してくれる為、メンバー達には物凄く分かりやすかった。
(なるほどね、なぜ、こんな練習をするか、それを理解させてから練習する。だからみんなが納得するんだ)
志保や舞が納得したように頷く。健のフットサルのレベルが高い為、簡単にやっているように見える。
だが、いざやってみると経験者の志保でさえなかなか越えられないハードルの高さであった。
「出来ないのはわかってる。出来るようになるための練習なんだから失敗してもいい」
「ほら、下を向かない。視野を広げる為に顔はなるべくすぐ上げること。慣れたら下を向かずにトラップする」
「止まってトラップしない。フットサルはコートが狭いんだから止まったらすぐに敵が来る。ボールを動かしながら自分も動く事」
健の大きな声が体育館に響き渡る。
「あの、ゴレイロの私もここまでやらないと駄目なんですか?」
舞が遠慮しながらも健に聞いてきた。健は(当たり前だよ)という顔をしながら
「当然。フットサルはゴレイロでも攻撃に参加するからね。これぐらいは出来るようにならないとね」
と言いながら舞に動くように促した。体育館を所狭しとぐるぐる回る。人数が少ない為、健が推奨している練習法がどんどん順番が回ってくる。
「こ、これ、結構疲れるね」
「うん。確かに。さすがに私も脚が動かなくなってきた」
理沙が弱音を吐くと舞がそれに乗っかった。だが、その会話に亜紀が飛び込んできた。
「はあ、はあ。でも、これは、健さんが、私たちのために、考えて、くれた練習ですわ。これしきの、練習で、バテていては、健さんの、期待に応え、られませんわ」
息を切らし、言葉が上手く出ない亜紀。しかし、持ち前の意地っ張りの性格で虚勢を張っている。だが、亜紀の身体は正直だった。
膝が震え、今にも崩れ落ちそうな身体を必死で気持ちだけで支えているのが見え見えである。健に良いところを見せようと言う亜紀の意地であった。
「あ、あなた達はまだいいわよ。わ、私なんかここ最近、運動していないんだから」
そう言ったゆかりは生ける屍のように体育館に横たわっていた。
「今日はこれぐらいにしようか。後はちょっとミーティングで話があるから着替えたら呼んでくれる?」
そう健が言うと必死に健の練習に喰らい着いていた5人がその場に座り込んだ。
「多分、健さん、Sだね」
「僕も、こんな兄貴、知らなかった、一面なの」
息を切らせながらの志保の問いに健の実妹である柚季が同じように息を切らせながらも答えた。
普段、家ではかなり優しい兄の健。
妹の自分は少し昔まではかなり甘えていた。兄貴が大学に入ってからは生活リズムが違ってきた為にほとんど顔を合わせる事がなくなり、少しだけ寂しい気持ちになっている。しかし、10数年、一緒に暮らしてきた柚季だが、こんな健を見た事は無かった。
(兄貴がこんなにSだったなんて。あとでデータを更新しておく必要があるの)
そんな事を思いながらゆっくりと息を整える柚季。静まり返る体育館に兄、健の声が響き渡った。
「さあ、着替えてミーティングするよ。早く着替えないと俺が部室に入れない」
健の言葉を聞いた6人は重りを付けたように重い腰を上げ、脚を引きずりながら部室に向かった。
ホワイトボードの前に立つ健。制服に着替えた5人はベンチに座り、健の言葉を待った。ゆかりだけがベンチに寝転がりまだ回復しないでいた。
「ごめん、今日はもう、私はいないものだと思って」
青白い顔で頭を上げ、そう言ったゆかりはそのままベンチに顔を伏せた。そんなゆかりを完全スルーして健がメンバーに話し始めた。
「今日の練習の意味は分かったよね? フットサルは常に動くスポーツ。止まった状態でボールを受ける事はほとんど無い。だから今日の練習メニューはこれからずっと行う事。みんなのレベルを見ながらステップアップするから」
そう言って健は練習メニューを書いた紙をそれぞれに配る。その内容をメンバー達がそれぞれ見比べると練習内容が個人個人で違っている。
「健さん、総合練習の後、個人練習になっていますけど、これは……」
理沙が健に質問した。
(私の練習と志保の練習は逆じゃないの?)
自分のポジションは志保より前で、どちらかと言うと最前線にいる亜紀のフォローがメインになるはず。それには亜紀や逆サイドにいる柚季にパスを通したり、スペースを空けたりの練習が必要だと自分では思っている、健は自分や志保に何を求めているのかがさっぱり分からなかった。
「じゃあ、まず結論から。志保ちゃんとと理沙ちゃんはポジションチェンジ。志保ちゃんがアラ、理沙ちゃんがフィクソ」
「え~、私、そんなに駄目? あの試合、そんなに致命的なミスした?」
志保が健に詰め寄っていく。先ほどの亜紀と同じ様に唇が重なり合うぐらい顔が近づける志保。
「あのちょっと。ここのメンバー。みんな、顔が近いって」
健が少しずつ後ずさりしていく。しかし、健の後を必要に追っていく志保。そんな2人の間に無理やり亜紀が身体を入れ込み、2人の間に距離を開けた。
「ちょっと志保さん、いくらなんでも取り乱しすぎですわ。健さんにそんなに近づくなんて」
顔を赤くしながら、亜紀が志保を睨む。しかし、納得のいかない志保は亜紀を無視し、さらに健に詰め寄ろうとするが、志保を両手で制し健に近づけまいと亜紀が必死で止める。
「もう邪魔! 亜紀ちゃん」
「あなたこそ、もう少し冷静になりなさいですわ。健さんに近寄り過ぎですわ」
志保の標的は次第に亜紀に移行し、口論となり始める。すると面倒見の良い舞が2人の間に入り、その場を収めようと2人をなだめた。いつもは理沙が先に止めに入るのだが、健に言われたポジションチェンジの理由を考えている為に仲裁には入ってこない。柚季にいたっては我関せずスタイルを取り、タブレットに何かを打ち込んでいる。
「理沙ちゃんも手伝ってよ~」
舞が悲鳴を上げるが、理沙の耳には届かなかった。
なぜ、ポジションを変わらないといけないのか? スクラッチの女性陣との試合は自分も志保も致命的なミスはしていない。ゲーム運びや戦略、つまり経験の差で負けたと思っている。シュートまでの形は何回か良い形もあったし、もう少し煮詰めていけばもっと良くなる気がする。確実に手ごたえがあった試合だった。しかし、健の言い方だとあの戦い方、ポジションチェンジと言う事は根本的に戦術が間違っていたと言う事だ。
納得がいかない理沙は健に理由をどうしても聞きたくなった。
「なんで志保とポジションチェンジなんですか? 理由を教えてください」
「うわっ、こっちもか!」
健が不安そうな顔を向け、オロオロし始める。だが、理沙はお構いなしに健に詰め寄った。
(あのポジションは私と志保で一晩考え抜いて、今まで練習してきたフォーメーション。それをいくらコーチになったからって、簡単に変えるなんて)
次第に頭に血が上る理沙。いくらコーチに就任したからといって、気分で変えられては困る。明確かつ、的確な理由がない限りは断固反対しようと思っていた。じゃれあっている志保と亜紀、舞の脇をすり抜けて理沙が今度は健に詰め寄った。
「ちょっと待った。ちゃんと説明するから落ち着いてくれ」
両手を前に差し出し、理沙を制す健。その言葉に理沙は立ち止まり、志保も亜紀も言い争いをやめた。
「ふう、とりあえず座ってくれ。ちゃんと説明するから。それでも納得いかないのならポジションを戻してもいいから」
健にそう言われたメンバー達は落ち着きを取り戻しベンチに座り直した。素直に従ってくれたみんなを見て健が安堵の顔色を浮かべる。
「じゃあ、説明するね」
そう言いながら健はホワイトボードに戦略、戦術を書き始めた。
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