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とある生徒の、普通とは少し違った日常。 1-2

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 そうして僕は校舎内を見回ったのだが……。

「広いうえに複雑すぎる!」

 地図を見ながら歩いていても迷ってしまうほどだ。
 入学式より前から生徒を受け入れている理由はもしやこれか?
 地図を確認しながら歩いていると、前方不注意だったのか人にぶつかった。

「すみません」
「気を付けろ」

 相手は上級生なのか制服の色が違う。

「新入生か?」
「はい、今年からこの学園に通うことになりました」
「ふん、どうせ入学したところで迷子になってさまようだけだ。後悔するなよ」

 鼻で笑い去っていく男。
 ……あれは、馬鹿にされたのだろうか、でも迷子になってるのは事実なんだよな。

「平民差別じゃないだけマシなのかな?」
「大丈夫ですか?」

 ふと声をかけられ振り返ると、そこには眼鏡をかけた少年がいた。

「さっきの人、この学園の生徒会長さんですよ。毎年、新入生に絡む伝統なのでみんな知ってるんです」
「そうなの!?」
「僕の兄も去年やられたので間違いありません」
「へぇ~」
「あれを貴族にもやります」
「え?」
「平民の癖にとか言って反発して殴りかかれば退学に一歩近付きます」

 ようは入学式前のふるいに掛ける儀式みたいなものらしい、生徒会って大変なんですね。

「君はこれからどうするの?」
「僕は図書室に行きます。この学園の蔵書数は世界一なので、本を読むことが好きなら一度は行くことをお勧めします」
「そっか、ありがとう」
「いいえ」

 親切な少年に別れを告げる。
 私も図書館に行ってみたいけど、その前にクラスの確認をしよう。

 クラス分けが張り出されている掲示板の前には既に多くの生徒がいて賑わっていた。
 自分の名前を探す。

「あった」

 僕のクラスは一年C組、ちなみにSからEまでの六クラスで、Sは成績が超優秀で推薦された者しか入れず、Eクラスは問題児を問答無用で放り込む特殊仕様で最初は生徒はいないらしい。
 それ以外は成績などをみて先生が振り分けていると、学園から渡された説明書に書いてあった。
 あの冊子、読むの大変だけど読まないともっと大変な目に合う予感がする。

「さて、教室に行くか」
「ちょっと待ちなさい」
「はい?」

 呼び止められた僕は振り向いた。
 そこに立っていたのは黒髪の美少女、背筋を伸ばし堂々とした態度からは自信のようなものを感じる。

「あなた、名前は?」
「何か用でしょうか?」
「平民が!質問に答えなさい!」

 大きな声に周囲の注目が集まる。
 何なんだこの女……。

「私はアリスティア・フォン・マルグリッダ。由緒正しき侯爵家の人間よ!」
「天誅!!」

 偉そうに名乗った黒髪の美少女が視界から消え、轟音が響いた。
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