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優しい人生を

第32話

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 この世界にもサンド系の食べ物はある。
 あれは確かこの世界に来てすぐの頃、ルークが差し入れてくれた食べ物がそれっぽかった気がするんだ。
 聞いたところ、片手で食べれて携帯に向いているので屋台や冒険者向けの店で人気商品らしい、ちょっと待った、『冒険者向けの店』ってなに。

「冒険者向けの保存食や食料を専門に扱う店だよ、あれすっごい面白い、この世界アイテムボックスがあるから鍋を渡せば期日には野営鍋が用意されてるんだよ」
「あの店か、あれいいよなー、利用するためにギルド登録した」

 ……騎士様だけでなく春日さんまで何やってるの!?

「魔物肉を持ち込めば調理もしてくれるんだよね~」
「最近は調味料が増えて味の幅が広がって、この間はドラゴンの肉調理してもらった。自然の中で食べるステーキ、最高だった」

 たまに姿を見ないと思ったら、どうやらこの世界で冒険を存分に楽しんでいたようだ。

「あの、匂いで魔物が寄ってきたりとかは」
「あるよ」
「あるんですか!?」
「この間は猪型の魔物が寄って来て、気まぐれに肉を分けたら懐かれて森の出口まで護衛された」

 まさかのほっこり物語。

「ゴブリンだっけ? 小さな魔物、あの群れにも囲まれた事あったなぁ、振舞ったらお礼に奇妙なダンスを披露されたよ」
「この世界にもいるんですねー」
「いるだろうねぇ、RPGとかで基本の魔物は一通り出現するよ。種類が多過ぎてさすがの俺もまだ把握しきれてない」
「わぁ」

 多分それは騎士様不在の間に女神様がせっせと魔物を追加しているからだろう、日本のおたく文化は日々新しい萌えを発信しているからね、そりゃぁ把握しきれないだろうさ。

「その前は神薙と遭遇して、危うく食糧根こそぎ喰われるところだった」

 下手な魔物と遭遇するよりたち悪い!

「店でそれを愚痴ったら、次に行った時『神様セット』が売られてた」
「なんですかそれ」
「祈りが捧げられた聖なる肉を使って作られた拳大の唐揚げとお神酒。教会経由での入手だから割高だけど、携帯しておくといざという時に神薙か魔物が助けてくれる――かもしれないセット」

 完全に神薙さんの好物セットだね。
 お店経営にクロードさんが参入したと見た。

「実際の効果はランダムで、セットを食べた魔物が見逃してくれたり、もふもふズらしき魔物が助けてくれたり、運がいいと神薙が出現する場合もあるらしい」
「どちらにしろ生存率が上がるアイテム扱い……」
「でも予約殺到の売り上げNo.1商品なんだぜ」
「春日さん詳しいですね」
「常連だからな」

 自慢げに断言された。
 うん、ちょっと羨ましい。

「拗ねるな、拗ねるな、屋台で買ったこれやるから」

 差し出されたのは二枚に切り分けた丸いパンに、チーズと魔物肉、葉物を挟んだサンドだった。

「ありがとうございます」

 一度でいい、自分で買いに行ってみたいなぁ。そう思いながらサンドを有難く食べようとした僕だったけれど、肉が硬くて食べれなかった。
 そう言えばこの世界の食材、基本硬いんだよね、ドリちゃん料理で忘れてた。

 お肉はおやつを食べに集まった子供達が食べてくれました。
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