34 / 107
5章 翡翠色の玉かんざし
5-8 求道者
しおりを挟む
しばらく声かけをしていたが、ガンシカばかりで一向に成果が現れなかった。疲れてしまったので呆然とALTA前を歩いていると、アールグレイティーのペットボトルを持っている子凛が立っていた。
「あ、お疲れ様です。グリーンさん、今日の調子はどうですか」
好感度抜群の爽やかな笑顔を俺に向ける子凛の側には、いつも通りたんぽぽの輪っかをのせた妖精がいる。肩の上に立って、俺に手を振りながら、おしゃまな笑顔を撒き散らしている。二人に会釈しながらカウンターを見てみると、そこには40の数字が示されていた。子凛に見習ってこの前、100円ショップで買ったんだ。
「四十声かけですね」
「すごいじゃないですか。かなり声かけ数が増えましたね」
「ありがとうございます。でも、結果が散々なんですよ。子凛さんは何声かけですか」
ポケットから取り出してカウンターを見る。
「えっと、百六十八声かけですね」
「ものすごい声かけ数ですね」
カウンターを覗くと、そこには紛れもなく168の数字が示されていた。
「ちなみに、結果はどうだったんですか」
「3人連れ出して、7人連絡先交換しました」
「さすが、子凛さん。自分は、ガンシカばっかりですよ」
妖精に視線を移すと、右手を口元に添えて咳き込んでいる。新宿の空気が合わないのだろうか。と思っていると、子凛も咳き込み始めた。よく似た兄妹だなと思いクスッと笑うと、呼吸を整えた子凛が口を開いた。
「大丈夫ですよ、このまま頑張り続ければ。継続は力なりですから」
眩しい光を投げかけられた。
「ありがとうございます。あれ、子凛さんごのみのモデル体型のお姉さんでは」
「はい、行きますね」
その瞬間、いつものように表情を一辺させた。何回でも何十回でも何百回でも声をかけ続けるその姿は、求道者のように思えた。いつからか背後にはガリさんがいて、タバコを吸いながらこちらを眺めていた。
「ホンマ、あいつは修行僧みたいなナンパ師やな。人によっては罵声を浴びるナンパは、現代の苦行や荒行といえるかもしれへん……。子凛は声かけを繰り返すことによって、何かを吹っ切りたいのやろう」
「そうですね。自分もそのように見えます」
「グリーンも、そういう風に見えるけどな」
「えっ」
「ナンパ師っていうたって、男女におけるゲーム性を楽しむだけの性欲に溺れた人種だけやないからな。自分にとってこれだといえるおなごを見つけるためにナンパ師になる奴もいれば、引きこもっていて学生時代に恋愛できず、青春を取り戻すためにナンパ師になる奴もいる。一方、お前らのように何かを追い求めるために、やり始める奴もいる。グリーンも子凛も何かを吹っ切りたいからこそ、声をかけ続けているように見えるで」
「実は、ガリさんもそうなんじゃないですか?」
「せやなぁ……。ワイもそうかもしれへんなぁ」
「あ、お疲れ様です。グリーンさん、今日の調子はどうですか」
好感度抜群の爽やかな笑顔を俺に向ける子凛の側には、いつも通りたんぽぽの輪っかをのせた妖精がいる。肩の上に立って、俺に手を振りながら、おしゃまな笑顔を撒き散らしている。二人に会釈しながらカウンターを見てみると、そこには40の数字が示されていた。子凛に見習ってこの前、100円ショップで買ったんだ。
「四十声かけですね」
「すごいじゃないですか。かなり声かけ数が増えましたね」
「ありがとうございます。でも、結果が散々なんですよ。子凛さんは何声かけですか」
ポケットから取り出してカウンターを見る。
「えっと、百六十八声かけですね」
「ものすごい声かけ数ですね」
カウンターを覗くと、そこには紛れもなく168の数字が示されていた。
「ちなみに、結果はどうだったんですか」
「3人連れ出して、7人連絡先交換しました」
「さすが、子凛さん。自分は、ガンシカばっかりですよ」
妖精に視線を移すと、右手を口元に添えて咳き込んでいる。新宿の空気が合わないのだろうか。と思っていると、子凛も咳き込み始めた。よく似た兄妹だなと思いクスッと笑うと、呼吸を整えた子凛が口を開いた。
「大丈夫ですよ、このまま頑張り続ければ。継続は力なりですから」
眩しい光を投げかけられた。
「ありがとうございます。あれ、子凛さんごのみのモデル体型のお姉さんでは」
「はい、行きますね」
その瞬間、いつものように表情を一辺させた。何回でも何十回でも何百回でも声をかけ続けるその姿は、求道者のように思えた。いつからか背後にはガリさんがいて、タバコを吸いながらこちらを眺めていた。
「ホンマ、あいつは修行僧みたいなナンパ師やな。人によっては罵声を浴びるナンパは、現代の苦行や荒行といえるかもしれへん……。子凛は声かけを繰り返すことによって、何かを吹っ切りたいのやろう」
「そうですね。自分もそのように見えます」
「グリーンも、そういう風に見えるけどな」
「えっ」
「ナンパ師っていうたって、男女におけるゲーム性を楽しむだけの性欲に溺れた人種だけやないからな。自分にとってこれだといえるおなごを見つけるためにナンパ師になる奴もいれば、引きこもっていて学生時代に恋愛できず、青春を取り戻すためにナンパ師になる奴もいる。一方、お前らのように何かを追い求めるために、やり始める奴もいる。グリーンも子凛も何かを吹っ切りたいからこそ、声をかけ続けているように見えるで」
「実は、ガリさんもそうなんじゃないですか?」
「せやなぁ……。ワイもそうかもしれへんなぁ」
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
後悔と快感の中で
なつき
エッセイ・ノンフィクション
後悔してる私
快感に溺れてしまってる私
なつきの体験談かも知れないです
もしもあの人達がこれを読んだらどうしよう
もっと後悔して
もっと溺れてしまうかも
※感想を聞かせてもらえたらうれしいです
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
女ハッカーのコードネームは @takashi
一宮 沙耶
大衆娯楽
男の子に、子宮と女性の生殖器を移植するとどうなるのか?
その後、かっこよく生きる女性ハッカーの物語です。
守護霊がよく喋るので、聞いてみてください。
寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる