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7章 性欲の中心には魔物が棲んでんねん
7-19 性的同意2【MeTooが世界を変えた。それが、ジャニー喜多川氏やダウンタウン松本氏への告発に繋がる時代性】
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「まあな。しかし、さっきから何度も言うてる通り、時代は変わってきている。#MeTooや」
「セクハラでしたっけ?」
「もちろんそれも含むが、性的な嫌がらせや暴行や虐待などの犯罪被害における告発運動のことをいうねん。ハリウッドの大物プロデューサーだったハーヴィ・ワインスタイン氏が、立場を利用して女優やモデルをセクハラや性的暴行した疑惑がもたれ、2017年10月5日にニューヨークタイムズが告発した。それを発端にして、女優のアリッサ・ミラノが『#MeToo』と呟き、瞬く間に広がり世界規模で展開されてんねん」
「『私も』『自分も』……そして、『俺も』と告発するようになったと。被害者は女性だけじゃないですもんね」
「そういうこった。#MeToo運動を受けて、『Time`s up(もう、時間切れ。沈黙や我慢する時代は終わったのよ)』『#WeToo(私たちも行動して変えていこう)』『#How I Will Change(〈男性側による〉俺たちはどう変わっていくか)』と運動の盛りあがりは続いている」
「まぁ、俺には#MeToo運動なんてどうでもいいわ~。フェミニズムは大嫌いだし、必要以上の男性差別を感じるんだよな~。あまりやり過ぎると生身の女に誰も立ち寄らなくなることを肝に銘じた方がいいだろ。VRやAIの進歩や発展が著しいこんな時代において、それは女にとっても困ることなんじゃねぇの?」
「乳ローみたいな考え方で独身主義を貫く男を、MGTOW(Men Going Their Own Way〈我が道をいく男〉)といわれ増えていたり、フランスでは女優のカトリーヌ・ドヌーブをはじめアーティストやジャーナリスト約百人の女性が、『しつこい誘いや不器用な口説きを、性犯罪と同じように断罪するのは間違い』『男には性的自由において口説く権利があり、この権利を擁護する』と発表している。フランスとアメリカの恋愛文化の違いや現代フェミニズム運動への反動やピュータリズムなど様々なポイントがあるだけでなく、行き過ぎの警鐘を鳴らされたりもしてるし賛否両論が起きてんねん(3)」
「日本ではどうなってるのですか?」
「ジャーナリストやブロガーやモデルやアイドルやタレントや歌手や女優や実業家やダンサーやフォトジャーナリストなどが声を上げたが、男は処分されたりされなかったりや。日本以上に男尊女卑が根強く残っているといわれている韓国でさえ大きなムーブメントが起こったのだが、日本ではあまり盛りあがらなかったんや。それとは反対に、victim blaming(被害者叩き)の存在や、嘘松(ネットスラング〈嘘や妄想であろうツイート〉)といわれることもあり、性犯罪における乏しい理解を露呈したり、被害者にとって救われない現実が漂っていた。しかし、2022年に映画監督に対する告発を皮切りに、2023年にはジャニー喜多川氏やダウンタウン松本氏への告発が大問題に発展したわけであり、日本でもワンランク上のフェーズに入ったといえるだろう」
「その時代性を受けて、同意というものを考えなくてはいけないと……」
「そういうこった。前述した通り、2017年に110年振りに性犯罪に関する刑法が改正された。
①名称の変更 強姦罪は、強制性交等罪 準強姦罪は、準強制性交等罪
②肛門・口腔性交も同等の罪になり、男性も被害者対象になった。
③監護者性交等罪、監護者わいせつ罪を新設。親や養親などが、十八歳未満の子どもに行為を及んだ場合、暴行・脅迫がなくても罪に問われる。
④非親告罪になった(今までは告訴の必要な親告罪だったが、被害届だけでOKの非親告罪に改正された)。
⑤懲役の下限が、「三年以上」は「五年以上」に引き上げになった。
・刑法第百七十七条 第一項(強制性交等罪)
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。
・刑法第百七十八条 第二項(準強制性交等罪)
人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条(強制性交等罪)の例による。
・刑法第百七十九条 第二項(監護者性交等罪)
十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は、第百七十七条(強制性交等罪)の例による。
※全て、五年以上~二十年以下の懲役刑が設定されている。
・刑法百八十一条 第二項(強制性交等致死傷罪)
第百七十七条、第百七十八条第二項若しくは第百七十九条第二項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は六年以上の懲役に処する。
これらの改正を終えて、いくつかのポイントが残されたといわれる。
①「暴行・脅迫」や「抗拒不能」要件の撤廃や緩和
②監護者性交等罪の見直し(年齢及び適用範囲の拡大)
③性交同意年齢の引き上げ 等々。
「乳ローさんどうしたのですか?」
「タマムシ、見つけた」
乳ローの手の平にはタマムシがいる。眩い緑色を光らしていて、周りが少し明るくなった。
「タ、タマムシ? そんな珍しい虫がまだ東京にいるんですね」
「何、話してんねん! 続けるで」
「はい……」
「セクハラでしたっけ?」
「もちろんそれも含むが、性的な嫌がらせや暴行や虐待などの犯罪被害における告発運動のことをいうねん。ハリウッドの大物プロデューサーだったハーヴィ・ワインスタイン氏が、立場を利用して女優やモデルをセクハラや性的暴行した疑惑がもたれ、2017年10月5日にニューヨークタイムズが告発した。それを発端にして、女優のアリッサ・ミラノが『#MeToo』と呟き、瞬く間に広がり世界規模で展開されてんねん」
「『私も』『自分も』……そして、『俺も』と告発するようになったと。被害者は女性だけじゃないですもんね」
「そういうこった。#MeToo運動を受けて、『Time`s up(もう、時間切れ。沈黙や我慢する時代は終わったのよ)』『#WeToo(私たちも行動して変えていこう)』『#How I Will Change(〈男性側による〉俺たちはどう変わっていくか)』と運動の盛りあがりは続いている」
「まぁ、俺には#MeToo運動なんてどうでもいいわ~。フェミニズムは大嫌いだし、必要以上の男性差別を感じるんだよな~。あまりやり過ぎると生身の女に誰も立ち寄らなくなることを肝に銘じた方がいいだろ。VRやAIの進歩や発展が著しいこんな時代において、それは女にとっても困ることなんじゃねぇの?」
「乳ローみたいな考え方で独身主義を貫く男を、MGTOW(Men Going Their Own Way〈我が道をいく男〉)といわれ増えていたり、フランスでは女優のカトリーヌ・ドヌーブをはじめアーティストやジャーナリスト約百人の女性が、『しつこい誘いや不器用な口説きを、性犯罪と同じように断罪するのは間違い』『男には性的自由において口説く権利があり、この権利を擁護する』と発表している。フランスとアメリカの恋愛文化の違いや現代フェミニズム運動への反動やピュータリズムなど様々なポイントがあるだけでなく、行き過ぎの警鐘を鳴らされたりもしてるし賛否両論が起きてんねん(3)」
「日本ではどうなってるのですか?」
「ジャーナリストやブロガーやモデルやアイドルやタレントや歌手や女優や実業家やダンサーやフォトジャーナリストなどが声を上げたが、男は処分されたりされなかったりや。日本以上に男尊女卑が根強く残っているといわれている韓国でさえ大きなムーブメントが起こったのだが、日本ではあまり盛りあがらなかったんや。それとは反対に、victim blaming(被害者叩き)の存在や、嘘松(ネットスラング〈嘘や妄想であろうツイート〉)といわれることもあり、性犯罪における乏しい理解を露呈したり、被害者にとって救われない現実が漂っていた。しかし、2022年に映画監督に対する告発を皮切りに、2023年にはジャニー喜多川氏やダウンタウン松本氏への告発が大問題に発展したわけであり、日本でもワンランク上のフェーズに入ったといえるだろう」
「その時代性を受けて、同意というものを考えなくてはいけないと……」
「そういうこった。前述した通り、2017年に110年振りに性犯罪に関する刑法が改正された。
①名称の変更 強姦罪は、強制性交等罪 準強姦罪は、準強制性交等罪
②肛門・口腔性交も同等の罪になり、男性も被害者対象になった。
③監護者性交等罪、監護者わいせつ罪を新設。親や養親などが、十八歳未満の子どもに行為を及んだ場合、暴行・脅迫がなくても罪に問われる。
④非親告罪になった(今までは告訴の必要な親告罪だったが、被害届だけでOKの非親告罪に改正された)。
⑤懲役の下限が、「三年以上」は「五年以上」に引き上げになった。
・刑法第百七十七条 第一項(強制性交等罪)
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。
・刑法第百七十八条 第二項(準強制性交等罪)
人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条(強制性交等罪)の例による。
・刑法第百七十九条 第二項(監護者性交等罪)
十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は、第百七十七条(強制性交等罪)の例による。
※全て、五年以上~二十年以下の懲役刑が設定されている。
・刑法百八十一条 第二項(強制性交等致死傷罪)
第百七十七条、第百七十八条第二項若しくは第百七十九条第二項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は六年以上の懲役に処する。
これらの改正を終えて、いくつかのポイントが残されたといわれる。
①「暴行・脅迫」や「抗拒不能」要件の撤廃や緩和
②監護者性交等罪の見直し(年齢及び適用範囲の拡大)
③性交同意年齢の引き上げ 等々。
「乳ローさんどうしたのですか?」
「タマムシ、見つけた」
乳ローの手の平にはタマムシがいる。眩い緑色を光らしていて、周りが少し明るくなった。
「タ、タマムシ? そんな珍しい虫がまだ東京にいるんですね」
「何、話してんねん! 続けるで」
「はい……」
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