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知らない人たちとフットサルします♪
しおりを挟む「着替え終わった? んじゃ柔軟とアップしてくれる? あと、聞きたい事があるから柔軟しながらでいいから答えてくれるかな?」
優しそうな顔で健が志保たちにそう言った。
健に言われた通り、円になって志保たちは柔軟を始める。するとホワイトボードを片手に健が志保たちに質問してきた。
「えっと、それぞれ、名前とポジションを教えてくれる?」
「あっ、はい、私が戸崎志保で一応フィクソです。こっちが佐原理沙でアラ……」
志保が代表してみんなの自己紹介をしていく。
その答えを聞きながら健がホワイトボードに何かを書き込んでいった。
「了解。んじゃ、志保ちゃんは緑チーム、理沙ちゃんは黄色、柚季は青、亜紀ちゃんは赤、舞ちゃんはピンクのチームに入ってくれる? とりあえずそのチームで参加して」
健は志保たちにそう言ってから各色のビブスを手渡していく。
手渡し終えると振り向き、各チームの代表者たちを呼んで何かを説明した。それぞれのチームの代表者が志保に「よろしく」と声をかけてきた。志保達からするとみんな年上だが、気さくな感じで友達感覚に陥りそうになり苦笑した。
「んじゃ、とりあえず青対黄色、緑と赤で試合するぞ~」
そして健が試合開始の笛を吹き、その音が体育館中に鳴り響いた。
志保たちが試合を挑んでいる頃、ゆかりがやっと体育館に到着した。こそっと扉を開き、中の様子をうかがう姿は明らかに怪しい人に見えた。が、ゆかり自身はそんな事は気にしていなかった。
「あの~、そこで何されているんですか?」
ゆかりの姿に気付いて健がドアを開けて声をかける。
あまりの恥ずかしさに顔を赤くするゆかりだったが、すぐに自分を取り戻す。
「私、フットサル部顧問の篠原ゆかりと言います。今日、うちの子たちがこちらで一緒に練習しているはずなんですが……」
恐る恐る、ゆかりが尋ねると健は笑顔で返事をする。
「あぁ、先生ですか。僕は柚季の兄の健と言います。みんないますよ。今は試合しているので、とりあえず中へどうぞ」
健がゆかりをエスコートし、体育館のベンチに案内した。ベンチに腰掛けたゆかりはすぐに生徒たちを捜した。
その時、亜紀がシュートを打ち、点を決めて喜ぶ姿が目に入ってきた。隣のコートでは志保が相手のパスカットをし、攻撃の起点になっている。理沙も柚季も舞もそれぞれがコート内を走り回っていた。
素人目のゆかりから見ても自分の生徒たちは活躍している。練習の成果が出ているのだ。 ゆかりは素直に心から喜んだ。そんな時、タイマーが体育館中に鳴り響いた。
「終了~。とりあえず10分休憩にしようか。水分補給はしっかり取れよ~」
健がしっかりと指示を出し、コート内からメンバーが歩いてベンチに戻ってくる生徒達。ゆかりの姿を見つけた志保達が駆け寄ってきた。
「先生、遅いよ~」
「ごめん、ごめん。でも、みんな活躍していたじゃない」
素直に謝りながらゆかりはみんなの労をねぎらった。
「先生、私の華麗なシュートを見てくださいましたか?」
「私のアシストも良かったでしょ?」
みんな、自分のプレーに自信を持ったかのようにゆかりに自慢した。毎日5人だけの基礎練習。それが、たががゲーム式の練習でこんなに笑顔になっている。
(来た甲斐が合ってよかったね、みんな)
ゆかりは心の底からそう思った。みんながそれぞれのプレーを話し合っていると健と5人の元に寄ってきた。
「次、始めるけど今回は男性だけでやるから見学していて。あとで女性だけでの試合するから作戦でも考えておいて」
「えっ? 5人で試合させて頂けるンッ……」
「なれない敬語なんて使うから舌を噛むんだよ」
理沙がそう言って口に手を当てる志保を横にどかす。そして理沙が口を開こうとした瞬間、亜紀が横から口を挟んできた。
「あ、あの、私たちだけで試合してもよろしいのですか?」
いつもと違う亜紀の口調にびっくりして顎を落とす他のメンバーたち。しかし、亜紀はその反応に気付くもののツッコミは入れず、健の返答を待った。
「だって、その為にここに来たんでしょ? まあ、違ったとしてもせっかくなんだから5人で試合していけばいいよ。それも経験だと思うしね」
「健、そろそろやろうぜ~」
「おぉ、今行く。だから作戦でも考えておいて」
仲間に呼ばれた健は志保たちにそう言ってコートの中に入っていった。志保たちは健の後姿を見送りながら呆然としていた。
だが、次第に5人で試合を出来る喜びが心の底から湧き上がり、テンションが上がっていった。
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