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宝箱の中の綺麗な思い出1
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ママは、わたしがおんなのこでいることがイヤみたいーー
いつからだろう、蒼は自分に対する母親を見てそう思うようになった。
シングルマザーの母親と蒼の二人暮らし、生活は貧しくて可愛い服やおもちゃも与えられなかったし、蒼の髪が伸びると母親の手によって適当に短く切られた。
それに、自分のことを「あおい」と言うのはもちろん、「わたし」と言うことも許されなかった。
九歳、小学三年生の蒼は自分のことを「おれ」と言っていた。
小学校に上がる頃には、母親が何故自分が女の子であってほしくないのか分かってきていたけれど。
夜の仕事をしている母親は、男好きなのだ。
自分の実の娘よりも、昨日今日出来た恋人の方が大事と平気で言えるような。
だから蒼にも嫉妬する。恋人の興味が少しでも蒼に向くのが許せない。
蒼のことを男の子だと思えれば、母親の嫉妬は幾分か和らぐようだった。
学校からの帰り道を家に向かって歩く。
今日も母親は男を連れ込んでいるんだろうか。家ーー築三十年は経っているだろうボロアパートの一室に。
日当たりの悪い室内。捨てられていないゴミ袋の山。散らかった服や化粧品。汚れた皿やコップなどが突っ込まれたシンク。
部屋中を満たしている香水の匂い。
決して喜んで帰りたいような場所ではないが、あの場所しか帰る場所がない。
いや、そこすらも帰る場所ではないんだろう。
母親は蒼に「邪魔だから、少し出てって」と言ったことはあるが、「おかえり」と言ったことはないのだからーー
ボロアパートが見えてきた。
蒼はため息も出なかった。ただ、諦めだけがあった。
いつからだろう、蒼は自分に対する母親を見てそう思うようになった。
シングルマザーの母親と蒼の二人暮らし、生活は貧しくて可愛い服やおもちゃも与えられなかったし、蒼の髪が伸びると母親の手によって適当に短く切られた。
それに、自分のことを「あおい」と言うのはもちろん、「わたし」と言うことも許されなかった。
九歳、小学三年生の蒼は自分のことを「おれ」と言っていた。
小学校に上がる頃には、母親が何故自分が女の子であってほしくないのか分かってきていたけれど。
夜の仕事をしている母親は、男好きなのだ。
自分の実の娘よりも、昨日今日出来た恋人の方が大事と平気で言えるような。
だから蒼にも嫉妬する。恋人の興味が少しでも蒼に向くのが許せない。
蒼のことを男の子だと思えれば、母親の嫉妬は幾分か和らぐようだった。
学校からの帰り道を家に向かって歩く。
今日も母親は男を連れ込んでいるんだろうか。家ーー築三十年は経っているだろうボロアパートの一室に。
日当たりの悪い室内。捨てられていないゴミ袋の山。散らかった服や化粧品。汚れた皿やコップなどが突っ込まれたシンク。
部屋中を満たしている香水の匂い。
決して喜んで帰りたいような場所ではないが、あの場所しか帰る場所がない。
いや、そこすらも帰る場所ではないんだろう。
母親は蒼に「邪魔だから、少し出てって」と言ったことはあるが、「おかえり」と言ったことはないのだからーー
ボロアパートが見えてきた。
蒼はため息も出なかった。ただ、諦めだけがあった。
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