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保護者の居ぬ間に

第430話

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 気分を変えよう!と言って春日さんが一瞬で着替えた。
 金の刺繍が入った真っ赤な着流しを緩く着ているその姿は、なぜだろうかお金持ちのマダムに飼われていそうな感じがします。
 溢れる色気が余計に愛人っぽい雰囲気、和服が似合ってないのかもしれない。

 でも時代劇にもたまにこんな感じの人いるよなぁ、大抵が女性に寄生するダメ男だけど。
 稀にダメな男を装ったご落胤って場合もあるけどね。

「イツキ、延々と失礼なことを考えてないか?」
「気のせいですよ」

 騎士様みたいに心の内を読める人でなくて良かった。
 危ない、危ない。

「まぁいいか、それより隣を見ろ」
「え、盗み見ですか?」
「違うっての、物騒な話ばかりじゃなく、イツキの好きそうなほっこりストーリーがあると証明したいだけだって」

 示された席には野点傘が添えられた席が一つ。
 そこに座っているのはゴツイ装備の冒険者、よく見ると膝には小さなスライムが鎮座していた。

『スライム!』
「シャムスのスライムだな」
「ぷるるん、健康そのもの!」

 距離が離れているため、何を話しているかは分からないけれど、注文したセットのほとんどはスライムに食べさせている気がする。

 あれ、あの人ってこの間おみくじでスライム当てた人じゃないかな?
 装備の質が良くなっている気がする。

「あかいのきれーね、かしゅがの色!」
「そぉ? 気に入った?」
「かすがのお顔もまっか!」

 わぁシャムスの褒め言葉に春日さんが本当に照れてるー、珍しいものを見せてもらった。

「野点傘だっけ、あれいいなぁ、武器に使ったらかっこ良さそう」

 こんな感じに!とエア傘を振り回すアー君、アカーシャの笑顔が怖い。

「武器とかに使われてるのは番傘だと思うよ」
「売ってないかな?」
「どうだろう?」
「ご馳走様、見てくる!」

 ぴょーんと飛び出したと思ったら、くるんと一回転して保育園児ぐらいに姿を変えると店舗の方へと駆けて行った。
 瞬間移動並みの素早さで白熊さんが出て来て、アー君を抱え上げたので大丈夫だろう。

「そう言えば佐助も白熊さんもこっちへ近付かないけどどうしたんだろう?」
「いつもなら僕の膝でひっくり返っていても不思議じゃないのにね?」
「茶屋で働く上で多少ルールはあるからな、その一つに「仕事中は私情に走らない」ってのがあるんだよ」

 アカーシャと二人、首を傾げていたら春日さんがそう教えてくれた。

「じゃあ今アー君を白熊さんが抱え上げたのは良いのですか?」
「あれは従業員が客を保護したってことでセーフ」

 仕事上の業務としてなら接触可能って事か。
 僕がほへーっと納得していると、シャムスの口周りを拭いていたアカーシャがそっと手を挙げた。

「ん?」
「あの、もしかしてもふもふズがお客さんに侍っているのって」
「仕事の一環だよ、安らぎと癒しを与えて口を軽くさせているんだ」

 健全と言えば健全、なのかもしれない。
 実際はただのハニートラップだよね。
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