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ダンジョン
第358話
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薄く化粧が施され、口には紅。
黒い髪を飾るのは桜の形をしたつまみ細工。
身を飾るのは春を思わせる桜が舞う着物。
帯には多数の宝石が散りばめられ、それもまた桜の形をしている。
華美になり過ぎないよう、全体的に抑えようとはしているけれど抑え切れていないと言うか、全体的にお金かけてある感が凄い。
愛情が溢れているよ。
誰だアレ。
いや、もう一人の僕だけど。
双子が来る事は聞いていた。
けどヴァルと僕の分身?が参加するのは聞いてないなぁ、ついて早々に話し合い始める辺りかなり真面目に領地経営やっているみたいだね。
料理は沢山作ってあるから問題ないけど、それにしても最早僕と別人だよねアレ。
ヴァルの寵愛を一身に受け入れるとああなるのか、僕は着飾るの拒否してたからな~、だって装飾品って意外と重いんだもの。
……どこで仕入れたんだろうあの着物を始めとした装飾品の数々。
「桜、と名を改めました。これからもヴァルの伴侶として宜しくお願い致します」
「それで衣装も桜尽くしなんだね」
耳を飾るイヤリングも桜色だ。
「僕を作る時に使われた基が桜を愛でているものだったせいか、色一つ選ぶのもヴァルの黒か桜色を選んじゃって、気付いたこんな感じ」
「基礎って大事なんだね」
僕の基礎は腐女神様の腐った妄想だから誰にもどうにもならない、そしてコピーも出来なかったみたいでタイガの中のイメージが分身の桜には強く反映されたようだ。
ただでさえ美化されていた外見が、磨きに磨かれた上に着飾ったおかげでぱっと見、僕と別人だよね。
「これどこで買ったの? 神薙さんの着物作ってほしいかも」
「ガルーダの試作品なんだ」
「え、凄い」
ナニソレ、ガルーダそんな技術持ってたの?
「そして完成品があちら」
促されて視線を向ければ、薔薇と共に大量の貢物をヘラ母さんに差し出しているガルーダの姿がそこにあった。
『開けてみよー』
「早く早く」
「食べ物ないか?」
山に積まれた貢物、神薙さんのものには手を出さないけれど、神薙さん以外には全く遠慮しない幼児達が小さな手で開けようと苦戦している。
神薙さん以外のも勝手に開けちゃ駄目だよ?
「開けたら、受け取らなきゃいけないじゃないか」
「開けてください! ぜひ!」
『わーい』
「ばーば開けてー」
「これ、これは食べ物の匂いがする!」
受け取り拒否するヘラ母さん、押し売りするガルーダ、素直に貰い受ける幼児三人組。
『開かないのー』
「っく、この小さな手が」
「開けてー、ままー」
僕らは同時に顔を見合わせて幼児達の側に行き、言われるがまま開封作業を始めた。
だってほら、母さんは受け取り拒否しているけれど、好意に戸惑っているだけと僕らは知っているからね。
雷ちゃん曰く、モンスターの間で繁殖など考えていなかったから、自我や感情設定もしていないらしい。
僕との接触で自我を持ったけれど、基本的にヘラ母さんにとって愛情は与えるもの、与えられると言う事に戸惑うのも当然、設定に含まれてないから。
対するガルーダはモデルが佐助だから自我は最初からあるし、感情というかテンションが高めなんだとか。
愛すると一直線、奴隷レベルで尽くして尽くして尽くしまくる。
『すっごいねぇ』
「この牡丹の大輪、タイガも顔負け」
「こっち手作りバームクーヘン、……ばーばぁ」
「食べていいよ」
「うふふ、いただきまーーす!」
「あ、雷ずるいぞ! 母上切って!」
『雷ちゃんあーん』
「それ共犯」
『んふー』
「もぉぉぉ」
取り上げる暇なくバームクーヘンはシャムスと雷ちゃんの胃に消えた。
あのね、アー君が泣きそうだよ、一口ぐらい分けてあげて欲しかったなぁ。
「いらないなら売って子供達のおやつ代にしてください、また新しく作ります!」
「バカだねぇ」
売るって、買い取ってくれる人いるかな、これ相当なお値段になると思うよ。
だってガルーダの手作りって事は、素材はあのダンジョン……じゃなくて領地で取れる素材を使っているだろうし、こう見えて防御力とかかなり高そうだよね。
「俺の本命はこちらです、ヘラさんの手で開けてください」
「仕方ないね」
ヘラ母さんが段々ツンデレっぽくなってきた。
渡されたのは板っぽいのだけど、もしかして絵とか?
絵も描けるの?
ガルーダ凄い。
「……っ」
「いらなかったら捨ててもいいですからね」
言いながらガルーダがにんまり笑っている。
なんだなんだと子供達が母さんの体によじ登り、母さんの手元を覗き込んだので僕らも便乗。
『ぼくだ!』
「俺もいる」
「あの天井から逆さに生えてるのイブじゃないか?」
温かみを感じる優しいタッチで描かれたそれは楽し気な宴会風景だった。
神薙さんが樽でお酒を飲んだり、刀雲とレイアさんが腕相撲しているその横、皆に埋もれてちょっとだけ分かりにくい中央から外れた所にガルーダとヘラ母さんが並んで座っている。
ちらっと見たら母さんもそれに気づいたのだろう、ぐぬぬぬと悔しそうに眉間に皺を寄せて葛藤しているよ。
これは捨てられないよねぇ。
ガルーダのにまにま笑いの意味が分かったよ。
黒い髪を飾るのは桜の形をしたつまみ細工。
身を飾るのは春を思わせる桜が舞う着物。
帯には多数の宝石が散りばめられ、それもまた桜の形をしている。
華美になり過ぎないよう、全体的に抑えようとはしているけれど抑え切れていないと言うか、全体的にお金かけてある感が凄い。
愛情が溢れているよ。
誰だアレ。
いや、もう一人の僕だけど。
双子が来る事は聞いていた。
けどヴァルと僕の分身?が参加するのは聞いてないなぁ、ついて早々に話し合い始める辺りかなり真面目に領地経営やっているみたいだね。
料理は沢山作ってあるから問題ないけど、それにしても最早僕と別人だよねアレ。
ヴァルの寵愛を一身に受け入れるとああなるのか、僕は着飾るの拒否してたからな~、だって装飾品って意外と重いんだもの。
……どこで仕入れたんだろうあの着物を始めとした装飾品の数々。
「桜、と名を改めました。これからもヴァルの伴侶として宜しくお願い致します」
「それで衣装も桜尽くしなんだね」
耳を飾るイヤリングも桜色だ。
「僕を作る時に使われた基が桜を愛でているものだったせいか、色一つ選ぶのもヴァルの黒か桜色を選んじゃって、気付いたこんな感じ」
「基礎って大事なんだね」
僕の基礎は腐女神様の腐った妄想だから誰にもどうにもならない、そしてコピーも出来なかったみたいでタイガの中のイメージが分身の桜には強く反映されたようだ。
ただでさえ美化されていた外見が、磨きに磨かれた上に着飾ったおかげでぱっと見、僕と別人だよね。
「これどこで買ったの? 神薙さんの着物作ってほしいかも」
「ガルーダの試作品なんだ」
「え、凄い」
ナニソレ、ガルーダそんな技術持ってたの?
「そして完成品があちら」
促されて視線を向ければ、薔薇と共に大量の貢物をヘラ母さんに差し出しているガルーダの姿がそこにあった。
『開けてみよー』
「早く早く」
「食べ物ないか?」
山に積まれた貢物、神薙さんのものには手を出さないけれど、神薙さん以外には全く遠慮しない幼児達が小さな手で開けようと苦戦している。
神薙さん以外のも勝手に開けちゃ駄目だよ?
「開けたら、受け取らなきゃいけないじゃないか」
「開けてください! ぜひ!」
『わーい』
「ばーば開けてー」
「これ、これは食べ物の匂いがする!」
受け取り拒否するヘラ母さん、押し売りするガルーダ、素直に貰い受ける幼児三人組。
『開かないのー』
「っく、この小さな手が」
「開けてー、ままー」
僕らは同時に顔を見合わせて幼児達の側に行き、言われるがまま開封作業を始めた。
だってほら、母さんは受け取り拒否しているけれど、好意に戸惑っているだけと僕らは知っているからね。
雷ちゃん曰く、モンスターの間で繁殖など考えていなかったから、自我や感情設定もしていないらしい。
僕との接触で自我を持ったけれど、基本的にヘラ母さんにとって愛情は与えるもの、与えられると言う事に戸惑うのも当然、設定に含まれてないから。
対するガルーダはモデルが佐助だから自我は最初からあるし、感情というかテンションが高めなんだとか。
愛すると一直線、奴隷レベルで尽くして尽くして尽くしまくる。
『すっごいねぇ』
「この牡丹の大輪、タイガも顔負け」
「こっち手作りバームクーヘン、……ばーばぁ」
「食べていいよ」
「うふふ、いただきまーーす!」
「あ、雷ずるいぞ! 母上切って!」
『雷ちゃんあーん』
「それ共犯」
『んふー』
「もぉぉぉ」
取り上げる暇なくバームクーヘンはシャムスと雷ちゃんの胃に消えた。
あのね、アー君が泣きそうだよ、一口ぐらい分けてあげて欲しかったなぁ。
「いらないなら売って子供達のおやつ代にしてください、また新しく作ります!」
「バカだねぇ」
売るって、買い取ってくれる人いるかな、これ相当なお値段になると思うよ。
だってガルーダの手作りって事は、素材はあのダンジョン……じゃなくて領地で取れる素材を使っているだろうし、こう見えて防御力とかかなり高そうだよね。
「俺の本命はこちらです、ヘラさんの手で開けてください」
「仕方ないね」
ヘラ母さんが段々ツンデレっぽくなってきた。
渡されたのは板っぽいのだけど、もしかして絵とか?
絵も描けるの?
ガルーダ凄い。
「……っ」
「いらなかったら捨ててもいいですからね」
言いながらガルーダがにんまり笑っている。
なんだなんだと子供達が母さんの体によじ登り、母さんの手元を覗き込んだので僕らも便乗。
『ぼくだ!』
「俺もいる」
「あの天井から逆さに生えてるのイブじゃないか?」
温かみを感じる優しいタッチで描かれたそれは楽し気な宴会風景だった。
神薙さんが樽でお酒を飲んだり、刀雲とレイアさんが腕相撲しているその横、皆に埋もれてちょっとだけ分かりにくい中央から外れた所にガルーダとヘラ母さんが並んで座っている。
ちらっと見たら母さんもそれに気づいたのだろう、ぐぬぬぬと悔しそうに眉間に皺を寄せて葛藤しているよ。
これは捨てられないよねぇ。
ガルーダのにまにま笑いの意味が分かったよ。
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