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貴族になろう

第187話

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 今、僕の身に不思議な事が起こっている。

「次はメンチカツ? はい、あーん」
「あ、あーん?」

 王子バージョンのルークに抱えられた状態で、マシュー君に食べさせてもらっているんだ。
 ただ不思議な事にマシュー君は僕に食べさせているのに、僕以外の意見を聞きながら口元に食事を運んでいる感じ。

 まぁ、色々な経験を積んできたからね、誰の声を聞いているかは大体わかる。

「水ですね、フルーツの味をしたのがいい? それってもうジュースじゃ……いえいえ、なんでもないです、はいどーぞ」

 本人は気付いているのかいないのか、すんごいナチュラルにお腹の子と会話している。
 
「〆はお茶漬けがいいって……今日のメニューにないですから……はいはい、作ってきます」

 どうしよう。

 うちの子が産まれる前からマシュー君を顎で使っている。

「マ、マシュー君、ごめんね?」
「いえ仕事なので……なんで怒るんだよ」

 わっかんねぇな。と言いながらマシュー君が台所へ消えて行く。

「あんまりワガママ言っちゃ駄目だよ?」

 ぽっこん

「イツキ、今のうちに食べたい物はないか?」
「うーーん、止めておく、お茶漬け食べなきゃいけないみたいだし」
「そう?」

 ルークのもふっとした尻尾がお腹を撫でる、無意識なのだろうか、きゅんとした。

 そんな風にまったりと夕食の時間を楽しんでいたら、いきなりベル君が爆弾を投下した。

「そうだマシュー」
「なんだ? ベルもお茶漬け食べたいの?」
「違う。母上から伝言があったのを忘れていたのだ」
「なんだろ?」
「うちの子にならぬか? 今なら期間限定末っ子気分が味わえるぞ」

 養子縁組のお誘いだった。
 固まるマシュー君に構わずベル君が話を進める。

「吾輩は留学するに辺り第二王子の身分を賜っているが、元々は辺境の貴族なので気軽に養子に来るとよい」
「いや……え、えぇ」

 養子って気軽になるものだっけ?
 あ、ブランも気軽に養子にしてた。全部事後承諾で。

「理由が欲しければいくらでも後付けするし、なんなら政略結婚を用意してもいいと言っていた」
「ちょっと待った、話が早い、ついてけない」
「なんと今なら! 孤児院に寄付をします!」
「!!」
「さらに! 快諾してくれたら辺境の勇者の指導付き!」
「のった!」
「こら!」

 自分の人生なんだからもっとキチンと考えなさい!

「だって辺境の勇者ですよ? すげぇぇぇ、え、握手とかしてくれるかな」

 マシュー君冷静になって、多分それってベル君ママの事だと思う、レイアさんが歴戦の勇士だって太鼓判押すぐらいだし。
 握手どころか頭撫でてもらってるよ、昨日は一緒に料理してたよ!

「刀雲、止めてよぉ」
「まぁいいんじゃないか? 悪い連中じゃないし、マシューの将来が保証される」
「確かに」
『大丈夫よ母様、マシューは刀国で暮らすから』
『そうなのか?』
『身分だけベルの弟になって、僕らの妹とけっこんしゅるのよ』
『マジか』
『お嫁しゃんいっぱい、幸せそーよ。レオちゃんもいるの』
『ハーレムな未来か、養うの大変そうだな』

 なぜだろうか、アー君が憐れむような視線でマシュー君を見ている。
 
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