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ダンジョン

第340話

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 お昼は中庭に張られたテントの下で食べました。
 果物を中心としたメニューが多いかな、ダンジョンでこれらの食材をどうやって……とか難しい事を考えてはいけない、きっと物語の裏で誰かが頑張って用意してくれているのだろう。

 あとね、凄い幸福な空間だったよ。
 多種多様な毛並みの狼が給仕してくれたんだけど、七色だったり、金色だったり、翼を持っていたりなど、もう普通の狼ではなかった。
 たぶん全員ラスボス級なんじゃないかな、もふらせて貰ったけどキーちゃんと並ぶ手触りだった。強さと毛並みって比例するのだろうか。

 子犬サイズもいて、ちょっと駆けっこしたけど無理、追いつけなかったです。

「いき、息が、苦しい」
「神子、休憩取ろう、座って」
「うん」

 再び主の膝の上に戻りました。
 果実水をもらい、息を整えていたらデザートが運ばれてきた。

 デザートを持ってきたのは龍と狼が混合したような子だった、ここで気付いたんだけどさ、この子達もしかしてなんらかのゲームのキャラクター?
 ありえるよなぁ、女神様の趣味って多彩で今だ不明瞭なところあるし。
 それとも雷ちゃんの眷属にこういう子がいるのだろうか、謎が謎を呼ぶね。

「神子、次の部屋、案内する」
「ね、神子じゃなくイツキって呼んで?」
「……イツキ」

 僕の名前を舌に乗せ、嬉しそうに微笑んだ。
 美形の笑顔は攻撃力が高いね。

「私にも名前、イツキが付けて?」

 難易度高いな。

 いや待て、下手に名前を考えようとするから悩むんだよ、この子には天彗龍なになにっていう種族名があったはず、そこから取ればお悩み解決。
 思いだせたら苦労はしない、もう天ちゃんとかじゃ駄目、ですよね、ダンジョン主にちゃん付けはないってのは分かる。

 っぐ、困った時の女神様、今使えないかな、女神様ー、腐女神様ー!

(呼ばれた! 繋がった! イツキちゃああああん!)
(女神様、天彗龍ってなんて名前でしたっけ?)
(え、バルファルクだけど、そんなのどうでもいいんだよ、無事か、今どこの階層にいるんだよ!)

 じゃあそのままの名前を付けて、略称して呼べば特別感出るかな?

(あの、イツキちゃん?)

「名前はバルファルク、ヴァルって呼んでもいい?」
「うん」

 脳内で女神様がぎゃーぎゃー騒いでいるけれど、そっちに意識を取られてヴァルのご機嫌を損ねても僕が困る。

(いいから聞けって、お前なら聞けば教えてもらえるだろ!)
(はーい)

「ヴァル」
「なんだ?」
「ここって何階層?」
「最下層の百層、イツキとの巣を作るために広げた」

 ですって。

(え、マジ? 雷様は五十階層までしか作ってないって……そりゃ、いねぇわな……は、ははは)

 どうやら五十階層までは進んだらしい、けどそこにはいないし先へ進む道もなく、転移も使えないので行き詰っているらしい。
 もふもふに埋もれている間にそんな事になってたのか、なんか申し訳ない。

(ヘラに絞められて殺されるかと思ったんだぞ! 幼児に当たれない分、私への当たりがきつくて泣きそうなんだからなーー!)

 ご愁傷さまです、普段の行いって大事ですね。

 会話を終わらせる為に一つ女神様向けの情報を開示しよう、展示室であった出来事を女神様に簡単に説明した。

(冒険者がモンスターの奴隷……げへへ)

 集中力が切れたのだろう、通信はそこで終わった。
 やれやれ。
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