フットサル、しよ♪

本郷むつみ

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結果待ちです♪

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 家に着いた舞は自分のベッドに転がりながら、物思いにふけっていた。

(やりたい事ね……確かにハンド部を辞めてからは何も無いんだけど……)

 小学生の時に両親の勧めで町のサッカークラブに入った。
 その時、意見も言えず控えめだった自分は、友達に言われるがまま、ゴールキーパーというポジションに追いやられた。しかし、性格に合っていたのか、ゴールキーパーが次第に楽しくなっていった。
 自分が守り切りさえすれば負ける事は無い。目立たなくても非常に重要なポジション。
 そんなゴールキーパーにどんどんハマっていった。中学にあがる時には才能が開花したのか、色んなクラブからスカウトされた。しかし、両親の都合があって地元の中学校に通うことにした。
 中学校にはサッカー部がなく、仕方がないのでゴールキーパーというポジションのあるハンド部に入部する事にした。少し勝手は違ったが、すぐに順応する事が出来て県選抜にも選ばれるようになった。

(あの頃は部活をしに学校に行っていたようなものだったのに)

 楽しくて仕方がなかった。みんなの期待が嬉しかった。期待に応えた時の感動は何事にも変えがたい宝物となった。

(いつからだろう。期待がプレッシャーに変わって行ったのは……)

 ベットの上をゴロゴロと転がる舞。本当は中学のハンド部のメンバーと同じ高校に進みたかった。
 しかし、またもや両親の都合で特待生として岡家高校に入学した。

(あの頃から環境が一気に変わって、次第に楽しくなくなっていったな)

 舞が入学する2年前から、岡家高校では文武両道を掲げ、色んな部活に力を入れるようになっていた。その中でもハンド部の顧問は熱血系で、当たり前のような罰走などを行っていた。
 そして年功序列の意識も強く、実力のある年下の選手は嫌がらせの対象にもなっていた。舞が入部した当初も少しのミスで怒られ、上級生に嫌味を言われ、段々ハンドボール自体が面白くなくなっていた。
 嫌がらせを行う先輩たちは引退していなくなったものの、勝利優先の顧問は変わらずに相変わらず軍隊方式の部活動を続けている。

 そんな部活に何の魅力があるのか? 
 きつい罰を受けてまでやるべきことなのか? 
 強くなる為に楽しいと思う気持ちを犠牲にする事が正しいことなのか?

 プロを目指すならそれもありだと思うが、自分自身はプロとか代表選手になりたいなんて1度も思ったことはない。
 柔らかい枕に顔を埋め、ため息をつく舞。そして、今日、今さっきまで一緒に公園にいた後輩たちに言われた事を思い出す。

(私が楽しく、充実した毎日を。そして、やりたい事が見つからないならみんなで見つけよう……か)

 思い悩む舞がふと時計に目をやると針は午前2時半を指していた。

「いけない。早く寝なきゃ」

 そう言って舞は電気を消して布団をかぶった。しかし、目を閉じても、舞はなかなか寝付く事は出来なかった。


 次の日の昼休み。志保達はダッシュで舞の教室へと向かって走っていた。
 舞の出す結論が気になって4人とも午前中の授業に全く集中出来ていなかった。

「遠藤先輩、どんな答え出したかな?」

 志保が何の悩み無いような顔で理沙に聞く。

「遠藤先輩が入部してくれないなんて考えたくない。期限はもうないんだぞ。今から入部希望者を捜すなんて無理だからな」

 理沙の顔が最悪の展開を考えて青ざめていく。誰も口を開かず、他の3人もその可能性を否定できない。無言のまま、舞の教室へと4人は急いだ。教室に着いた4人は舞の姿を捜したが、舞の姿はどこにも確認出来なかった。

「いないぞ」

「また、学食でも買いに行ってらっしゃるのでしょうか?」
 理沙の問いに亜紀が答える。そう言いながらも教室の中を見渡すと志保が舞のクラスメイトに話しかけていた。

「またですか?」

「まただな」

(コクコク)

 もはやツッコむ気にすらならない3人が教室の扉の前で呆れていた。

「遠藤先輩、今日は休みだって~」

 志保がほのぼのとした声でそう言いながらで他の3人に近寄ってきた。
 その答えを聞いた3人は緊張の糸が切れ、その場に座り込んだ。そんな状況に志保は首を傾けながら何があったか聞いてみる。

「どうしたの?」

「いないと分かって力が抜けた」

「でも、結果は明日じゃないと分からないって事になりますわね。期限ギリギリになってしまいましたわ」

(コクコク)

「あっそか。もうすぐ期限なんだ。どうしよう、みんな」

「今気付いたのかい!」

 理沙は志保に平手ツッコミを入れて立ち上がると、亜紀と柚季もそれに続き立ち上がった。

「とりあえず、学校に来てないんじゃしょうがない。とりあえず教室に戻ろう」

「ここまで来たら信じるしかありませんわ。いざとなれば私を慕う人たちに名前だけでも借りてフットサル部を作りましょう」

 亜紀がそう言うと他の3人が驚いた顔を作った。怪訝そうな表情を浮かべ、腰に手を当て3人に質問する亜紀。

「どうかいたしましたか?」

「いや、相原さんでもそういうことするんだなって」

「うん、そういう事はしないタイプだと思ってた。って言うか、亜紀ちゃんにサポーターがいるなんて」

(コクコク)

「一部ツッコミを入れないといけない気がしますが、ここはスルーしますわ。私だってこんな下策は取りたくありませんわ。しかし、腹には背を変えられません。私が入部する以上、同好会なんて絶対にありえませんわ」

 と亜紀が力強く宣言する。
 その言葉を聞いた3人が亜紀に向かって拍手をすると、顔を赤くして話題を慌てて変える。

「し、しかし、遠藤先輩は何をしていますの? 休みだなんて、風邪でも引いたのかしら」

 と、そっぽを向きながらそう言った。そんな亜紀に理沙が助け舟を出すように場を取り直す。

「まあ、とりあえずこうしていても仕方がない。教室に戻ろう」

「え~、明日は期限日だよ。先生に遠藤先輩の住所を聞いて、家に押しかけようよ~」

「お前は人の都合を考えろ!」

 志保の言葉に理沙は志保のこめかみに拳を当てグリグリと力を入れる。

「痛い、痛い、痛い~~~」

 理沙の拳が離れ、半泣きの志保に柚季がこう言う。

「当然の結果なの。そこまでプライバシーに踏み込んではいけないの」

「あなたがそれを言いますか」

 亜紀が呆れながら柚季にツッコミを入れる。

「明日、もし遠藤先輩が学校に来なかったり、入部してくれなかったら、誰かに頼んで名前だけ貸してもらおう。やっぱり同好会は色々まずいと思う」

 そして教室に戻ろうとみんなに促しながら理沙が歩き出した。3人も理沙の後に続き教室へと歩き出した。

(まだ悩んでいるのかな?)

 志保はそう思いながら理沙の後に続いた。


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