上 下
787 / 844
第三章 世界に降りかかる受難

第774話

しおりを挟む
 謎の闘技場を脱出しました。
 なお、偉そうな人達は脱出できません、今回は失敗したから次こそはなんてそうはえっちゃん問屋が卸さない。
 僕を巻き込んだ時点で詰みです!

 そして爆誕したムキムキの異形は当然ながら処分できない、だって子供たちと仲良くなってしまったから。
 どうしようかなー?
 困った時の魔王様である。

「こんちゃ」
「うむ、ちゃんと挨拶できて偉い」

 突撃訪問でも怒らない魔王様、懐の大きい大人である。

 召喚されて奴隷っぽい大人たちがもごもごしてモザイクになって、最終的に子供たちにヒーロー扱いされる異形になったと説明した。
 魔王様が眉間を揉んでいる。どうやら頭痛がするらしい。

 分かる。
 騎士様もよくアー君たちのやらかしに同じ動作してるから。
 付き合いが長いと行動も似てくるんだなぁ。

「この新種の魔物を引き取るのは分かるが、子供たちまでとなると難しい。我が守るのは魔物、人間の子供を守り育てる設備も知識もない」
「なければ作ればいいじゃない?」
「簡単に言ってくれる」
「魔王様、孤児院作るっスか? 乳児がいるなら乳が出る奴に声かけて来ますぜ?」

 苦笑いする魔王様に声を掛けたのは、謁見の間の掃除をしに来た猿に似た魔物だった。
 三角巾とエプロンが似合いますね。

「おさるさん」
「うきっきー」

 ムキムキさんでグロ耐性が付いただけでなく、魔物への忌避感まで克服してしまったようで、お猿の魔物を怖がる様子がない。
 この分なら魔王城の城下で暮らしていけるんじゃない?
 あっ、魔素耐性が問題になるのかな? その辺は女神様に要相談で。

「乳児はいない」
「どれどれー? あー、全員健康状態は悪い、悪いかこれ?」

 困惑するお猿さんに思わず首を傾げる。
 初めて初めて見た時は小さな体を寄せ合っていた子供たち、ろくな食事を与えられていなかったのか体は骨と皮だけだった。
 でもご覧ください、なぜか髪は艶々、体はふっくら健康そのもの。

「もしかして純粋な人間じゃないのか? 獣人の混血なのか? だとしたらこの神子の影響だな」
「諸々の問題が解決した!」

 半分だろうが薄っすらとだろうが、獣人の血が流れていれば謎能力の大勝利である。
 魔素なんて怖くない、病気なにそれ、筋肉こそ正義!
 同時に子供たちが途中からノリノリだった理由が判明した。
 獣人の血が流れていたから僕のテンションに影響されちゃったっぽい、あるある。よくある。

「パパとママは?」
「もうお家に帰れないの?」
「困った時のえっちゃん!」

 子供たちの両親も家族も一族もご近所さんも、えっちゃん基準をクリアしていたら魔王城にご招待!!

 ……でも何も起こらなかった。
 あれぇ?

「魔王様ぁぁぁぁ! 空から突然村が降ってきて、城下の何もなかった場所に着地しましたぁぁ!」

 さすが、さすがのえっちゃんである。
 頼ったらまさかの村ごと召喚でした。

 よし、めでたしめでたし!
 魔王様、あとはよろしく!!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

兄たちが弟を可愛がりすぎです~こんなに大きくなりました~

クロユキ
BL
ベルスタ王国に第五王子として転生した坂田春人は第五ウィル王子として城での生活をしていた。 いつものようにメイドのマリアに足のマッサージをして貰い、いつものように寝たはずなのに……目が覚めたら大きく成っていた。 本編の兄たちのお話しが違いますが、短編集として読んで下さい。 誤字に脱字が多い作品ですが、読んで貰えたら嬉しいです。

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

突然異世界転移させられたと思ったら騎士に拾われて執事にされて愛されています

ブラフ
BL
学校からの帰宅中、突然マンホールが光って知らない場所にいた神田伊織は森の中を彷徨っていた 魔獣に襲われ通りかかった騎士に助けてもらったところ、なぜだか騎士にいたく気に入られて屋敷に連れて帰られて執事となった。 そこまではよかったがなぜだか騎士に別の意味で気に入られていたのだった。 だがその騎士にも秘密があった―――。 その秘密を知り、伊織はどう決断していくのか。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...