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第三章 世界に降りかかる受難

第754話

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 昨日は結婚式、今日は人間と悪魔のバトルの真っ只中。
 こういった巻き込まれは良くあるので、問題はどちらに味方すべきかなんだよね。

「神子様! 悩まずともいいのですよ!!」

 ポンチョがあるので攻撃を受けても問題ない、動かずにうーんと唸っていたらツッコミが入りました。
 声を掛けてきたのは女神様も恐れる説教教皇だった。

「教皇様こんちゃ!」

 てててーと駆け寄ったら勢いのまま抱き上げられた。
 聖職者なのに腕力あるねー!

「どういう状況?」
「女神の神託で国王の座を追われた男が闇落ちして悪魔と融合しました」
「新しい展開」

 そういったイベントは女神様というよりアー君が好きなんだけどなぁ、もしやあれかな、延々と説教を受けた女神様に八つ当たりされた?
 そもそも説教の原因は女神様の神託で、人間に八つ当たりしたくなるほどストレスを掛けたのは教皇様、闇落ちの元凶はお二人なんじゃ?

「聖水も僅かしか効かず、祝詞も届かず、ギルドから派遣された冒険者が抑えてくれてはいますが、全く状況が動かずに困っていた所です」
「ありゃー」

 未来からイネスを召喚出来ないものだろうか、一発だと思う。

「フハハハハハ! この国は儂のものだ!! とり、とりもど、して、この手にぃぃぃ!!」
「顔がガコガコ動いて気持ち悪い」

 漫画で良くある追い詰められてさらに悪くて強いものを呼ぶパターン、だが召喚したものが悪かったとしか言いようがない、元王様は全ての選択を誤ったのである。

「あれは、地獄の番犬ケルベロス!!」

 元国王の背後から空間を切り裂くように現れたのは、三つ首のワンコだった。
 まるでドーベルマンとシェパードのミックスのようなカッコ良さである。

「全員後ろに下がりなさい!! 防御陣を――!」
「わんわん!!」
「きゅ~ん」

 緊迫した空気もなんのその、両手を広げて呼んだら甘えた声を出して僕の前にコロンと体を投げ出し、へそ天で尻尾をブンブン振っています。きゃわわ。
 その巨体で教会を破壊しそうな恐ろしいケルベロスも僕の手にかかればこの通り、ただの三つ首のきゃわわなわんちゃんなのである。
 はぁはぁ、このお腹の毛皮がたまらん。

「きゅぅん、きゅーーん」
「ケルちゃんカッコイイね、イケメンワンコ!」
「きゃん!」
「……」

 教皇様と司祭集団が呆然とこちらを見ているのが分かる。
 あと闇落ち済みの元国王。

 ワンワンタイムを思う存分楽しむためにも悪者は邪魔である。
 手早く消す方法はないだろうか……あっ、そうだ!

「えっちゃん林檎残ってる?」
「キー」

 えっちゃんがひょいとクリスタル林檎を取り出したその瞬間、くぐもった悲鳴とともに敵が消失した。
 それりゃそうだ。としか言いようがない。
 だってこの林檎、うちの子たちが面白半分で作った最強チートな聖属性林檎だもの。

 こうして僕は悪魔を仲間にし損ねたのである。
 元国王?
 悪魔と一緒に消滅したよ。

 じゃあ僕はこの辺で失礼します、このケルベロスは僕が責任をもって引き取り、元の世界に戻る時はリザママに託しますのでご心配なく。
 さぁ帰ってもふるぞ!
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