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湯水のごとくお金を使おう
第732話
しおりを挟む会場にもふもふズ付きで放流していた幼児が目をキラッキラさせて戻ってきた。
「ママ、今日の庭、すごい!」
「わたあめ貰ったの」
「……」
興奮するアー君とシャムスに対し、一心不乱にとうもろこしを食べ続ける涼玉。
庭で何があったのだろうか。
「婚姻祝いにとマシューとナーガから砂糖がレシピとともに提供されたらしく、甘いものを中心に屋台が賑わっております、涼玉様は焼きとうもろこしがお気に召したようですぞ!」
「……」
涼玉の目がうつろな気がするけど大丈夫?
聖なるさつま芋で作ったおやつを前にしたイネスみたいになってるよ?
「刀雲、行ってみよう」
「そうだな」
「はいはい! 俺も行く!」
ご機嫌な女神様に絡まれ、延々とBL語りをされていた騎士様が慌てて立ち上がった。
「パパも行くのか? じゃあほい」
「アー君ったら、甘え上手!」
もふもふズに乗っていたアー君が抱き上げろと騎士様に手を伸ばせば、ハートを飛ばしながら騎士様が嬉々としてアー君を抱き上げた。
「シャムスはどうする?」
「キーちゃんに乗ってる、パパお酒のんでいーの」
「っつ、シャムスが天使!!」
うちの子供達は一人残らず天使ですね。尊い。
「冷え冷え生ビールとかあとギレンも参加してたな、扱ってる屋台ピカピカしてたから見に行きたい」
ギレン、労働者側なのね。
アカーシャにお願いされたんだろうなぁ、甘いったら。
「あれあれ」
アー君が示した先には学生らしき少年達がいて、光る電球片手にきゅうりをボリボリ食べていた。
光る物体の正体も分かった。
「あれ知ってる。電球ソーダだ」
見た目も派手だしお祭りにぴったりだと思う、もしかしてアカーシャに貢ごうと輸入したらお祭りに投入された流れ?
ありえるなー。
飲み終えたゴミは会場の各所に配置されているスライムに渡せば回収して貰える、うっかり料理を落とした時もスライムにお任せ。
環境と給仕の人達に優しい職場です。
庭に出たら日が落ちていい感じに暗くなった庭を、各所に配置されたカンテラが照らしていた。
家族連れはもちろん、カップルから学生まで様々な人が電球ソーダを楽しんでいるので、なかなか面白い光景になっている。
座るスペースも用意されているけれど、食べるのに忙しく皆さんあまり使っていないようです。
一種類でも多く食べるため、シェアする人が多いようだ。
「見事なアンティークですな」
「いえいえそちらのグラスセットも素晴らしい」
「タイガ様作のティーセットとは良く手に入りましたな」
「そちらの銀食器も美しい、このセットはこの前のバーゲンでアルジュナ様に勧められたのですよ」
お互いの食器を誉めあっているのは、前回のパーティーで神薙さんに自慢の食器を料理ごと食べられた面々だった。
タイガの作品も売ったのかぁ、そりゃ金貨が噴水のように湧き出るよねぇ。
「黒様、はいどうぞ」
「んっふーーーー!!」
涼やかな声にそちらを向けば、闇に溶けそうな黒い衣装をまとったレディが肩に黒ちゃんを乗せ、一緒に電球ソーダを楽しんでいた。
どうやらカップル用に二股ストローがあるようだ、アカーシャといちゃ付きたかったんだろうなぁ、報われない下心になんかホロッとくるものがあるよ。
「じいちゃん、あのぐるぐる食べたい! トルネードポテトだって!」
「おうおう」
「野菜も食え」
「きゅうりはいーーやっ!」
「ネヴォラ、冷やしパインもらって来たゾ」
「あーん」
ネヴォラと保護者ゴブリンも来ていたようです、入場制限はないようだ。
しかもネヴォラの教育の一環なのか、腰巻だけでなくちゃんと上に服を着ているから偉い。
ゴブリンを見ながら「あれ俺の服」と悲しげに呟く人がいたけど、きっと初級ダンジョンで装備を奪われた本人だろう。
「留守番のじいちゃんにも食べさせたい、持ち帰っていーですか?」
「ネヴォラやゴブリンにはいつも稼がせてもらってるからな、用意するから待ってな」
屋台のおっちゃんも気前が良かった。
周囲の店主も話を聞いていたようで、アイテムボックス持ちのゴブリンにあれこれと渡している。
「刀雲、これ香ばしくて美味いよ」
「俺知ってる、カルメ焼! 家でも作れるやつ!」
「アー君は物知りだな、今度家で作ろうか」
「おう!」
カルメ焼を片手に戻ってきた騎士様、アー君にセリフを取られた上にお菓子も奪われたようです。
「アー君美味しい?」
「うん、次は焼きとうもろこしもう一本な、涼玉がドはまりしてるんだ」
「うまい……うまい……」
「大丈夫なの、あれ?」
変な成分は入ってないはずなんだけどね、なぜ涼玉だけこんな状態になっているかは不明です。
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