神様のポイント稼ぎに利用された２

保護者の居ぬ間に

第432話

　三匹とシャムスがやけに静かだと思ったら、忍者コーナーでイブから商品説明を受けていた。

「こちらの鎌は折り畳み式で、持ち運びに便利なので農業の子達に推す予定です」
「こっちは？」
「振り杖と言って棒の中に鎖が仕込まれている武器です」
「がぅ」
「忍びくま手と呼ばれる道具です。竹の管に縄が通されていて、かぎ爪が付いている反対側の縄を強く引くと一本の長い竹が出来る道具です」

　しかも竹は神薙さん邸の近くにあるあの竹藪の竹を使用、邪神の影響で普通よりしなやかで強靭。
　使用の対価は筍料理、または屋台料理十人前。

　他には定番の手裏剣、苦無、縄梯子などなど、イブお勧めの忍び道具がずらり。
　使い方が分からない忍具はイブの解説付き。

　と言う内容を春日さんが補足説明をしてくれた。

「武器とか売って大丈夫ですか？」
「ターゲットはダンジョン攻略を目指す冒険者、意外とダンジョン攻略のための道具って売ってないから狙い目なんだよ」
「そうなんですか？」
「ああ、そもそもまともに攻略できるような難易度がこの辺なかったしな！」

　うちの子がダンジョン作るのに目覚めたけど、人間基準で作らなかったせいで難易度が修羅でしたものねー。
　初心者向け作ったけど、入口付近は子供も入れるぐらい安全だし。

「なかった？　あれ、もしかして新しくダンジョン作る予定でもあるんですか？」
「おう、買い食いしてたら冒険者に泣きつかれた」

　どんな状況だそれ。

「酒場で夕食奢ってもらって、チビ達にもお土産もらったからお礼に中堅以上向けダンジョンの構想を練っているところ」
「……神社の子達が学園に通う件は解決しましたか？」
「その費用を稼ごうと思ってだな」
「学園は基本無料です」
「ぐ、ぐぅぅ」

　この人、基本的に怠け者なんじゃ。

「楽しいことを優先するのは仕方ないよな？」
「契約も大事ですよ」
『春日しゃん約束守ってないの？』
「タイガの孫の件だろ？　学園に通うために制服や鞄の大量発注してたぞ」
「やっべぇ」
「手伝うから、ちゃんと契約は守ろうな？」
「へーい」

　幼児に説教される神様ってここでしか見れないよね。

「母様、僕これ買ってもらっていい？　すごい使いやすいんだ」
「刀ペンは日本でも人気商品なんだぜ。それは地味に魔道具に改造してあって、魔力を込めるとインクが無限に使える。他に欲しいものがあるなら言えよー」
『アー君どうしよ、どれにする？』
「ふぁぁぁぁ」
「アカーシャ、チケットをダロスに渡して、プレゼント受け取って」
「はい」
「ご利用ありがとうございます」

　キリッとしながら定形通りの言葉を言っているけれど、その腕に抱いたアー君はそのままだ。

　どんなものが貰えるのかなーと思ったら、スライムが体内からズルリと布を取り出して白熊さんに渡した。
　えっ、そこに収納してるの？

　個々に渡された来店プレゼントは海老やたまご、まぐろ握りなど、定番の寿司が両面にプリントされている寿司Ｔシャツだった。
　これを着ろと？
　いらない、心底いらない。

「う、うわぁ……いら」
『きょわぁぁあ』
「すげーすげー！！　いいのか、これ貰っていいのか！？」
「帰ったら皆で着てみようね」

　僕の声を遮ったのは子供達の大喝采。

　えっ、嬉しいの？
　嘘ぉ。

「たみゃごあるよ」
「俺のサーモン、あった！」
「肌触りもいいね」
「イツキ、日本人がドン引きするような商品でも外国人受けはいいこともあるんだぜ」
「えー」
「まぁイツキの感性じゃ羞恥が強いか、じゃあもう一つの方をやろう」

　春日さんがスライムに手を出すと別のＴシャツがその手に渡された。

「……」

　背中に大きく「寿司」と書かれたＴシャツ。
　微妙な気分です。
　でも無料でもらえるものだから我慢しよう、背中だから自分に見えないしね。

　いらないぃぃい。