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権力とは使う為にある

第218話

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 その日はとても良い天気だった。
 暖かな日差しを浴びながら、縁側のいつもの場所ではシャムスが三匹とアー君に囲まれ絵本を音読していた。
 舌足らずなのがまた良い。

 僕は……

「樹、あーん」
「……」

 騎士様に後ろから抱え込まれ、魔力入りクッキー食べさせられています。
 ええ妊娠しましたとも!
 さすが騎士様、やる時はやるね!

「レイアの子も産まれるし、その子とラブラブになったら面白いだろうねぇ」

 創造主の御子と最強の女神の御子の掛け合わせ……生まれる前からチートが約束されてる存在ですね。

「あれほど増やすのが大変だった血族が、こんなにころころ生まれるなんて凄い世界観」

 直系を増やすためにあれこれ非道な実験をしてたとか聞いているけど、その数百年に渡る研究成果を嘲笑うかのように次々生まれる子孫たち、女神様の妄想力も役に立つ事があって良かったですねと笑えば良いのだろうか。

「魔力を良く練って~、強い子が生まれますよ~に~」

 不穏な事を言っているけれど、美声だからついうっとり聞き惚れてしまう。

 ああ何だか眠くなってきたなぁ。

「母上は寝てしまったのか?」
「うん、今度の子も中々成長が良いみたいだ」

 この声はアー君かな?
 まだ起きてるよ、ただちょっと、眠すぎて目を開くのが億劫なだけで。

「不思議なものだな、神々が目指した完璧な混血がこうも簡単に実現するとは」
「それを支えているのが女神の妄想力だからね、きっと過去の神々には理解出来ないんじゃないかなぁ?」
「だろうな、世界の理を弄るなど誰も考えつかんさ」

 ぷにっとした感触、これはアー君の肉球に違いない。

「ただの少年にしか見えないこの母から私は生まれた……ダロスと出会い、ルルーに求婚され、いつか私も母になるのか、複雑だな」
「ちょっと待った。アー君、今何か増えてなかった?」
「ルルーの事か?」
「そう、そいつ、誰?」

 僕も初耳だなぁ。

「レイアが連れて来た狐を覚えているか?」
「あいつか!」
「いや、あれの兄弟だ。銀狐でな、気紛れに焼き魚を振舞ったら懐かれた」
「は?」
「九尾になったら婚約してもいいと言ったら、魔王の所に就職したと頼りが届いた」
「俺は、どこから突っ込んでいいか分からないよ」

 同意です。

「濃い魔素のお陰で尻尾は三本まで増えたらしい」
「アー君潔いね! あれほど生まれるのごねたのに、婚約者二人目作っちゃうの?」
「どうせなら愉しみたい。嫁も出来れば欲しいと思ってる」
「産んだり孕ませたり忙しそうね!」
「母上を見ていて考えを改めたんだ」

 え、僕?

 話の流れ的にあまり良い事じゃなさそうだから聞きたくないなぁ、今すぐ寝落ちしたい、眠いのに中途半端に意識があって逆に辛くなってきた!
 騎士様ちょっと歌ってくれないかな。

「複数プレイの方が燃えそうだと」

 いやぁぁぁあああああ!!
 アー君そんな学習しなくていいからぁ! 忘れてー今すぐ色々忘れてぇぇぇ!
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