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三食昼寝、家族付き

第888話

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 お正月の締めとして、今年はあの行事をやりたい。
 その名も「どんど焼き」。

「どんなイベント?」
「無病息災とか五穀豊穣を祈る行事かな」
「この餅と団子は?」
「熾した火で焼いて食べるんだよ」
「ほほー」

 感心しながら団子を手に取って眺めるアー君、珍しいことに尻尾が僕の腕に絡みついて離れない。
 ダンジョンボスの求婚が若干トラウマになっている模様。

『お団子こーろころー』
「シャムス上手だね」
『えへへー』

 白、緑、ピンクの三色団子はドリちゃんに用意してもらいました。
 コロコロ丸めるのが楽しいらしく、本日は幼児達も大人しくお手伝いしてくれている。

「マールスも凄いぞ」
「てれますなー」
「涼玉様のためにー」

 分身する便利さに目覚めたマールス、本日も七つに別れて団子を丸める手伝い中。便利です。
 人数がいるからねー、たくさん作って好きなだけ食べたい。

「かあちゃ、さつま芋とか焼いていい?」
「火加減を調整してくれるならいいよ」
「やったー!」
「涼玉、火が出てる」

 餅を焚火で焼くだけでもいいけれど、せっかく思い出したのでやろうと思い立ったけど……知識があいまいなんだよなぁ。
 燃やすあれってやぐらだっけ?
 竹を組んだだけのものから、立派なやぐらを作るものまで地域によって違うんだっけ?

 そんな事を思いながら団子を丸めていたら、えっちゃんが影絵でどんど焼きの解説をしてくれた。
 えっちゃん、古代から生きているだけでなく影さえあればどこにでも行けるらしくって、当然のように地球の行事あれこれにも詳しかった。
 ピンポイントで日本の行事に詳しいのは、騎士様が理事長を務める学校が日本にあることを知り、遊びに行くついでに日本各地の伝統知識を仕入れたかららしい。

 失われつつある日本の伝統が、異世界で守られている不思議。
 この間タイガがえっちゃんに日本人形の作り方指導してもらってた。

 つまりまぁ、えっちゃんに聞けばやぐらの作り方もわかるんです。

「ふんふん、俺でも作れそう。ママ、やぐら俺が作っていい?」
「いいよ」
「庭でいい? すぐそこに作れば料理取りやすいし」
「屋敷に燃え移らないようにできる? あと地面のフォローもしてね」
「楽勝! パパが全部やるから!」

 細かいことは騎士様に丸投げなんだね、了解。

「藁はマシューの所でもらって、竹は竹林からとってくればいいか。行ってきます!」
「にいちゃ張り切ってるなー」
『厄払いするの』
「団子うまー」
「こら涼玉! つまみ食い禁止!」
「無意識だった!」

 マールス……普段どれだけうちの子を甘やかしているの?

「涼玉様、さつま芋以外にも焼きますか? えっちゃん殿が肉も勧めています」
「食べる!!」
『えっちゃん、きのこもいーい?』
「!」
「まま、きのこ巻き巻きおねがい」
「シャムスはきのこ好きだねぇ、ドリアンきのこの在庫ある?」
「ハイ」

 自然に優しいドリちゃん製のホイルを取り出し、各々好きなものを包んでいく。
 僕は何がいいかなぁ、焼いたみかんとか好きなんだよねぇ。

 肉やリンゴ、きのこのホイル焼きの用意が出来る頃、アー君のやぐらも完成した。
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