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7章 性欲の中心には魔物が棲んでんねん

7-7 乳ロー先生の講義3【㉕手を握るという行為は試金石】

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「それと、手を握るときは、さっきも言ったようにベタベタ触ったりやらしく触ったらダメ。当然、恥ずかしがってもダメ。弱々しい印象を与えるから主導権を奪われやすくなるんだよ。握るならば、堂々と握ることが重要なんだぜ」
「わかりました」
「でな、手を握ることによって女の本音を知ることが大切なんだぜ。だから、言葉だけでなく、表情の変化や視線の動きや身ぶり手ぶりをよく見て見極めないとダメ。言葉ではイヤと言っていても笑顔で握られてる場合もあるし、それとは逆に、本音は嫌なのに拒否することが怖いから握られてる場合もある。女の方から握り返してきたり拒否感が少なくて大丈夫そうだと感じれば、次の展開に進めばいいだろ」
 相手の本音か……。
「そして、この手を握るという行為は試金石といえるんだ。これは女から見ても特にいやらしくはなくむしろ爽やかに映ることさえあり、これぐらいなら問題なく応じるという女がいる一方、初対面なら絶対無理と思う女もいるんだよ」
 確かに。
「しかし、女に対して確実に好意を伝えられる方法といえる。仲良くなれるし主導権も握れるし揺れ動いている女の背中を押すこともできるんだ。そして、ナンパ師としては手を握れれば次の展開に進める可能性が広がると同時に、もし次の展開で失敗したとしても、またこの手繋ぎに戻ってきて仕切り直すことが可能だから重要な行為といえるんだよ。男女の関係性というのは、手を握れば何かが起こるんだぜ!」
「あ、はい……」
 思わず視線を落とし自分の手を見つめてしまった。
「それと、この手を握るという行為は別の側面も持ち合わせてるんだ」
「と言いますと?」
「うん。ガリが前に『示唆』の話をしたことを当然覚えてるよな?」
「あっ……、微かに……」
「バカ、忘れてるんじゃねぇよ。『いい人モードにされちゃうと手を出しづらくなるから、示唆する行動が必要なんや』ってガリが言ってただろ」
「さすが、ナンバー2の乳ローさん。よく覚えてますね……」
「でな、示唆する行動とは何かというと、ボディタッチと下ネタが基本といえるんだよ。ここはボディタッチで話を進めるが、その中でも男女を意識した手繋ぎがもっとも効果的な出発点といえるんだ。手を握ることに限らず示唆を続けることによって、女は色々なことを考えるし想像もするし緊張もする。その一連の過程によって、女は覚悟という準備を少しずつ整えていくんだぜ」
「なるほど」
「一方、ワンナイントラブができるかどうかを探る方法も、手を握ることによってある程度判断できるんだよ。出会ってから間もない状況で、早々に手を繋ぐ女は早々にキスをする。早々にキスをする女は早々にセックスをする。その時間が短時間であればあるほど性に開放的な女ということがいえる。ま、ぶっちゃけて言うと、ビッチってことだ。だから、出会って三分以内に『俺と手を繋ぐと運気が上がるから』とか屁理屈へりくつこねて手を差し出して試してみろ。相手がその手を繋いだら即の可能性は高まるといえるんだぜ。手を握らせるところがポイントだ。なぜなら、出会ってすぐに自分から手を繋ぐと強制わいせつ罪や暴行罪でしょっ引かれる可能性があるからだ。そこは気をつけろ!」
 一度納得してしまったが、前言撤回する。こいつはやっぱりヤベー奴だ。
「ここまでヤベーのが嫌ならば、『前に手繋ぎでヘタっぴとかキモいとか言われて凹んだことがあってさぁ。どうやって繋げばいいんだろ? 俺の繋ぎ方がヘタなのかな? 採点してもらっていい?』とか言うんだよ。したら、わざと変な手繋ぎしてツッコませたり、ウケたら天丼したり、もしくはもっとふざけた手繋ぎをしたりして和ませるんだ。で、『先生、どれが正解か教えてよ』とか下手に出てレクチャーしてもらい、『それが正解なんだ。じゃあ、練習させて』と試し練習までできたら友達以上恋人未満の空気の完成だ」
「さすがですね」
「和気あいあいで進めていくのが肝だぜ。これならお前みたいなおたんこナスでもできるんじゃね?」
 不覚にも納得させられて頷いてしまっている自分がいた。
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