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巡り合い

第513話

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 号泣する黒ちゃん、慰めるお嫁さん、涼玉の背中に種を放り投げるアー君、場はカオスの一言。

「おお、にょきっとした!」
『涼ちゃんすっごいねぇ』
「にいちゃ、これ一個だけ問題がある! 俺、採れない」
「大丈夫だ特に問題ない、成長促進しただけだ、植え替えるから!」

 うるうるし始めた涼玉に慌てながらも説明をしている。
 アー君って何気に兄弟の涙に弱いよね。
 兄弟の数だけ弱点がある……逆鱗とも言うけど。

「涼玉の魔力を吸って生えたからきっと新種だぞ、新しい名前つけよう」
「がぅぅ」
『ヴィシュちゃん!』
「へい! お呼びでしょうかっ!」

 瞬間移動で女神様が出現した。
 歩いて来れる距離にいたはずだけど、お酒が入っていて真っ直ぐ歩けないのか、一秒でも早く駆け付けるため、どっちだろうか。
 それはまぁいいとしても、挨拶からすでに媚びている女神様に僕はどういった反応をしたら良いのだろう。

「ルビーロマンを涼玉の背中に植えたら新種が生えた!」
『お名前つけて』

 普通こんなに簡単に新種は増えない。
 だがいまさらですね!

「それなら「プレナイト」という名前はいかがでしょう、ブドウ石とも呼ばれて色と形状がマスカットにも見える宝石の名前です」
「涼玉の名前も葡萄の品種だし、ぴったりだな!」
「お役に立てて何よりッス」

 うわぁ女神様、幼児相手に揉み手してるよ、腰というかプライドというか、色々低いなぁ。

「お礼にこれやる」
「これは?」
「梅酒の原液で作った聖属性付きの氷。体の内からスッキリするって神薙様に好評」

 それ、若干浄化されていませんか?

「ありがたく」

 恭しく受け取ったけど、目は氷に釘付けです。
 あれは帰って楽しむ気だな。

「これ美味いな」

 ガリガリと氷をかじっているのは雷ちゃん……って、こらーーー!!

「ダメでしょ雷ちゃん、君はまだ幼児!」
「成人した! 子作りしたし子供もいるからセーフ!」
「今は幼児でしょ! っめ!!」

 アー君も何で渡すかなぁ、まったくもう。
 氷を回収し、どこに捨てようか迷っていたらヒューちゃんがさっと僕の手から奪い取って食べてしまいました。
 雷ちゃんの食べたものは誰にも渡さないとかそういった感じですか?

(色白美人な襲い受、そしてヤンデレ、いいねぇ)

 近くにいるのに脳内に語り掛けてくる女神様、お酒が入っているせいもあってご機嫌ですね。

「イツキさま、おつまみください」
「はいはい」

 この方にはスルメで十分。
 渡したら嬉々として食べ始めた。

 女神様、胡坐をかくのはさすがにやめましょう?
 ここ人目ありますからね。
 目で訴えたらそっと足を戻した、気を抜きすぎですよ。

(レイア様が胡坐だからつい)
(愛の女神と戦女神のイメージの差ですね)

 国民の九割以上に正体バレている気もしますが、自分で築いた女神像ですから頑張って取り繕ってください。

「イツキ殿~、新作の差し入れ持ってきたぞ~」

 タイガの子供を引き連れ挨拶に来たのはグラちゃん、まさに千客万来。
 
「ぶふっ、げふっ、ちょ、ごふ、まっ、げほっげほっ」
「もう女神様、汚いですよ」

 グラちゃんを見た女神様が突然吹き出した。
 しかも気管支に入ったみたいでなかなか収まらない。

『きちゃない』
「にいちゃ、クリーンして」
「はいよー」
「あっ、やべ」

 むせる女神様になにやら心当たりがあったのか雷ちゃんだけ反応が違う。
 今度はナンダロナー?
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