フットサル、しよ♪

本郷むつみ

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戦術よりも重要な事?です♪

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「私たち、グループ名が無い」

「はあ?」

 志保の言葉に一瞬間が空き、そして他の4人が見事にハモった。間抜けな返事をするメンバー達を置いて、志保が続ける。

「だってさ、健さんのチーム【スクラッチ】ってカッコ良くない? この間、ネットで大会調べた時も各チーム、カッコいいチーム名が付いていたでしょ。私たちも岡家高校フットサル部のチーム名を考えようよ」

 握り拳を作り、そう言い切った志保の目の前には他のメンバーは誰もいなかった。理沙達は呆れた顔で部室を出ようとしている。そんな理沙達の姿を見た志保は必死でみんなを呼び止めた。

「ちょっと待ってよ。チーム名、重要だと思わない?」

「そりゃ思うけど、別に何でもいいだろ?」

「ではこうしましょう。亜紀と愉快なメイドたち。素晴らしいチーム名ですわ」

「なんか決める入り口からかなりパンチが重たいです……」

 舞がそう言ってツッコミをすると、いきなり理沙が泣き出した。

「ど、どうしたの、理沙ちゃん?」

 心配そうに舞が聞くと理沙は泣きながら

「も、もう1人ツッコミの人が増えた事が嬉しいの。このチーム、ボケの人ばっかりだったから」

 と言いながら目に持っていたタオルを当てる。冷や汗をかきながら、少し困った顔で舞は「そ、そう」としか言い返すしか出来なかった。そんな空気の中、相変わらずのんびりした声で志保が声を上げる。

「じゃあ、1人1つずつ、自分が付けたいチーム名を挙げてこう~。まずは部長の理沙から」

 そう言って志保が勢いよく理沙に指を指す。指を指された理沙は慌てながらも必死にチーム名を考える。

「わ、私から? えっと、えっと、タルタルソースがけご飯」

「それ、理沙の好きな食べ物。却下! 次! 亜紀ちゃん」

 理沙の考えたチーム名を聞いた亜紀が少し引きながらも答える。

「アーキーズなんてどうですか?」

「亜紀ちゃん、自己主張しすぎ! 却下! 次、舞ちゃん」

「マイーズとか?」

「舞ちゃん、亜紀ちゃんと同レベル! 却下! 次、柚季ちゃん」

「新聞部」

「それはもうフットサル部以外になってる! 却下! 次、もう1度理沙」

「パーマコースとか?」

「理沙、パーマかけたいの? 却下! 次、亜紀ちゃん」

「アキテミスとかどうですか?女神アルテミスと私の名前をかけて……」

「自己主張はもういいから。却下! 次、舞ちゃん」

「スリムパーティーとか?」

「それは自分の胸を見てから主張してください! 却下! 柚季ちゃん」

「トゥルーピクチャー」

「真実の写真? 柚季ちゃん、新聞部から離れる! 却下! みんな真剣に考えようよ」

 ため息を付きながら首を振り、志保が呆れ返ると理沙が「じゃあ、志保は何か良い案あるのか?」 と言って聞き返した。
 メンバー全員の視線が志保に集まる。予想外の展開に志保の目が泳ぎだした。

「え? えっと、えっと……」

 何か無いかと部室の中を見回す志保。そんな中、志保の目の中に飛び込んできたのは白と黒のサッカーボールであった。

「そうだ、パンダックスなんてどうかな? 白黒サッカーボールと可愛いダックスフンドをかけて……」

 志保がそう説明すると、またもや目の前には誰も存在せず、メンバーたちは部室を出ようとしていた。理沙が志保の案を完全スルーして

「さあ、練習始めようか。チーム名は後でまた相談しよう」

 と言いながら部室を後にした。

「あわわ、ちょっと待ってよ~」

 そう言って志保も部室を後にした。




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