ポイント稼ぎ 小話

魔王が現れた

　ある良く晴れた日。


「きゃぁぁぁぁ」


　刀国の城下に悲鳴が響いた。


「魔王が出たぞー」


　魔王が出現したのだ。

「まおうだー！」
「ルネ様もいるー」

　市民が一斉に――魔王に群がった。

「魔王様、魔王様！　これ、うちの新作！　冷めても美味しいから二度楽しめるトリッキーな味！　お土産にぜひ！！！」
「いやいやいや、口に含むとパチパチする『だがし』を開発したんす！　こっちを！」
「ルネ様こちらの花をお土産にいかがですか、花は小さいですけど品種改良して通年目を楽しませてくれるんですよ」

　市民にとって魔王は太客も太客、部下への土産をまとめて買ってくれる上得意様だった。
　魔王の家族でも部下でも、とにかく味が気に入って貰えればまた次回買ってもらえる可能性が高くなるし、気に入られれば宣伝文句に『魔王御用達』を使用する事が出来る。

「まおー！」
「まおーさまー！」
「「おやつ買ってーー！！」」

　子供達にとってはついでとは言え、高めのおやつを買ってくれるヒーロー。

「簪の新作が出たのでぜひ！」
「こちらは櫛に花の模様が彫り込んであるんですよ」

　魔王の妻であり女神であるルネは、売れ行きが微妙な女性向けの華やかな商品を買ってくれる稀少な人物。

「ほぅ、美しい仕上がりだな、ルネに似合う」
「まぁ旦那様ったら」

　値段も問わずに即断した魔王にルネがぽっと頬を染めた。

　魔王は愛妻家として有名なため、女達はここぞとばかりに商品をアピールする。
　何せこの魔王様、愛する妻の為ならば金を惜しまない。

「ほう、この団子は甘みが美味いな」
「へい！　神薙様に奉納した際にも称賛を頂いた一品です！」
「皆にお土産にいただける？」
「毎度ありぃぃ！！！」

　魔王は城に住んでいる。
　住人は魔物が進化した者が中心なせいか肉料理がメイン、甘い物は魔王のお土産に期待するしかない。
　自分を慕う魔物を可愛がっている魔王は、それが分かっているからお土産もかなり奮発してくれる部下にも店主にも優しい顧客である。

「先日部下が結婚したのだが、何か祝いの品はあるか？　もう子供が産まれるらしい」
「それなら神子様印の回復薬がお勧めです、初めての出産時は特に痛みが強いですから」
「貰おう」
「毎度ありぃ！」

　こうして今日も広場は盛り上がったのだった。