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ダンジョン

第370話

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 僕は結局帰宅しそびれました。
 だって夕食はここに届くらしいし、何より子供達がお店のお手伝いしているんだよね、置いて帰るわけにもいかないので屋台を借りて持ち歩いているお肉を焼いています。

 屋台の店主は神薙さんの敷地内でケバブ売りをしているおっちゃん、今日は家族で一日ケバブ売りをしていたのだけど、お肉が切れてしまってお嫁さんが養子にした熊さんと森に一狩り行っているとの事。
 本当にこの世界の女性は逞しい。

 何度が我が家の庭で焼肉の手伝いをしてもらった事もあり、おっちゃんも色々心得ているので僕が何を出しても驚かない。
 ドラゴンの肉が出ても驚かな……あ、ちょっと目を見開いた。

「次はこれをどうするんです?」
「トマトや焼いた卵焼きと一緒にパンに挟みます、ハンバーガーっていうんですよ、僕の故郷の軽食です」

 試しに一つ作ると周りから「おおー」と歓声が上がった。
 いつの間にやら屋台が筋肉に囲まれている。

 午後の部がもうじき終わるかなーという頃、森の方から冒険者の集団が次々と姿を現したんだ。
 冒険者にも仕事を終了させる時間があるのかもしれない。

 この場合は売るべきか、無償で振舞うべきか。誰か教えて。

「母様、ギレン連れてきたよ!」

 どうしたらいいか分からないまま、二個目を作ろうとした所でアカーシャがギレンを連れて来てくれた。
 頼られたのが嬉しいのだろう、目尻が下がってデレデレだ。

「ギレンお願いね」
「任せろ」

 腕まくりして僕と場所を変わったギレンが次々バーガーを作っていく、バンズパンを見ただけで何を作るか理解してくれるから地球を知っていると便利だね。
 そう言えば前世でもたまにギレンにハンバーガーを奢ってもらったっけ。

 あの時は……まさかドラゴンの肉でハンバーガーを作る日が来るとは思わなかった。

「母様、僕らは後ろで食材切ろう」
「うん」

 あれぇ立場が逆転してる?
 まぁいいか。

「金額はギレン任せで大丈夫?」
「大丈夫だよ」

 お金取っても良かったのね、そっか。

「あっ、ボスが何か旨そうなの作ってるー」
「奢ってくださーい」
「アカーシャ様お疲れ様です!」

 軽装の集団はギレンの所の騎士だったみたいで、ギレンに奢って奢ってとねだりながらも肉厚で、とかチーズ多めでなど遠慮なく注文を付けている。
 それを聞いて覗いていた他のお客さんも野菜抜きでと言い始めた。

「お前らうるせぇよ、出されたものを食え」
「ちょっと待った、こっちに来るの魔王様だぞ」
「素敵、筋肉素敵! 抱いて!」
「母よ、手伝う」
「ありが――」
「魔王様サインください!」
「抱いて! 子供欲しい!」
「想像だけで妊娠できる!」

 ギレンの部下さん、変態が多いね。
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