上 下
791 / 844
第三章 世界に降りかかる受難

第778話

しおりを挟む
 今日の僕は神子召喚系のテンプレに巻き込まれました。
 何度目だろうか。

 僕の前にはチワワ系の少年と人生に影がありそうな少年、どちらも中学生ぐらいかな。
 呼び出されたのは謁見の間みたいな所で、王子の一人がチワワ系に駆け寄って「神子よ」と声をかける。ここまでの流れは最早王道。

 そのまま王子がチワワ系を唯一の神子と宣言しちゃうパターンかと思ったけど、それより早く周囲にいた司祭たちが動いた。
 シュバッと動いたよ、お花畑な王子を突き飛ばす勢いで僕の周囲に集まりました。

「神子様、神子様、ですね」
「黒髪、黒い瞳、見慣れぬポンチョに加護の特盛」
「ガチのが来た」
「天災級でございます」
「えー、国王陛下におかれましては、今すぐ土下座なりして全身全霊で謝罪をしないと国が滅びます」

 神子召喚をしたのはどこかの国だけど、実行させられたのはヴィシュタル教の司祭たちだったらしい、兵士に囲まれて強制的に連れてこられたから不可抗力です。と愚痴られました。
 どうやら僕が現れた事で気が大きくなっているようだ。存分に大きくなりたまえ、この国の未来は君たちの肩にかかっていると言っても過言ではない!

「あのはち切れそうなおデブが国王?」
「神子様、しっ、本当の事を言ってはいけません」
「ああそちらの貴方、巻き込まれてしまいましたね。こちらへ隠れていなさい」
「あちらの坊やは?」
「私たちに暴言吐いていましたし、放置で」

 影あり少年を保護、チワワ系を見捨てようとしている。
 理由に私情を挟みまくるのって聖職者としてどうなんだろう、ヴィシュタル教の司祭がどこまでも自由。

「おデブ何か叫んでる?」
「はい、子供には聞かせられない罵詈雑言ですね」
「大人の風上にも置けません」

 異世界に突如召喚された子供を見捨てようとしている大人が何か言ってる。

「私たちはお望みの通り神子召喚を実行し、この通り成功いたしました」
「ですので帰らせていただきます」
「ならぬっ!!」
「やーだーよー」

 大きな声だったけどただの否定の言葉だったので僕にも聞き取れました。
 司祭たちを帰らせないつもりかい?
 ふははは、僕がいる時点でそれは無理な相談なのである!
 彼らは女神様の敬虔な信者! 守るのも僕のお仕事です!

「く、国を見捨てると言うのか!!」
「少年たちを元の世界に戻せるなら助けてやってもいい」

 上から目線だって?
 だってどうやっても僕のほうが身分が上。
 こちとら保護者に神薙さんがいるんだぞ! 勝てると思うならかかってこい!

「帰す方法はありますけれど、帰す気があるかと言うとないでしょうね」
「あのおっさんの目的、魔王討伐させようって腹です」
「ぶっ潰せーー!」
「聞いていた以上にぶっ飛んでいる」
「魔王様は神子様を保護している筆頭ですからね、その次が神薙様、触れたら危険どころか地雷そのものです」

 えっちゃん先生、えっちゃん先生、帰還魔法の発動をお願いします!

「あっ、魔法陣が発動しました」
「どうする、あの王も一緒に飛ばしてもらうか?」
「異世界に迷惑かけたら神々に叱られるだろ」
「それもそうだな」

 こうして異世界召喚をされて数分、神子と偽神子は地球に返された。
 ……チワワ系はともかく、もう一人の方は一言もセリフがなかったなぁ。

 まだ魔法陣が発動していると思ったら、今度は僕と司祭たちが魔法陣に吸い込まれました。
 行先は彼らが拠点としている教会、今夜は打ち上げパーティーをするそうなので、食べたら帰ろうかな。今帰っても誰もいないだろうし、きっとその内迎えが来ると思うんだ。

 僕らが飛ばされる直前、入れ替わるように神薙さんとリザママを見た気がするんだもの。
 僕がいる世界で神子召喚は自殺行為なのである。なむなむ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

「今夜は、ずっと繋がっていたい」というから頷いた結果。

猫宮乾
BL
 異世界転移(転生)したワタルが現地の魔術師ユーグと恋人になって、致しているお話です。9割性描写です。※自サイトからの転載です。サイトにこの二人が付き合うまでが置いてありますが、こちら単独でご覧頂けます。

兄たちが弟を可愛がりすぎです~こんなに大きくなりました~

クロユキ
BL
ベルスタ王国に第五王子として転生した坂田春人は第五ウィル王子として城での生活をしていた。 いつものようにメイドのマリアに足のマッサージをして貰い、いつものように寝たはずなのに……目が覚めたら大きく成っていた。 本編の兄たちのお話しが違いますが、短編集として読んで下さい。 誤字に脱字が多い作品ですが、読んで貰えたら嬉しいです。

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

処理中です...