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ゆめ

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世直し旅 03

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 騒がしい夜だった。

 訳のわからない黒い塊は襲ってくるし、護衛は色事に忙しく役に立とうともせず、最終的に花火として打ち上げたら闇から解放された白い神が現れた。
 これ母が一緒にいたら目が死んでいたのだろうとは予想が付いた。

「おはようございます」

 目を覚まし、布団から起き上がったら件の白い神が水桶を用意して枕元にいた。
 頭の後ろに輝く魔法陣が物凄いうっとうしい、髪が白いからうっとうしさも倍増だ。

「さぁ顔をお拭きいたしますね」

 ぼけーっとしていたら恭しく顔を拭かれた。
 遅れて起きたシャムスの顔も同じように丁寧に拭き、手早く髪の乱れも直している。

 封じられていた神とは思えない手際の良さだな。
 俺、寝起きが弱いから助かるかも。

 いつもはボスがやってくれてたんだよな。
 ……で、当のボスはどこだ?
 隣の部屋かな、見て来よう。

 シャムスの世話を任せ、布団から出て隣の部屋へと続く襖を静かに開けた。
 スパーンと開けても良かったけどなんとなく。

 隣室には布団が一組、朝からもぞもぞ動いている。

「……っは、ぁ、んぅ」

 朝からヤッているのか、一晩中なのか聞きたいような聞きたくないような。

「すっかり俺の形だな」
「もっと、主様の形を刻んでくださいまし」
「いい加減にしろよお前ら」
「っ!!」
「んぁぁっ!!」

 アルジュナが声をかけたと同時に二人ともイッたようだ。嬉しくない。

「五分待つ、身支度してシャムスの朝食」

 布団から情けない顔を出したボスが必死に首を振りながら答えた。

「五分あればもう一戦出来るな」
「もぅ主様ったら」

 だめだこりゃ、そう思いながらアルジュナはシャムスのもとへと戻った。

『ボス起きた?』
「ああ、こちらへ来たら皆で朝食にして出発しような」
『あーい』

 隣室がガタガタ煩いのは、制限時間内に終わらせるためだろう、正直殴りたかった。
 それでもまぁ時間内には二人して顔を出した。
 顔が上気し、どう見ても事後だったが。

「ぼしゅおはよ」
「おはようございます、えっと、その、アルジュナ様も」
「っけ」

 悪いと思うならあそこですぐ起きてほしかった。

「昨日と同じ宴会場に朝食が用意されていますので、行きましょう」
「だっこー」

 シャムスが手を伸ばすと花魁が抱き上げ、おはようのキスを交わした。

「ふふ、こうして主様との御子を抱く日が待ち遠しいです」

 ボスが真っ赤になって首を縦に振っている。
 あれは借金を背負ってでも身請けするに違いない、しかし相手は花魁、身請け代も恐ろしく高いだろうが分かっているのだろうか。

「おなかすきすきなの」
「申し訳ございません、すぐに行きましょうね」

 ちなみにアルジュナは白い神に運ばれた。
 どうやら主認定されてしまったらしい、しかも独占欲が強いっぽい。

 朝食の席にはキチンと全員揃っていたが、傭兵は生き生きしているし、遊女はどことなく気怠そうな雰囲気が隠し切れない。
 目が合えばクスクスと笑いながらお互いに食べさせたり、部屋に入って来てからもずっとイチャイチャしっぱなしだ。
 白い神がリア充爆発しろと思うのも仕方ないかもしれない。

 朝食を食べ終えたが出立にもまだ時間はある。
 じゃあもう何回か出来る?そんな雰囲気が漂ってアルジュナがイラっとしたのを遮るように、店主が挨拶に顔を出した。

(そうだ……そうだよ、名残惜しいからいつまでも引っ付いているんだ。ならずっと一緒にいられるようにしてしまえば問題解決!)

 アルジュナは店主の挨拶を聞き終えると、話を切り出した。
 昨夜買った遊女全員、花魁も含めて身請けすると。

「支払いは何がいい? 貨幣でもいいし欲しい素材や物があればそれで支払っても構わない」
『新婚さんいっぱい』

 シャムスが嬉しそうに手を叩いている以外、誰も音を発しない。
 目を見開き、顎が外れそうなほど口を開いている。

 目の前の店主は……目を開けたまま気絶しているっぽい。

「ボス、これ起こして」
「あ、ああ」

 ボスに命じて店主を起こさせると、やや乱暴な商談を続行した。

 しかしそこは苦界に店を構える店主、なんとか気を取り直すと一度にそれだけ身請けされたら店を開けられなくなると訴えてきた。

(それもそうか、でもなぁ花魁だけ身請けしてもボス贔屓になるし、シャムスも納得しないよなぁ。ああそうか、遊女だけ買おうとするから困るんだよ)

 アルジュナには資金があった。
 ただし前世も含めて金銭などまともに使ったことがなく、今生でお手本にしているのは神として君臨し、金銭価値など元からない神薙だった。

「分かった」
「おお、それでは……」
「店ごと買う、店主はそのままお前でいい、ドラグーンに移転してほしい」

 金で解決できるって平和だよな。と言うのがアルジュナの言い分である。

『おじちゃんまた気絶しちゃった』
「店ごと転移してもいいけど、まずはドラグーンで土地を探さないとな、ラウルに頼むか。『ドラグーンに花街作りたいから土地をくれ』っと、白の、これをドラグーン国にいるラウルに渡してくれ」
「はい」

 手紙を受け取ると白い神はパッと鳩に変化して飛び立っていった。

「返事が来るまで暇だから婚姻式でもやるか」
「けっこーん」
「まずはボスからだよな、神前で三三九度やればいいのか? まぁ俺らの前でやれば事足りるよな」
「あい!」
「ほらボス、上座に座って」
「……は? はぁあああああああ」

 その日、花街一の花魁が神の祝福のもと、複数の遊女とともに傭兵団に嫁いだ。
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