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7章 性欲の中心には魔物が棲んでんねん
7-26 黒薔薇のユカ1【切なさに引き寄せられる】
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「じゃ、初心者のグリーンからストってもらいましょ」
髪を掻き上げながら乳ローは言った。
「わかりました。頑張ります」
「その前に、グリーン。今日は飲み会に来るか?」
ガリさんはタバコを指でくるくる回している。
「いえ。今日は結果を出したいのでやめときます」
「気合い入ってるじゃねぇか。ほんなら、頑張りや」
と言うと、タバコを咥えジッポーで火をつけた。
「はい。ありがとうございます」
俺は黒いスカートを穿いた女に向けて走った。
「すいません。訊いていいですか?」
確実に女の視線を捉えてアイコンタクトをとった。
「はい? いいですよ」
「黒、すごい似合うね」
「えっ……、ありがとう」
「これだけ黒が似合うのはカラス以来だと思うよ」
「バカにしてるんですか?」
緊張しすぎてしまい完璧に失敗してしまった。
「いえ、本気の褒め言葉です。いや、マジで。カラスを越えたかもしれないね」
やばい。俺は連続で何を言っているのだろうか……。
相手の表情や仕草をくまなく観察した。唇が微かに動いたので言葉で描写した。
「唇、ピクっとしてるよ。ちょびっと笑ってるじゃん」
「でも、褒め言葉でカラスはないんじゃない?」
「ごめんごめんごめんごめん」
もう何を言っても無駄な気がしたので、手を合わせて冗談交じりにひたすら謝った。
「自分でも何を言ってるんだろって感じです」
「まぁ、いいけど」
「今日は何かいいことありました?」
「何よ突然。特にはないけど楽しい一日だったよ」
「知ってる。そう見える。輝いてるし機嫌良さそうだもん。分けてよそのスマイル」
「どうやって分けるのよ」と言うと笑った。
「あなたはいいことあったの?」
「うん。今、こんな綺麗な人に出会えたから最高の日になったよ」
「セリフっぽいし、臭いよ」
「とは言いつつも、口元がほころんでますよ。それにしても、キリっとしたスタイリッシュな大人の色気を漂わしててタイプです」
「とりあえず、ありがとう。って言っとくわ」
「その言い方が小悪魔的で胸にズキュンときちゃいました」
と言いながらよろけてみせた。女は若干呆れる表情を見せた後、「ところで、用は何?」と訊いてきた。
「ここらへんでおいしいメンチカツが食べられるところを知らない?」
「知りません」
「コロッケでもいいんだけど」
「揚げ物が食べたい気分みたいね」
と言うと、左手を口元においてクスッと笑った。
「美味しいトンカツ屋なら知ってるよ」
「あっ、トンカツいいね。そのお店ってどこにあるの?」
「あそこの……、途中まで案内しますよ」
「はい」と言いながらついていった。
「このスカート、個性的だし雰囲気があっていいですね。黒い薔薇が好きなんですか」
小さい黒薔薇がスカートの全面に縫われていて、ジャケットの胸元に視線を移すと、それよりも大きい黒薔薇のコサージュが一輪咲き誇り、足下に視線を落とすとサテン素材の黒パンプスの先にも小さい黒薔薇が添えられていた。
「ありがとう。そう。黒い薔薇が好きなの」
何か言葉を発そうと思ったが、前を見つめる女の赤い唇が動いたのでそれを待った。
「誘われてしまうの。黒い薔薇に」
「誘われるんですか」
「うん。黒い薔薇って見つめていると切なくなりませんか。その切なさに引き寄せられるの」
「なんか話を聞いていると、黒い薔薇を好きなあなたが気になってきました。一緒に脂っこいものを食べましょうよ。一人で食べるのも寂しいんで」
左斜め上を見て少し思案した後、「そうね。私も揚げ物を食べたい気分だから一緒に食べましょう」と言った。
女は指で看板をさし、「あのお店です。とってもジューシーではまりますよ」と言ってから間髪入れずに、「行列ですね」と呟き顔を顰めた。
「並んでるんで隣の海鮮居酒屋にしましょうよ。結構おいしそうですよ」
「残念ですけどそうしましょう。脂っこいのはあなただけで我慢するわ」
「どういう意味なんだろ」という俺の声は聞こえなかったのか、そそくさとお店の中に入っていってしまった。ここまでの流れが自然にできた自分に驚いた。ナンパというものに少し慣れてきたのかもしれない。
髪を掻き上げながら乳ローは言った。
「わかりました。頑張ります」
「その前に、グリーン。今日は飲み会に来るか?」
ガリさんはタバコを指でくるくる回している。
「いえ。今日は結果を出したいのでやめときます」
「気合い入ってるじゃねぇか。ほんなら、頑張りや」
と言うと、タバコを咥えジッポーで火をつけた。
「はい。ありがとうございます」
俺は黒いスカートを穿いた女に向けて走った。
「すいません。訊いていいですか?」
確実に女の視線を捉えてアイコンタクトをとった。
「はい? いいですよ」
「黒、すごい似合うね」
「えっ……、ありがとう」
「これだけ黒が似合うのはカラス以来だと思うよ」
「バカにしてるんですか?」
緊張しすぎてしまい完璧に失敗してしまった。
「いえ、本気の褒め言葉です。いや、マジで。カラスを越えたかもしれないね」
やばい。俺は連続で何を言っているのだろうか……。
相手の表情や仕草をくまなく観察した。唇が微かに動いたので言葉で描写した。
「唇、ピクっとしてるよ。ちょびっと笑ってるじゃん」
「でも、褒め言葉でカラスはないんじゃない?」
「ごめんごめんごめんごめん」
もう何を言っても無駄な気がしたので、手を合わせて冗談交じりにひたすら謝った。
「自分でも何を言ってるんだろって感じです」
「まぁ、いいけど」
「今日は何かいいことありました?」
「何よ突然。特にはないけど楽しい一日だったよ」
「知ってる。そう見える。輝いてるし機嫌良さそうだもん。分けてよそのスマイル」
「どうやって分けるのよ」と言うと笑った。
「あなたはいいことあったの?」
「うん。今、こんな綺麗な人に出会えたから最高の日になったよ」
「セリフっぽいし、臭いよ」
「とは言いつつも、口元がほころんでますよ。それにしても、キリっとしたスタイリッシュな大人の色気を漂わしててタイプです」
「とりあえず、ありがとう。って言っとくわ」
「その言い方が小悪魔的で胸にズキュンときちゃいました」
と言いながらよろけてみせた。女は若干呆れる表情を見せた後、「ところで、用は何?」と訊いてきた。
「ここらへんでおいしいメンチカツが食べられるところを知らない?」
「知りません」
「コロッケでもいいんだけど」
「揚げ物が食べたい気分みたいね」
と言うと、左手を口元においてクスッと笑った。
「美味しいトンカツ屋なら知ってるよ」
「あっ、トンカツいいね。そのお店ってどこにあるの?」
「あそこの……、途中まで案内しますよ」
「はい」と言いながらついていった。
「このスカート、個性的だし雰囲気があっていいですね。黒い薔薇が好きなんですか」
小さい黒薔薇がスカートの全面に縫われていて、ジャケットの胸元に視線を移すと、それよりも大きい黒薔薇のコサージュが一輪咲き誇り、足下に視線を落とすとサテン素材の黒パンプスの先にも小さい黒薔薇が添えられていた。
「ありがとう。そう。黒い薔薇が好きなの」
何か言葉を発そうと思ったが、前を見つめる女の赤い唇が動いたのでそれを待った。
「誘われてしまうの。黒い薔薇に」
「誘われるんですか」
「うん。黒い薔薇って見つめていると切なくなりませんか。その切なさに引き寄せられるの」
「なんか話を聞いていると、黒い薔薇を好きなあなたが気になってきました。一緒に脂っこいものを食べましょうよ。一人で食べるのも寂しいんで」
左斜め上を見て少し思案した後、「そうね。私も揚げ物を食べたい気分だから一緒に食べましょう」と言った。
女は指で看板をさし、「あのお店です。とってもジューシーではまりますよ」と言ってから間髪入れずに、「行列ですね」と呟き顔を顰めた。
「並んでるんで隣の海鮮居酒屋にしましょうよ。結構おいしそうですよ」
「残念ですけどそうしましょう。脂っこいのはあなただけで我慢するわ」
「どういう意味なんだろ」という俺の声は聞こえなかったのか、そそくさとお店の中に入っていってしまった。ここまでの流れが自然にできた自分に驚いた。ナンパというものに少し慣れてきたのかもしれない。
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